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『居た堪れない』
題名が何を意図するものなのかは不明だが、作品を通じて思うことは果てしなく『居た堪れない』のだ。
一生懸命走っていたのに、魔が差して女性に見とれてしまっただけで交通事故。選手生命を絶たれ、それから転がるように家庭が荒んでいく。ギャンブル(パチンコ)依存症に嵌り、借金を繰り返し、妻は夜の仕事へ。救いようがない状況である。
心が弱いという判を押したようなそんな断罪を世間はするだろう。しかし、他人のことだから助けるわけでもない。そうしてどんどん深い闇に隠れてしまう。
子役の女の子の無邪気さ、可愛さ、そして切なさがとても『居た堪れない』・・・
同じ年頃の近所の男の子から譲り受けたビデオカメラを、まるで癌を宣告されたような家族の記録を撮るように、淡々と写していく。ラストは家族の象徴ともいうべき、全員の靴が入っている下駄箱の空っぽの様子が撮影されていて、妻が出て行ったのか、それとも自殺してしまったのか(リストカットのシーンがあったので)、細かい説明はない。子供が空腹を訴えているのに、父親は風呂に入ろうという。風呂場のシーンが前段にあり、薄ら寒い台詞を父親が吐いているので、実の子供を悪戯するかもしれないとの厭な妄想が拡がる・・・
短い作品なのに、本当に観ていて辛くなる作品であり、だからこそその意義を感じられるショートムービーであった。
トークショーは交通機関の関係で観れていないのが本当に残念である。