劇場公開日 2016年6月25日

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日本で一番悪い奴ら : 映画評論・批評

2016年6月21日更新

2016年6月25日より丸の内TOEIほかにてロードショー

綾野剛は荒んだ心象風景の中でこそ精彩を放つ稀有な俳優である

2002年に北海道で起こった“日本警察史上、最大の不祥事”と呼ばれた「稲葉事件」をモチーフにしたピカレスク・ロマンである。警察とやくざ社会の底知れぬ癒着を暴いた映画としては、深作欣二笠原和夫の黄金コンビによる「県警対組織暴力」(75)がある。「凶悪」(13)で一躍、注目を浴びた白石和彌は、脚本の池上純哉ともども明らかにこの金字塔的な東映実録やくざ映画の傑作に対抗しようとする野心をみなぎらせている。

巻頭、ちょっと「マルサの女」を思わせるアレンジの安川午朗のテーマ曲が流れた瞬間、この作品が史実をリアルに再現する実録ものというよりは、諷刺的なコメディ・タッチのエンターテインメントであることを予感させる。実際、当初、主人公の北海道警の刑事諸星要一(綾野剛)は直情的で、正義感に溢れんばかりのイノセントな青年として登場する。

しかし、諸星はやがてSと呼ぶ裏社会のスパイを率いて、やらせ逮捕、おとり捜査、拳銃購入、覚せい剤密輸とあらゆる悪事に手を染め、得意満面の絶頂から転落に至る26年の軌跡がクロニクルとしてスピーディに活写される。メフィスト役の上司ピエール瀧、暴力団幹部の中村獅童など不敵な面構えの役者が色を添えるが、「県警対組織暴力」のような隅々にまで愛嬌たっぷりな異貌の脇役がうごめく祝祭感がやや足りないのは残念である。

〈人間喜劇〉としての群像劇の弱さをたった一人でカバーするのが綾野剛の熱演だ。クラブのホステスを愛人に囲うが、愛情が覚めてしまったゆえにシャブ中毒となった彼女を、綾野剛が暗いマンションの一室で激しく詰問するシーンは、この映画の白眉だろう。諸星は傍若無人なワルへと変貌を遂げるも、終幕近く、網走で自らもシャブ中になって鬱屈する日々の描写がむしろ印象に残る。綾野剛は荒んだ心象風景の中でこそ精彩を放つ稀有な俳優であることにあらためて気づかされる。

高崎俊夫

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