レヴェナント 蘇えりし者のレビュー・感想・評価
全511件中、221~240件目を表示
「役者バカ」ディカプリオの魂の演技
瀕死の怪我を負った男が、山中で仲間に我が子を殺害された復讐心から、いやもはや「復讐心だけ」で生還し、たった一人で雪山の中をサヴァイヴする。前半の1時間ほどはセリフも語りもあるものの(寡黙なディカプリオと雄弁なトム・ハーディという対比が効いていた)、多くはディカプリオの一人芝居からなるこの映画は、セリフもごくわずかなものに限られ、サヴァイヴァルする男の姿だけでドラマを構築する。そして、ディカプリオという役者バカはこれを完璧なまでに演じ切る。
彼にとってセリフなど必要ではない。いっそストーリーさえ必要ない。肉体と呼吸と表情のすべてを尽くして、役柄が体の内に抱え込む怒りと悲しみと復讐心と痛みと興奮のすべてをスクリーンに表出し、刻印のように焼き付けていく。ちょうど同年公開の映画で、一人で奇跡の生還を果たす映画がもう一本あった。しかしそちらよりも更に生々しく血腥く汗まみれ糞まみれの生還が「レヴェナント」では描かれる。それをディカプリオは体当たり以上のぶつかり方で表現する。「演技」という言葉の意味を改めて考えさせられるほどの熱演。2時間半の長い映画でありながら、しかも後半はセリフ数も一気に減る中、むしろセリフのあるシーン以上にディカプリオの一人芝居こそがドラマティックで引き付けられてしまう。
しかし映画は何もディカプリオの演技だけに頼ったものであるはずがない。アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥは前作「バードマン」でも撮影の技巧的な部分で才能を見せていたが、今回も彼の演出と撮影技術の面において驚愕する部分が大きい。「バードマン」での映像がいわゆる「技巧的」であったのに対し、「レヴェナント」で見せる演出は「技術」よりも「生々しさ」を感じさせるものになっている。
演出・演技・映像・音楽・・・あらゆるものがすべて高水準で、復讐に燃える男の「生」への強いこだわりと、時折感じる悲哀が、実にたまらなくて、もう天晴れとしか言いようがなかった。
降ってくる雪を食べる、わずかな微笑みのシーンも印象深い。
復讐を糧に生きる男の姿を通じてイニャリトゥが描きたかったものは何か?と考えたとき、まさか親子愛の話ではないし、まさか命の尊さでもない、広大な自然の勇ましさでもないし、苦しみを乗り越える強さでもないと気づく。ラスト、復讐だけを支えに生き延びた男が、その復讐心を手放す瞬間に最大のドラマとカタルシスが訪れ、答えを見たような気がした。
生かされている命の存在…。
今の時代に生きていると、自分が他の命を奪って生かされていることを忘れてしまいます。
命は奪い奪われて共存しているのですね。
人間同士も昔は、奪い奪われながらそれぞれの人種がその土地を統治していました。
相手を倒さなければ、こちらの命が危ないという生命の危機感に、命の営みのリアルを感じます。
実際の撮影の中で、デカプリオさんが魚や獣の肉を生で食べているシーンがありましたが、すべて本当に行っていたとのこと。
この時代の人間は、動物から命を分けてもらい、自らのエネルギーの糧にしていたことが伺えます。
今回、インディアンと白人の戦いが激化する中で、息子の命を白人仲間に奪われてしまった、父の役をデカプリオさんが演じています…。
父は仲間に復讐を誓い、どこまでもどこまでも歩き続けますが、その執念が並大抵のものではありません。
生きることに必死だからこそ、奪われてしまった命の悲しさも人一倍強いと感じます。
彼の心の悲しみを埋めるには、復讐とかなかったのでしょう…。
この映画は、復讐を誓い行動する彼の執念と、命の尊さを感じる、『生命』の映画のように思えました。
極寒サバイバル復讐劇
正統派の映画作るじゃん!と思いきや奇妙なイニャリトゥ節
日本でいうとこの浦島太郎とか桃太郎、落語だと芝浜レベルのアメリカで有名なお話を映画化。
しかもバードマンでおなじみのイニャリトゥ監督とディカプリオがタッグを組んで、見事ディカプリオがアカデミー主演男優賞を受賞ということで観たかったが、タイミングが合わず、ようやく飛行機で観た。
そしたらこれ、ディカプリオがたけし軍団みたいな扱い受けてる…
熊に襲われるわ、生き埋めにされるは、極寒の川に流されたり、崖から落ちたり…
もうみんなでディカプリオをいじめて楽しんでるとしか思えないくらい。
でもそんなズタボロになりながら不屈の精神で生き抜く彼の姿は男優賞受賞への執念がだだ漏れたせいか、半端ないリアリティーと気魄だった。
そんな彼の気魄と極寒の大自然により緊密な作品の絵面だったのだが、所々イニャリトゥ節の『このシーンいる?』『何?このアングル』『不穏なドラムス』があり、バードマン好きとしてはたまりませんでした。
とても疲れたクマー
映像だけで楽しめる映画
文句ない受賞作品
大自然の映像が
デカプリオにはもっといい作品はいっぱいあるよ!
デカプリオ、オスカー受賞作品ですが…
確かにメチャクチャ体を張って過酷な撮影だけど、作品としては… 単純なスーパーヒーローの復讐劇。
大自然や原住民をスピリチャルな演出で意味ありげに見せてるだけでアカデミー賞と言うほどの物は感じられませでした。
こんなんなら… デカプリオにはもっといい作品はいっぱいあるよ、『ギルバート・グレイプ』に始まり『ロミオ&ジュリエット』『ブラッドダイアモンド』『レボリューショナリーロード』『華麗なるギャッツビー』!
改めてアカデミー賞の無意味さと理不尽さを感じました。
あとカメラ演出! ドキュメント的な臨場感を出すため⁉︎ 雨粒、血しぶき、人の息などが撮影のカメラのレンズに付いてもそのまま… 大自然の中でその演出は逆に人為的な作為を感じてしまい、覚めました。
面白かった‼️
血が〰
この作品ゆえの体験
今作は自然描写や開拓時代の考証など映像そのものに重点を置いた作りではあるが、そこに血を通わせたのはやはりレオをはじめとする俳優陣の頑張りだろう。撮影自体が過酷だということでどこからが演技なのかと疑いもするけれども、こうやって仕上がってみると制作サイドのアイデアのほとんどはまったくもって成功していると言える。
冒頭のカメラワークで早くも唸らされ、全編を通じて隙の無い絵作りがなされているからシンプルすぎるストーリーと少ないセリフで進行していくことが心地よい。そういう体験は『グラビティ』や『マッドマックスFR』でも出来たし、そうした映画の原点回帰のようなことを極めて緻密な手法でもってなすというのは今後も続いて欲しい傾向だと思う。
今作のように劇場で体験、体感することの意味を掘り下げてくれるこの作家は本当に面白い。
そしてレオ。イニャリトゥが言ったように彼こそが「レヴェナント」だった。メタの意味も含めて。これまでの経緯が無ければこの作品をあのハードさで演じきろうとは思わなかっただろう。『ギルバート・グレイプ』で知ってから23年‥若くして助演でノミネートされてから紆余曲折あってこうやってオスカー主演部門を受賞したのだから、やはり稀有な存在だと言える。いやあ目出度い。
全511件中、221~240件目を表示