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自首をして来たハッカーが語るある事件の顛末と、やがて明らかになる彼の目的が描かれたテクノスリラー。
ドンデン返しが売りのドイツ映画。「この映画に仕掛けられたトリックは100%見破れない」という大仰なキャッチコピーのせいで身構えてしまったが、ぶっちゃけ『ユージュアル・サスペクツ』(1995)と『ファイト・クラブ』(1999)を足して2で割ったら1余ったみたいな内容である。『タクシードライバー』(1976)しかり、主人公が語り部となる映画はその映し出されている内容がそのまま真実であるとは信じない方が良い。
鑑賞中、殆どの観客は「あっ、これマックスは主人公の生み出した妄想だな…。ということはもしかして、他の2人も同様に…?」ということを何となく察していたはず。終盤、主人公のお部屋にわかりやすく『ファイト・クラブ』のポスターが貼ってあったことでその疑念は確信に変わったことだろう。……しかしそれこそが大きなミステイク。そう油断させておいてからの更なる一撃で観客の隙を突く!というのが本作最大の仕掛けである。
結局、主人公の仲間たちが彼の妄想だったのか、それとも本当に実在する人物だったのかは曖昧なまま。その判断は観客に委ねられる。まぁそれは別にどっちでも良いんだけど、気になるのは主人公があえて統合失調症であることを捜査官に察知させるという展開の強引さ。だってこれ、あの捜査官が「しゃあない。見て見ぬ振りしといてあげるからハッキングして承認保護プログラムを適用しておいで」と温情を見せてくれたから良かったものの、そうなる可能性なんか限りなくゼロに近いんだから、わざわざハッタリを仕掛ける意味はない。ただ観客の予想の裏をかくことだけを目的とした不自然な展開になってしまっている。
そもそも、わざわざ警察署のサーバにハッキングしてやることが自分のデータを消去するだけというのはちょっとインパクトに欠ける。これをやるなら、本当は主人公が全部の事件の黒幕で、全く無関係の人間に罪をなすりつけたうえで、自分が存在しているという痕跡を全て消したというくらいの大オチをつけないとダメじゃないの?天才ハッカー「MRX」もロシアンサイバーマフィア「FR13NDS」も、結局完全に消化不良というかテキトーな感じで処理されてしまったんですが…。なんだかなあ。
表現的な面では、2014公開の作品にしてはちょっと不良の描写がチープな気がする。世の中舐めた若者にはとりあえずドラッグ吸わせてオネエちゃん侍らさせてEDMで踊らせておけば良いだろう的な。この描き方は型にハマりすぎていてダサいっちゃダサい。
また、ダークウェブでのやり取りを地下鉄のような空間で比喩的に表現するというのも、日本の漫画原作映画を観ている時のような気恥ずかしさを感じてしまった。
ピエロの仮面というのも、ハッカー集団「アノニマス」をイメージしているというのはわかるのだが、やはりどうしても『ダークナイト』(2008)のジョーカー軍団の二番煎じに見えてしまう。ストーリーにしろ映像にしろ、全体的に既視感が強いんですよね。オリジナリティを見せろ!とは言わないが、これなら影響元となった作品群を観てればいいかな。
特別褒めるところの見つからない作品だったが、スーパーヒーローとハッカーの間に「匿名性」という共通項を見出し、それをストーリーに組み入れていった点は面白いと思う。主人公の見た目がライミ版『スパイダーマン』(2002-2007)のトビー・マグワイアに似ているのが、本作最大のインパクトだったかもしれない。
※これは珍しく邦題が良い作品。ちゃんと作中のキーワードが用いられており、かつインパクトの強さも十分。『Who Am I』というジャッキー映画のような英題よりも全然良い。むしろなぜこっち=『Clowns Laughing At You』を原題にしなかったのか疑問である。