Mr.タスク : インタビュー
ハーレイ・ジョエル・オスメントが明かす子役時代と今後のキャリアプラン
M・ナイト・シャマラン監督作「シックス・センス」で、弱冠11歳にしてアカデミー賞助演男優賞にノミネートされた天才子役ハーレイ・ジョエル・オスメント。その後も「A.I.」「ウォルター少年と、夏の休日」などで一世を風びしたオスメントも27歳となり、近年はインディペンデント作品に意欲的に出演を重ねている。仰天ホラー「Mr.タスク」では、念願のケビン・スミス監督をはじめ、個性派俳優マイケル・パークス、ジョニー・デップらとの共演を果たした。一度はメインストリームを離れながら、再び戻ったオスメントに現在の思いを聞いた。(取材・文・写真/編集部)
人間のセイウチ化という禁断の扉を開いた「Mr.タスク」。すべては、スミス監督運営のポッドキャスト「SModcast」に、奇妙な広告が届いたことから始まった。「1日2時間、セイウチの格好をしてくれたら無料で部屋を貸します」という謎めいた内容にひかれたスミス監督は、Twitterでファンに映画化への興味を問いかけた。SModcastを通じて経緯を知っていたオスメントは、奇しくも本作の脚本を受け取る。スミス監督、デップらとの仕事に加え、前代未聞のテーマに「おかしくて怖くて非常にユニークな体験になると思ったんです」と飛び込んだ。
そんなスミス監督の現場は、即興にあふれていたという。「彼(スミス監督)の映画に対するコミットメントの仕方はとても面白いんです。興味がすごく広くて、非常にクリエイティブで、時に要求が難しいと感じることもありました。脚本があるのに、現場に行ったらセリフが5ページも10ページも付け加えられていて(笑)。でも『こういうものもあるけど、やりたくなかったらやらなくて良いよ』とプレッシャーをかけずリラックスした感じで、非常に居心地の良い環境を作ってくれるので仕事がしやすかったです」
出演の決め手のひとつになった共演陣パークス、デップらは「親切で気前良く与えてくれる人たちだったので、すごく幸せでした。マイケル・パークスは役者として伝説的なキャリアのある人ですが、それだけでなくすごく面白い人生を歩いているんです。マイルス・デイビスやチャールズ・ミンガスと知り合いだったり、キング牧師と会ったことがあったり。ジョニー・デップも非常に腰の低く、気前の良い人でした。有名で伝説的な人たちと仕事をできたことは、とても良い経験でした」と充実感をにじませた。
オスメントは、デップ演じる酔いどれ探偵ギー・ラポワンテとともに、狂った欲望の犠牲となる主人公ウォレス(ジャスティン・ロング)の捜索に乗り出す。「(デップとは)長いテイクを撮影していたのですが、非常にオープンな人で『<ブロウ>を作った時はこうだったよ』とか自分の経験をどんどん話してくれるんです。彼が映画作りを本当に楽しんでいるんだと感じました。いろいろなメイクや付け鼻をする彼の役作りを見るのがとても楽しかったです」と笑いながら振り返った。
オスメント流俳優の心得は「好奇心は、俳優が新しい役ややりたいことを調べる原動力になるので、1番大切なこと」だ。本作ではオタクDJ役で「大人になったことで、自分の人生の引き出しが増えたと思います。テディを演じる時にも、会ったことがある人ややってきたこと、そういう自分の経験をベースにすることができるようになりました」とこれまでとは違った姿を見せてくれる。
2013年以降、「タイム・チェイサー」「SEXエド チェリー先生の白熱性教育」など主演作が続いているが、一時は表舞台を離れニューヨーク大学に通っていた。「大学時代、映画業界の仕事はそんなにしていませんでしたが、演技の勉強をしていたので、仕事を磨いていたつもりです」と振り返り「映画業界に戻って、昔とは全然違うタイプの役ができるということは、非常にエキサイティングです」と顔をほころばせる。プライベートも「今の彼女も昔の彼女も女優さんだったので、タイプというか特徴は女優ということかな。まだ結婚はないです(笑)。安定したスケジュールができるようになったら考えるかもしれません」と順風満帆のようだ。
今後は広く映画作りに携わりたいと明かし「30代に近づいて、役の可能性が広がっていると思うので、演技を続けていきたいです。大学では監督や脚本について勉強したので、そういうことにも挑戦したいですね」と意欲を燃やす。「長い間仕事をしたいと思っている監督や役者がいますが、この仕事の素晴らしいところは、新作が出る度にそのリストがどんどん長くなっていくところです。今は、ポール・トーマス・アンダーソン監督と仕事がしたいと思っています。彼はほかの監督とは全然違うんです」
大成功を収めた子役時代、学業に打ち込んだ大学生活、俳優業を再始動させた現在。自らのキャリアについてどのように感じているのだろうか。
「昔、ヒット作に恵まれたこともそうですが、今仕事ができていることもラッキーだと思うんです。俳優業は非常に大変な仕事で誘惑も多いのですが、そういう映画に出演するチャンスがあったこと、良い両親や監督、サポートをしてくれる役者が周りにいてくれたことがラッキーでした。今いる場所もすごく幸せなので、これまでの選択も良かったんだと思います。1番大きな選択は大学に行くためにニューヨークに来たことですが、どの選択にも後悔はありません。いろいろな映画に関わって、成功したものもヒットしていないものもあるけれど、そこから学んだことがあるので、どちらもあっていいのだと思います」