マンマ・ローマ

劇場公開日:

解説

ピエル・パオロ・パゾリーニ監督のヒューマンドラマ。

1962年製作/106分/イタリア
原題または英題:Mamma Róma
配給:ユーロスペース
劇場公開日:2004年5月18日

ストーリー

美しく成長した息子エットレを引き取った、元売春婦のマンマ・ローマは、市場の屋台で乏しい収入を得ながら、息子を上流階級の仲間入りさせることを夢見ている。彼女の悩みは、年上の子持ち女ブルーナにエットレが堕落させられることだ。彼女は策を弄し、売春婦仲間に頼んで、ブルーナと手を切らせ、さらに教会で見かけたレストラン経営者の弱みを握って、エットレをウェイターとして働かせることに成功したしかし、幸福は長く続かない。彼女のヒモだったカルミネが彼女に売春婦に戻るよう脅しをかけてきたのだ。息子に過去をばらすと言われ、仕方なくマンマ・ローマは再び街に出るようになった。一方、エットレは仕事もやめてしまい、仲間たちと病院の見舞い品窃盗に興じる。ある日、仲間といざこざを起こした彼は、高熱と苛立ちから、盗みを強行して逮捕されてしまう。監獄で熱にうなされて暴れ出した彼は、一晩中拘束寝台に縛り付けられ、母に詫びながら息を引き取る。息子の死を聞かされ、呆然とするマンマ・ローマの眼差しの先にあるのは、都市ローマの空虚な風景だった。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

5.0息子は善人な『ラスコーリニコフ』

2023年12月14日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
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マサシ

3.5【”パゾリーニ監督、こんなヒューマンドラマも製作していたんだ!”売春婦として生きて来た母が、自分の息子だけには真っ当な道を歩ませたいという思いを描いた作品。】

2023年1月25日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

ー パゾリーニ監督作品は若き頃に澁澤龍彦氏の著作に嵌った際に流れで、遺作になった「ソドムの市」を観たのみである。
  そのあまりに過剰且つ非道且つサディスティックな内容に驚き、パゾリーニ監督はこういう人なんだと勝手に思っていた。
  何しろ、「ソドムの市」製作終了後、パゾリーニ監督は暴行を受け、車に惹かれ轢死するという悲惨な最期を遂げている。犯人は、ソドムの市に出演した青年とされているが、いまだに真相は闇の中である。-

◆感想

・率直に言うと、今作は息子、エットレを想う母、マンマ・ローマの息子にはキチンとした人生を送って欲しいという明るさを纏いながらも只管なる切実さと、その思いに反してぐれて行く息子の姿が描かれており、正統的なヒューマン・ドラマである。

・言うなれば、ままならぬ人生の悲哀を見事に描いた作品だとも言える。
私の勝手なパゾリーニ監督のイメージが瓦解した作品である。

<今作の様な、ヒューマン・ドラマを製作したパゾリーニ監督は何故に晩年、「ソドムの市」を製作したのであろうか・・。
 何故か、この作品を鑑賞して、パゾリーニ監督の善性を感じ、ホッとした気分なのである。
 映画監督とは、何とも業の深い職業であると思った作品でもある。>

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NOBU

5.0至福の映像

2023年1月25日
iPhoneアプリから投稿

大好きな俳優、アンナ・マニャーニ。「アンナ・マニャーニは映画のために生まれてきた動物」と誰かが言った。映画監督はただその魅力をカメラに収めさえすれば良いと言うように、彼女の存在そのものが映画に生命の尊さを吹き込む。

堂々と歩きながら次々と相手を変えて「語る」長回しのシーン。
確実なことなんて何もない、アイデンティティなんて守れない、そういうことを感知しながら挫折や破局を決して恐れない。
アンナ・マニャーニは絶えず陽気に、能動的に、イタリアの悲観と人間の古典的社会の本質を語る。

ダンテの神曲からイタリアの宗教観を滲ませながら、パゾリーニはイタリア的なるものを見事に映像化して観せてくれた。

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Raspberry