原作『大きい一年世と小さな二年生』(古田足日:著 中山正美:画)は、全国読書感想文コンクールの課題図書にもなっていた児童書で、半世紀を経た今でも書店で購入できるベストセラー作品。
アニメミライ2014出品作として、ネットに公開された当時も見たが、なぜ今この作品を? とちょっと不思議だった。監督の渡辺歩がいつかアニメ化したい作品だったようだが、私と同い年らしい。監督も、丸い銀色の読書感想文課題図書のシールが表紙にはられた本を読んだりしたのかもしれない。
児童書の場合、絵本と同じで挿絵の影響が強いものだが、この作品も中山正美という画家の絵の印象は強い。少々ラフな感じの筆運びで、どことなく北欧や東欧の絵本の作画っぽさを私は感じる。
アニメの方は、だいぶ今どきのキャラクターデザインで、とくにあきよはずいぶんと可愛らしい雰囲気になっていた。原作の方の喧嘩っ早いちょっときつめな性格の女の子とはだいぶ変わっている。ゲゲゲの鬼太郎でいったら、昭和の猫娘と令和の猫娘くらい違う。その友達のまり子は正反対のおっとりした性格で、あきよに、けんかはいやよ、と手綱を引いているいいコンビだ。アニメでも出番は多い。
原作の雰囲気を覚えているような世代にはノスタルジックな世界で、まさやという気の弱い少年が少し成長をみせるというありふれた日常の物語。アニメ化なんてしずらいものだろうし、アニメミライという実験的な企画だから成立したアニメ作品だろうとは思う。監督としても千載一遇のチャンスだったのではないかという気もする。
贅沢を言えば、原作の中山正美の絵に準拠したキャラクターデザインで、一時間を超えるくらいの劇場版でできていたら文句なく満点をつけるところだが、さすがにそれは贅沢にすぎるか。
映画.COMでの評価が妙に低いが、レビュー数が少ないからだろう。アマゾンプライムのアニメの評価は星4.5というところだった。
原作が好きな私としてはそこまで高得点はつけられないが、問題なく視聴を推薦できるアニメになってはいると思う。