パリのヌードショー劇場で“クレイジーホース・パリ”開演された「FIRE」を映像化したドキュメンタリー。
シューズブランドとして有名なクリスチャン・ルブタンが演出を担当したことから、ルブタンがショーのうんちくを語り、ダンサーのひとりがショーにかける思いを語って、ひとつのショーが演じられるという構成。
さすがにパリのヌードショーは、日本のストリップ劇場とはレベルが違います。粒ぞろいのダンサーの鍛えられた肉体美は、まるで動く彫刻のようで、ぜんぜん嫌らしさを感じませんでした。そして独特の照明効果で浮き上がる肢体からは、言いしれぬ色香が迸るのです。
ルブタン曰く、ダンサーたちは誰一人として、肉体にまっすぐなところはなく、絶妙なカーブを描いていると語るとおり、芸術品といっていいでしょう。ルブタンのお勧めは、脚線美が描くシルエットだとも。そこにルブタンが今回のショー向けにデザインしたという踊るためのハイヒールが組み合わさったとき動く宝石のように感じられました。
ダンサーの選考では、年齢的に若い人はあえて避けているそうなのです。ルブタンが強調する「大人の女性の成熟した魅力を存分に感じて欲しい」との言葉を待つまでもなく、年齢を超越したの円熟さを感じさせてくれました。
またダンサーの特徴として、出演しているダンサー全員が同じように見える統一感が素晴らしいのです。ルブタンが言うには、ここのダンサーは非情に個性的で、誰一人同じ感じはしないのだといいます。
その統一感を作る要素として、ダンサーの選考段階で、細部に至るまでプロポーションを一致させる選別を行っているそうです。身長や体型だけでなく、バストの大きさや形まで揃っているのには驚きました。
もう一つ内面的な要素として、クレイジーホースのステージに上がった瞬間からダンサーたちは、魔法にかけられたように意識がガラリとダンスモードに変わってしまうのだそうです。その思いは、いかにお客様に喜んでいただける踊りを魅せられるかに集中してしまうのだとか。それ故に、ダンサーの気持ちが自然に一つとなって統一感が生まれるのだと思います。
上映は、2Dと3Dをそれぞれ上映していますが、やはり3Dのほうが臨場感を強く感じることができました。
映画化に当たり、前作『Pina/ピナ・バウシュ』のスタッフたちは、カメラアングルにこだわって、早いカット割りでショーの魅力を引き立ててて描きだしています。とても映像的なショーの内容は、映画になってもその魅力は充分味わえます。目の保養に、ぜひお勧めします。