スノーピアサー : 映画評論・批評
2014年1月28日更新
2014年2月7日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほかにてロードショー
キャスティングの妙で見せる、巨大弾丸列車内の階級闘争
「グエムル 漢江の怪物」で親子を演じたソン・ガンホとコ・アソンが再び親子役で共演。2人のフェチを呼び込む個性顔が味わい深く、多様な人種の中においても、画面の安定度抜群。コ・アソンは怪物に呑まれた時のそのままに成長し、ソン・ガンホの細目をクリクリまなこで補足しながら、映画の中を突っ走る。
「ほえる犬は噛まない」「殺人の追憶」のポン・ジュノ監督はシリアスとユーモアの案配が絶妙とは言いかねるが、それでも韓国の監督としては、シリアスな局面でもユーモアを意図的に忘れない。「スノーピアサー」の笑いをとりしきるのがメイソン女史=ティルダ・スウィントンだ。下層者は上位者に従わなくてはいけません、と言う説教に帽子と靴を引き合いに出して、とても楽しそうである。日本人も生き残りのメンバーに入れてもらえたようで、ニホン語も聞こえてくる。笑ったのは、ほら、仏像返すよ、だった。寿司バーもある。生存のための個数計算によって、水槽で増えた魚を捌いて寿司にする<特別な日>が設けられているのだ、階級上位者には。
地球温暖化を食い止めるための切り札として空中散布された薬品によって、地球は想定外の冷却が進み、一気に氷の世界と化して、生物はことごとく死滅する。動くものはただ一人の男、ウィルフォード(エド・ハリス)が開発した永久エンジン搭載の巨大弾丸列車のみ。このノアの方舟列車版が地球を周回し続けている。炭鉱坑内を思わせる煤けた最後尾車両は人々がすし詰めだ。ここから上をめざす反乱部隊の青年エドガー役が炭鉱の町からダンサーとなった「リトル・ダンサー」の少年=ジェイミー・ベルというのがキャスティングの妙。
(滝本誠)