三百六十五夜(1948)
劇場公開日:1948年9月2日
解説
昭和十五年「白い壁画」以来八年ぶりの児井英生のプロデュースになり、原作は小島政二郎の「ロマンス」連載小説の映画化である。脚色は「馬車物語」「面影」につぐ館岡謙之助、監督は「花ひらく(1948)」につぐ市川崑、カメラは「黒馬の団七」の三村明がそれぞれ担当する。出演は「三面鏡の恐怖」(大映)の上原謙「花ひらく(1948)」につぐ高峰秀子「わが街は緑なり」の山根寿子らのほか「大学の門」の堀雄二「黒馬の団七」の野上千鶴子「わが街は緑なり」の大日方伝。東京篇78分、大阪篇73分。
1948年製作/151分/日本
配給:新東宝
劇場公開日:1948年9月2日
ストーリー
(東京篇)川北小六は新聞広告からある邸の離れに同居するようになった。その家は母一人娘一人の静かな生活だったが、小六はその令嬢照子と相愛の仲になった。小六は大阪の川北組のせがれで、父親の佐吉は同じ大阪で指折りの新興成金小牧雄造と、政治的の話合いで、小六に想いをよせうるさくつきまとう娘蘭子のために、頃句を結婚させる親同志の約束が出来ていた。小六はまたその縁談をきらって東京に逃げてきた訳だったが佐吉は、破産一歩手前にある川北組のためにも、結婚を承知してくれと頼むのだった。今百五十万円の金を必要とする川北組のために照子は邸を抵当に、独断で運悪く小六を蘭子の恋敵とねたむ小牧商事の支配人津川に頼んだため、怪しげな契約書を手交わしたが、小六に見破られた。小六は小切手を返そうと家にとって返した時は、いまではならず者になっている照子の実父東吉に盗み去られていた。それが巡り巡って東吉の手からまた元の津川の手に無条件で握られてしまったのだ。その小切手故に照子親娘は落ちぶれていった。津川の魔手はその病に伏した母を抱え、就職にあせる照子へと延ばされていた。しかも恋に狂った蘭子の中傷で、小六は照子の純潔を疑いある雨の夜大阪に旅立ってしまった。(大阪篇)病気の母を女中に託し、照子は単身小六の誤解をとくために、後を追った。しかしすでに川北組は破産し、街で偶然出会った蘭子の元で小六が静養しているときき、案内されるまま小六に再会することは出来たが照子は、誤解をはらすどころか、すでに二人の心の遠いへだたりを感ずるのだった。東京にもどった照子に好色の津川は、しつような魔の手をゆるめなかった。美術展で照子がモデルになった絵が入選したが、津川の迫害はそこまでも延び、各新聞は桃色異聞として書きたてた。留置所で再会した小六と照子はその足で臨終の母のもとにいったが、何も知らぬ母は息のある内にと無理じいに二人に杯事をさせるのだ。小六に既に結婚の意志のないことを知る照子にとっては、苦しい真似ごとだった。母も死んだ--。絶望のどん底で照子には進むべき道は、死以外になかった。蘭子に小六をゆずって、恨み重なる津川にナイフをしのばせ迫っていった。感ずいた小六が中にわって入り大乱闘になった。そのすきに照子より先に津川に踊りかかったのは父の東吉だった。バッサリと倒れる津川、東吉は「娘を頼みます」と心のこりの一言を小六に警官にひかれていった。小六と照子の心は、その東吉の言葉に再び結ばれることが出来たのだ。