福沢諭吉の少年時代
解説
近代日本の父福沢諭吉の少年時代を、彼の自伝から材をとって(フィクションも交っているが)、描いた教育映画。東映教育映画製作一〇〇本記念作品。(第一作は昭和三〇年一月「ふろたき大将」)監督を「野口英世の少年時代」の関川秀雄、脚本を「二宮尊徳の少年時代」の片岡薫、撮影を同じく仲沢半次郎が、それぞれ担当している。
日本
ストーリー
物情騒然たる幕末、豊前中津藩の貧乏下士の家庭に生い育った福沢諭吉は、父のいない苦しい家計を助けるため、いかけや刀の鞘塗りの内職をしていたが、兄の三之助や母のお順から学問の道をおしえられ、白石照山の塾へ入った。年下の子供たちと一緒の組にされた諭吉は、負けず嫌いを発揮してひそかに猛勉強、その結果どんどん上の組に上っていった。だが塾での上士の子の横暴と下士の子の屈従ぶりを見て、封建制と階級制の不合理を身にしみて感じる。正しい意見も行動も「下士の子の分際で生意気だ」と片づけられ、言葉を返せば暴力をふるわれた。どんなにされても我慢しなければならぬ諭吉を励ましてくれるのは母や照山先生の「人間は誰でも同じだ」という言葉だった。ある日諭吉を困らすため、お目付役の子早川大介の計略で試胆会が開かれたが、諭吉はみごとに行動し、かえって大介の方が腰をぬかしてしまう。卑怯にもいいがかりをつけ、早川家に詫状を入れさせ、あげくに多勢で彼を袋叩きにした。あまりの仕うちに発憤した彼は、封建的な中津藩をとび出す決心をかためた。三之助は彼の決心に動かされ、長崎へ行って勉学するようにすすめた。こうして諭吉は、人間の平等を求めて新しい世界へ旅立っていく。