「動物園物語」より 象
劇場公開日:1957年4月9日
解説
「憎いもの」に続く東宝ダイヤモンドシリーズの第五弾。戦争中上野動物園長代理だった原作者福田三郎の実話『動物園物語』より、動物達が戦争の為にいかに不幸な惨禍を蒙ったかを世に訴える感動篇。かって名作「馬」を発表した山本嘉次郎が自ら脚色し監督する。撮影は「この二人に幸あれ」の小泉一。主な出演者は「とんちんかん 八百八町」の榎本健一、「続御用聞き物語」の小林桂樹、「忘却の花びら」の安西郷子、ほかに本間文子、堺左千夫、堤真佐子、河内桃子、小杉義男など。
1957年製作/67分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1957年4月9日
ストーリー
B29による東京空襲が次第に激化してきた或る日、集団疎開で信州へ行くことになった谷中小学校の生徒が、宮沢先生に引率されて象のトンキーにお別れを言いに来た。しかし上野動物園では餌の不足と空襲時における動物の処置に窮し、猛獣を毒殺することが決定した。トンキー係の善さんにはとてもできないこと。飼育課長の東に頼んだが、仙台の動物園に送るという案も実現しなかった。利口なトンキーは毒の入った食物をうけつけないので絶食方法をとった。トンキーの悲しそうな眼をみて、善さんは悪いとは知りつつ自分の家から芋をもち出して与える。しかしその甲斐もなく憲兵に射殺されてしまった。善さんは名古屋動物園の象係が、象を殺すなら自分も殺してくれと言っていることを聞き、今更に自分の弱さを感じる。瞼になつかしいトンキーの顔が浮んでくる。しかしそれも空襲のサイレンにかき消されてしまう。帝都大空襲の最初の日、昭和二十年一月二五日であった。