母を求める子ら
劇場公開日:1956年8月8日
解説
今年始めから朝日新聞で展開している“親探し運動”に材をとり、母を求める童心の世界を愛情で描く感動篇。沢木吉男の原案から「人情馬鹿」の清水宏(1)と「闇太郎変化」の岸松雄が脚本を書き、清水宏(1)が監督した。撮影担当は「女中さん日記」の高橋通夫。主な出演者は、「赤線地帯」の三益愛子、「あさ潮ゆう潮」の三宅邦子、八潮悠子、「月の紘道館」の川上康子、「女中さん日記」の品川隆二、その他丸山修、田中春男、浦辺粂子など。
1956年製作/88分/日本
劇場公開日:1956年8月8日
ストーリー
山本あきは七年前に行方不明となった愛児武夫を探して旅を続ける中“親探し運動”の新聞欄を頼りに、丘の養育院を訪ねて長野駅に降りる。駅長室では同院の収容児利男が無賃乗車を叱られていた。事情を知ったあきは利男を伴い同院に向う。だが新聞掲載の写真は武夫でなく、悲嘆に沈むあきは藤沢院長に慰められて帰途に就く。しかし利男少年が彼女に向って「さよなら」といった一言はあきの心をひきつけ、彼女は保姆として留ることになる。藤沢院長以下、娘美佐子、若い保姆、千代おばさんの保姆、五平爺さんなど心清らかな人々の中に、あきは子供の汚れ物の洗濯に日々の生甲斐を感じていた。叉もや脱出癖を出した利男の後を追ったあきは、長野市内の裏通に彼を見出した。利男は後妻に行った母のいる家を遠くから眺めて気持をまぎらわしていたのだ。あきの計らいで母子は対面、そして主人の温情で利男は母の懐へ戻る。ある日、収容児正子の処へ、母かずえから手紙が来た。新聞で知ったから迎えに行くという。喜んで返事を書く正子に友達孝一も何思ったか手紙を書くと、美佐子に母へ出してくれとせがむ。行方知れぬ母に手紙を出したい子供の気持に美佐子は深く心をうたれる。美佐子は小学校の吉川先生と恋仲、これを知るのはおばさんだけで転任を機に早く結婚をとすすめる。だが子供達を思う美佐子は、まだ嫁ぐ気になれない。おばさんに相談を受けたあきは、美佐子に結婚しても母として手紙を出せという。吉川先生と美佐子は、学童や養育院の子供達の祝福を受けて新しい任地へ出発する。ある雨の日、収容児庄吉を探し当てた父親が面会に訪れるが、庄吉は逢おうとしない。家族を置き去りにして詰らない女と逃げた父、やがて母は病いで死んだ。父への憎しみで一杯な庄吉に、あきは切切と親の愛を説く。あきの真心に打たれた庄吉は去り行くバスを裸足で追い、始めて「お父さーん」と叫ぶ。やがて美佐子から長崎の保育園にいる武夫の重態を知らせてきた。だが保育園を訪ねたあきの見たのは可愛い武夫の遺骸。心の傷手に、あきは一時は故郷へ身を退こうと決意。だが亡き武夫の声に励され、再び養育院で子供等の面倒をみることになる。