くちづけ(1955)
劇場公開日:1955年9月21日
解説
石坂洋次郎の短篇『くちづけ』『霧の中の少女』『女同士』を「遠い雲」の松山善三が脚色、第一話を「泉へのみち」の算正典、第二話を「不滅の熱球」の鈴木英夫、第三話を「浮雲」の成瀬巳喜男が監督するオムニバス映画。撮影は「あすなろ物語」の山崎一雄が担当する。主なる出演者は「制服の乙女たち」の青山京子、「あすなろ物語」の太刀川洋一、「初恋三人息子」の司葉子、「源義経」の中原ひとみ、「アツカマ氏とオヤカマ氏」の上原謙、「遠い雲」の高峰秀子、「花嫁はどこにいる」の中村メイコなど。
1955年製作/115分/日本
原題または英題:The First Kiss
配給:東宝
劇場公開日:1955年9月21日
ストーリー
〔第一話「くちづけ」〕文学部学生の夏目くみ子は義姉の倫子の再婚問題を少女らしい潔癖さから嫌悪を覚え学友の健二に自分の気持を話した。健二は人間の幸福は主観的なものだといった。ところが倫子は再婚話をことわった。彼女は亡夫の忘れがたみの宏の成長に倖せを感じていた。義姉の気持を知り、くみ子は自分の少女趣味を反省した。倫子は結婚前に一度唇を許したことをくみ子に話した。ある晴れた日、くみ子と健二は多摩川土手に出た。草むらに寝ころんで恋愛を論じているうちに突然健二はくみ子に接吻した。くみ子は泣いて土手を走った。堤のはずれでは倫子が宏と凧をあげていた。くみ子は先日の倫子の話を思い出し、健二に寛大な気持をもつのであった。 〔第二話「霧の中の少女」〕夏休みで東北の田舎に帰省している由子の家に彼女の学友の上村英吉が東京から泊りに来た。由子の妹でおませの妙子が二人を恋人同志としてあつかううちに若者達の気持は一つになっていった。由子の父母は上村と由子を二人きりにさせる、させないと争っていたが、言葉のはずみで二人を山の温泉に行かせることになってしまった。温泉の夜、監視役の妙子が寝てしまった後で二人は夜霧の中を歩いた。上村は由子との結婚を決心し、彼女の手をとり激しい感情をみせた。彼女も激情を抑え、結婚する迄は綺麗な交際をしたいといった。白い夜霧の中に二人の歌声が流れていった。 〔第三話「女同士」〕金田医師の妻朋子は看護婦のキヨ子の日記を何気なく見たところ、キヨ子が夫の育三を愛しているらしいことが書いてあったのでびっくりした。それとなく夫にきくと育三は笑って、キヨ子に嫁の口でも世話してやろうといい、候補者として八百屋の清吉をあげた。朋子が二人を近ずけるように努力したので二人の仲はランデヴーをする迄に発展した。ある日急病人が出た時、ランデヴー最中のキヨ子は間に合わず、育三におこられて泣き出してしまった。そこへ清吉の父からキヨ子を息子の嫁にと電話で申しこんで来た。喜んだキヨ子は清吉のもとに飛んでいった。朋子は日記を見たことをキヨ子に詫びた。キヨ子は新しい人生の門出の記念として日記帳を自分で焼きすてた。