此村大吉
劇場公開日:1954年9月1日
解説
「やくざ囃子」のマキノ雅弘と「風立ちぬ(1954)」の村山俊郎が共同で脚本を書き、マキノ雅弘が監督、「次郎長三国志 完結 荒神山」の山田一夫が撮影に当った。主なる出演者は、「やくざ囃子」の鶴田浩二、「その後のウッカリ夫人とチャッカリ夫人」の久慈あさみ、「恋風街道」の南悠子、「死美人屋敷」の三田登喜子、「次郎長三国志 完結 荒神山」の田崎潤、「唄ごよみ いろは若衆」の徳大寺伸、「やくざ囃子」の河津清三郎、「次郎長三国志 完結 荒神山」の田中春男等である。
1954年製作/94分/日本
劇場公開日:1954年9月1日
ストーリー
江戸末期、五十石の貧乏旗本太田鉄斎は幕府の悪政を改革しようと門下の青年達に説いていた。彼の娘お市に横恋慕する鬼神組の松平帯刀はこれを幕府に密告して彼等を陥れ、お市をわが物にしようと計る。鬼神組は時を見て鉄斎の屋敷を襲撃したが、父娘はお市の恋人此村大吉の計いで姿をかくした。大吉は同志の大河内、横井、座光寺等に帯刀の陰謀を覆えして恩師を逃がす計画を告げ、費用調達のため、将軍の姫君である蓮月院の邸にかけつける。途中、街角で帯刀に呼びとめられ、黒羽二重の着流しに傘を背おって立ち止った大吉の姿。それを見て狂喜したのは、市村座の女役者中村仲蔵である。彼女は忠臣蔵五段目の定九郎の新しい型を創ろうと苦しんでいたのだ。鬼神組を軽く捌いた大吉は蓮月院の邸についた。蓮月院は彼の願いを聞き、大吉の恋を買おうといった。そして彼女は自ら鉄斎親子を助けに行ったが、父はすでに帯刀等に捕えられ、お市だけが邸に引取られた。大吉の姿をとった仲蔵の定九郎が大当りを取っている頃、大吉等と鬼神組との決闘が追っていた。大吉は自分の事から友人を殺すに忍びず、お市への愛を諦めようと思ったが大河内等は大吉の切ない心を知って蓮月院にお市の身柄を貰いうけに行った。然し蓮月院は大吉から買った恋だといって渡さなかった。帯刀は大吉から取った定九郎の型が大評判になったのを嫌い、権力をもって五段目を中止させようとし、大河内等はそれに対抗して強硬に舞台を開かせたが、そのため劇場は混乱に陥る。そのとき花道へ飛び出した定九郎、それは仲蔵ならぬ大吉の怒りに燃えた姿だった。其後鉄斎は殺され、大吉は蓮月院の殿中で抜刀した帯刀を斬り、全責任を一身に負って大河内介錯の下に見事に腹を切って世を去った。