どぶろくの辰(1962)
劇場公開日:1962年4月29日
解説
中江良夫の原作から、「野盗風の中を走る」の井手雅人と「明日ある限り」の八住利雄が共同で脚色、「野盗風の中を走る」の稲垣浩が監督したアクションもの。撮影もコンビの山田一夫。
1962年製作/115分/日本
原題または英題:Tatsu
配給:東宝
劇場公開日:1962年4月29日
ストーリー
東北地方の工事現場、戦事中の大砲の弾丸があちこちに埋没しているため、ハッパをかけるたびに何人かの土方が無惨に死んでいった。人手不足に困った黒政組の捧頭舎熊は、町へ下って作業員を集めた。その中には、どぶろく三升賭ければ命も投げ出す暴れん坊で“飛びっちょ”といわれる飯場脱走常習犯、どぶろくの辰もいた。そして、現場では捧頭舎熊のもとで苛酷な労働が毎日続けられた。一方、町でふとしたことから辰にほれこんだ飲み屋のお内儀梅子は、現場まで来て辰を追いまわした。だが辰は梅子には目もくれず、飯場の若いめしたき女しのに柄にもなく恋をした。だが、このしのには鬼のような舎熊がぞっこんほれ込んでいたため、辰と舎熊は彼女をめぐってことごとく対立した。だが当のしのは二人には全く関心がなく、ただ金をためることに必死だった。それには訳があった。しのの夫木田は、しののためある罪を犯し刑務所に入っているため、しのは金を貯めて夫の帰りを待っているのだ。そんなある日、土方になったしのの夫木田は、彼女を訪ねてこの飯場へやって来た。働く気力を失った木田をかかえてしのは困りはてた。そして飯場からの脱走を企てたが、舎熊らの看視下ではそれも不可能と知った二人は、ダイナマイト自殺を計った。運よく辰に救われた二人は、辰の好意でようやく飯場を脱出した。しののいない飯場に未練のない辰も、同じく飛びっちょし、梅子の店に現れた。一方弾丸騒ぎで工事が遅れた現場では、親方が頭をかかえていた。自分の組だけ工事が遅れては面目まるつぶれになるからだ。それにつけこんだ舎熊は土方に拍車をかけることを条件に、法外な報酬を要求した。怒った親方は舎熊を殺させることにした。偶然、それを知った辰はせっかく命がけで飛びっちょして来た現場へと引き返した。土方の汗と血で築きかかった道路工事をつまらぬ争いで壊されてはたまらない。それが土方の根性だ。親方が乾分をつれて舎熊を襲う直前、かけつけた辰のはからいで両者は血の雨を降らさずにすんだ。、はじめて心を通わせる舎熊と辰。やがて工事も終った。だが、辰は梅子のもとへ帰らなかった。流れ者の辰には、梅子の家ではせますぎるのだ。