故郷は緑なりき
劇場公開日:1961年9月6日
解説
富島健夫の『雪の記憶』の映画化。「若い涙を吹きとばせ」の楠田芳子が脚色し、「二人だけの太陽」の村山新治が監督した叙情編で撮影は「べっぴんさんに気をつけろ」の林七郎。
1961年製作/91分/日本
配給:ニュー東映
劇場公開日:1961年9月6日
ストーリー
「アイタシ スグカエラレヨ ユキコ」という電報を握りしめて海彦は帰郷の途にあった。--四年前、高校一年の三学期、海彦は父と二人で長兄の住む雪ふかい海辺の町に移ってきた。転校した最初の朝、海彦は通学する汽車の中で、セーラー服の美しい少女を見た。少女もまた、じっと海彦を見つめていた。それ以来、毎朝その少女に会うことができる海彦は幸福だった。海彦は朝鮮から引揚げてまもなく母を亡くしたが、その心の傷痕もいやされていった。二年に進級したある日、満員の列車に少女をかばって乗せたのが縁となり、二人は始めて親しく言葉をかわすことができた。少女は志野雪子と名のった。裕福な家庭に育った彼女は、海彦に大学受験にそなえ勉強するよういった。だが、海彦の家は貧しかった。それでも海彦は勉学にはげんだ。雪子を狙っていた不良学生の和田が、二人に危害を加えてきた。二人にとって、和田から受けた屈辱は耐えがたかった。海彦はしっかりと雪子を抱いた。夏休みの終り、突然海彦の父が死んだ。兄夫婦はK市に小さな店を開いて引越した。海彦一人きりの家に時折雪子がたずねてきた。二人の行動を憂慮した組主任の竹田先生は、女教師の小沢先生とともに海彦と雪子を呼び、自重をうながした。しかし、二人はすでに結婚を決意していた。--あれから四年、大学へ進学した海彦は久しぶりに故郷の土をふんだ。だが海彦を待っていたのは、思いがけなくも雪子の死であった。ふとした風邪をこじらせたためだという。慟哭が海彦の胸いっぱいにひろがった。忘れられぬ雪子の記憶が、あふれでる涙の一つ一つに美しくよみがえっていった。