絶唱(1975)
劇場公開日:1975年12月20日
解説
山口百恵主役による文芸シリーズ第三作目。大地主の息子と山番の娘との悲恋を描いた大江賢治の同名小説の三度目の映画化。脚本・監督は「潮騒 しおさい(1975)」の西河克己、撮影も同作の萩原憲治がそれぞれ担当。
1975年製作/96分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1975年12月20日
ストーリー
山陰地方で園田家といえば、山園田といわれる程に名の通った大地主である。その一人息子で大学生の順吉は、山番の娘・小雪を愛しているのだったが、父・惣兵衛は、身分が違うと反対し、町の実業家の令嬢・美保子との結婚を強いるのだった。順吉が大学の休暇を終え京都に戻ると、惣兵衛に因果を含められた小雪は、他国の親戚にあずけられた。小雪に会いに帰省して、その事を知った順吉は、小雪を捜し出し、駆け落ちした。宍道湖のほとりの経師屋の二階が、二人の愛の巣となった。順吉は、肥くみ作業員、材木運びなどをして生活費を稼いだが、二人は幸せだった。だが、戦争が激しくなり順吉にも召集令状がきた。壮行会の日、小雪が唄った山の木挽歌を、どこにいても毎日、決めた時間に二人で唄うことを約束して、順吉は戦地へ向った。戦争はさらに激化し、いつしか順吉からの便りも絶えた。二人で約束した木挽歌を唄う事だけが小雪の心の支えだった。戦争は終った。小雪は結核で倒れたが、木挽歌を唄う事だけは欠かさなかった。やがて、惣兵衛が急死し、小雪はようやく両親と会う事を許された。だが、小雪の体力は限界にきていた。「あの人の足音が聞こえる……山に帰りたい」小雪がこう言って死んだその日、順吉が復員して来た。慟哭する順吉は、葬る前に、せめて山へ帰って、結婚式をしてやりたい、と切望した。花嫁が花婿に抱かれて園田家に着いた。村人たちは、嫁入り歌で二人を迎えた。式が終ると、順吉は、小雪の体を抱いたまま、木挽歌を唄った。それに和して唄うように、どこからか、順吉には小雪の声が聞こえてきた……。