人生の高度計

人生の高度計

解説

「愛の鳴咽」のカザリン・へプバーンが主演する映画で、ギルバート・フランコー作の舞台劇を「めくらの鼠」のゾー・エイキンスが脚色し、「我等は楽しく地獄へ行く」のドロシー・アーズナーが監督し、「不思議の国のアリス(1933)」のバート・グレノンが撮影したもの。相手役は「明日の太陽」のコリン・クライヴで「愛の鳴咽」のビリー・バーク、「永遠に微笑む」のラルフ・フォーブス、「北海の漁火」のヘレン・チャンドラー、「海の密室」のジャック・ラルー、「大帝国行進曲」のアイリーン・ブラウン等が出演している。

1933年製作/アメリカ
原題または英題:Christopher Strong

ストーリー

宿命の2人が始めて相会ったのは、偶然のことから、ある徹夜の騒宴の席上にそれぞれ連れられて来られた時であった。その1人、名誉ある国会議員のクルストファー・ストロング卿は20年間その妻に対して忠実無比の模範的良人として。また由緒ある貴族の遺児シンシア・ダーリントンは世界的女流飛行家として空の征服に忙しいために既に20才を過ぐる今日まで恋を知らぬ処女として。娘のモニカがなお宴会を去るのを肯地内ので、飛行場へ赴く途中のシンシアの自動車でクルストファーは奥ってもらうこととなり、誘われるママに彼女が操縦する飛行機で暁闇の大空を天翔けたのであった。この時からクルストファーの旨にはシンシアに対する密やかな愛の焔が燃え始めたのである。かくて2人は信じ合う友として親しく交際した。ストロング夫人は愛する女の敏感さで、夫の合いがシンシアに移って行くのを知り、それを防ごうとつつましい努力を続けたが、果敢なくもその甲斐はなかった。あるアメリカ富豪が企てた世界1周飛行競争に、シンシアが参加した時、クルストファーも政府の命で某重大使命を帯びて、ニューヨークへ赴いた。彼はシンシアの冒険飛行を思えば一刻も胸は静まらず、今更彼女に対する愛の断ち難さを痛感した。シンシアが女性の身で記録的大飛行に成功して1着の栄冠を得てニューヨークに着くやクルストファーとシンシアは、愛し合う同志が辿るべき所まで至ったのである。2人がロンドンへ帰って後、クルストファーはシンシアとの道ならぬ恋を諦め様としたが、諦め得ず再び相逢った時、シンシアは身重となったことを告げた。彼は義務としても、貞淑な妻を離別しなければならないと言った。その言葉を聞き、また2人の愛を知ったモニカに激しい憎悪の呪いを投げられて、シンシアは愛するクルストファーのために、高度飛行に新記録を作った後、自らを愛機と共に粉砕すべく、遥なる大地へ向かって急下降したのである。

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映画レビュー

5.0キャサリン・ヘプバーン初主演のドロシー・アーズナー監督作品

2022年5月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

シネマヴェーラ渋谷にて鑑賞。

ドロシー・アーズナー監督作品を観るのは6作目。
本作は、「キャサリン・ヘプバーン初主演」という思い入れ映画になりそうな予感あり、観てみたら「やっぱり、ケイトは初主演作から凄い!」と思える映画だった。

以前、キャサリン・ヘプバーン出演作を追いかけていた時があって、殆どの出演作を観たが、本作はその頃「どうやっても見られない作品のひとつ」であった。
キャサリン・ヘプバーン自伝(文庫本の上下2巻)も読んだが、あの演技の凄さの原点がこの映画にあると言ってよい。

ある宴会で「結婚5年以上で浮気していない男」と「20歳以上で恋愛していない女性」を連れてくるゲームが、運命の二人を出会わせることになった。
男は「妻ひとすじのストロング伯爵」(コリン・クライヴ)、女性は「孤高の飛行機操縦士シンシア」(キャサリン・ヘプバーン)が出会って、一緒に彼女が猛スピードで運転する車で飛行場に行って、彼女の操縦する飛行機に二人で乗ることになった。
ストロング伯爵の娘モニカ(ヘレン・チャンドラー)は既婚者ハリーと付き合っていたが、カルロという男に恋愛対象を替える軽い感じの娘。
そんな脇エピソードもありつつ、ストロング伯爵と女性航空操縦士シンシアの恋愛感情も高まっていき、ボートの上で熱烈なキス。
しかし、伯爵にはエレインという妻も娘モニカもいるので不倫の仲。二人は「いけない恋だと分かっていても嬉しい」という描かれ方。
そして、娘モニカも不倫エレインも妊娠して、前者が「望まれる妊娠」であり、後者が「望まれない妊娠」という対比の描き方が素晴らしく、さすがドロシー・アーズナー監督。

衝撃的な結末も含めて、見事な傑作であった。

ドロシー・アーズナー監督の映画は90~100年ぐらい前の作品になるので、フィルムが残っている限り、観続けたい監督である。

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たいちぃ