群集の中の一つの顔
劇場公開日:1957年9月14日
解説
一介の浮浪者が全米一のテレビ・スターにのり上がり大衆を罵倒したことから忽ち転落するというハードボイルドな物語。「ベビイドール」のエリア・カザンが「ビイドール」のエリア・カザンが「殴られる男」のライター、バッド・シュールバーグの原作・脚本を得て監督した。このコンビは、「波止場」以来のもので、ここでもアメリカ社会を痛烈に批判する。撮影監督は「野郎どもと女たち」のハリー・ストラドリング、作曲はトム・グレーザー。主演はブロードウェイのヒット作「ノー・タイム・フォア・サージャント」の主役をつとめた31歳のアンディ・グリフィス、「地球の静止する日」のパトリシア・ニール。これを助けてブロードウェイの劇「帽子一杯の雨」(「夜を逃れて」の原作)出演のアンソニー・フランシオサ、ミス・フロリダ出身のリー・レミック、「赤い砦」のウォルター・マッソーらが出演。
1956年製作/アメリカ
原題または英題:A Face in the Crowd
配給:ワーナー・ブラザース
劇場公開日:1957年9月14日
ストーリー
KGRK放送局のアナウンサー、マーシア・ジェフリーズ(パトリシア・ニール)は、自分の担当する番組で「群衆の中の一つの顔」の取材で、アーカンサス州ビケットの拘置所に行った。ここに収容されている酔っ払い、乞食などの声をマイクにのせる積もりだったが、その中にローンサム・ローズ(アンディ・グリフィス)というギターを弾き民謡を歌う若者を発見した。彼の素朴な味のある唄に魅かれた彼女は、それを録音にとって帰った。ところがこの録音を聞いたマーシアの伯父で放送局を経営するJ・B・ジェフリーズは、すっかりローンサムに惚れ込み、マーシアに口説かせ契約をとった。ローンサムのヴォリュームある声と魅力あるギターの音はラジオの電波に乗って忽ち大旋風をまき起こした。彼の声は家庭の主婦、田舎の青少年にぴったりだった。隣州のテネシー州メンフィスのテレビ放送局から好条件で引抜きにした。が、人気上昇とともに彼の性格は極端に我侭となった。一方、メンフィスのテレビ放送局の作家兼プロデューサー、メル・ミラー(ウォルター・マッソー)は、マーシアに会うなり、その魅力にひきつけられた。メルは、ローンサムが製薬業者の商業放送に成功するや、もはや彼と手を切るべきだとマーシアに勧めた。しかしマーシアはなぜかローンサムと離れられず、またそれかといってローンサムの結婚申込にも態度をはっきりすることができぬ自分を不思議に思うばかりだった。ローンサムはニューヨーク・デビューが成功するや益々我侭が昂じ、自分で企画を立てるため事務所を作った。マーシアがこの事務所にいたある日、ローンサムの妻と名乗る40近くの女が訪ねてきた。マーシアがローンサムを責めると彼はメキシコへ行って離婚すると明言したが、離婚手続きの帰りコンテストに優勝した十代娘ベティと早々に結婚、マーシアを唖然とさせた。しかも彼は昔のメンバーをクビにしベティをも無造作に追出した。しかも彼は今や100万ドルの契約歌手として全米一の人気者。我侭のつのるローンサムに、彼をここまで育て上げたマーシアは独り心を痛めた。メルに手を切るよう勧められてもまだ決心はつかない。が、新しいローンサムのショウの日、放送前後に決まって聴視者を罵倒する彼の癖を知ったマーシアは、操作係が気づかぬうちにスイッチを切換え、ローンサムの大衆を小馬鹿にする声をそのままテレビに乗せた。憤激した大衆はローンサムを離れた。マーシアはメルとともにローンサムへ絶縁を言渡した。が、そのマーシアも、ローンサムを拘置所にそっとしたおけばよかった、と自分を責めずにはいられなかった。
スタッフ・キャスト
- 監督
- エリア・カザン
- 脚本
- バッド・シュールバーグ
- 原作
- バッド・シュールバーグ
- 製作
- エリア・カザン
- 撮影
- ハリー・ストラドリング
- ゲイン・レシャー
- 歌
- トム・グレイザー
- バッド・シュールバーグ
- 作曲
- トム・グレイザー