劇場公開日 2012年11月1日

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リンカーン 秘密の書 : 映画評論・批評

2012年10月23日更新

2012年11月1日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー

ロシア人監督が古き良きアメリカへの敬愛を表した3Dアクション

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リンカーン大統領が実はバンパイア・ハンターだった――という設定は、風刺やジョークではなく、ストレートな賞賛。なにしろ監督は「ウォンテッド」のベクマンベトフ、製作はあのティム・バートン。吸血鬼退治は、良識あるアメリカ人から見れば大統領にはふさわしくない汚れ仕事かもしれないが、ホラー映画を愛するこの監督とプロデューサーにとっては純粋に偉業なのだ。リンカーン大統領に象徴される古き良きアメリカへの敬愛を、古き良きアメリカ映画を現代に甦らせる、という形で表明する。そのための飛び道具として“バンパイア”を投入する。それが本作のコンセプトだ。

こうして、このロシア人監督は、名作西部劇映画「赤い河」「西部開拓史」などの、牛の集団暴走、疾走する列車の屋根での格闘、燃え落ちる鉄橋などの定番シーンの数々を、そこにバンパイアを登場させることで、現代的なド派手映像として甦らせた。もちろん3D。「風と共に去りぬ」のような南部の豪邸の舞踏会も、バンパイアに主催させて、かなり刺激の強い光景に変貌させている。

もちろん、バンパイアによる下僕支配は、奴隷制度の比喩。南北戦争で銀食器類が徴発されたのも、リンカーンの妻が悪妻だと言われているのも、実はバンパイアのせいだったといった史実ネタも随所に。リンカーンの愛用武器が斧なのも、彼の「木を切り倒すのに6時間もらえるなら、私は最初の4時間を斧を研ぐことに費やしたい」という言葉からだろう。

もうすぐ全米公開のスピルバーグ監督の「リンカーン」とは、まったく異なる手法で描かれているに違いなく、客層もまったく重ならないだろう。が、これもまたリンカーン的なるものへの愛を描いた映画なのだ。

平沢薫

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