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2011年の全米公開。
何といっても、これまでトム・ハーディの最高作と言われてきた本作がついに日本DVD化。
劇場で恐竜出現しようが、違うトムが活躍しようが、何はさておき、まずはコレを見ないわけにはいかない。
トム・ハーディといえば、今では「MAD MAX」だが、しかしオレの中では「ブロンソン」あってのトム・ハーディ。
記憶にある「ダークナイト・ライジング」のベイン、「欲望のバージニア」のイカレ兄さんは「ブロンソン」とこの「ウォーリアー」によるものだとよくわかる。そのトム・ハーディの「MAD MAX」主演は、ほぼこの作品の、タフで、やんちゃで、そして寡黙なMADが評価されてのことだと思われる。
「MAD MAX」のMAXに狂気が足らない、という奴は「MAD MAX」シリーズを見て、そして本作を見るがいい。
ハーディの内に秘めたるMADを抑えてのMAXの演技は、ハーディがMADな男を演じることが出来るからこその演技であることがここでもわかるはずだ。
本作、究極格闘技の迫力あるシーン、崩壊した家族の再生、親子関係の到達点、兄弟の在り方、暴力家系の血統、PTSDぽいこと、など意外と欲張り。
しかし最もよく描けているところは「みんな格闘技が大好き」ってところ。
物語は多くのテーマを抱えての娯楽作ゆえ、展開ははっきり言ってファンタジー。特に決勝が兄弟対決というのは、至極当然の展開だが、逆にしらける。
本来最も盛り上がるべき兄弟対決が、一番面白くないことになっている。
戦闘スタイルにもちょっと苦言。エドガートンの関節技で勝ち上がっていく姿と、ハーディの瞬殺パンチのスタイルなどの違いはいいのだが、映画なので、そのスタイルに落ち着く描写が欲しい。
特にアニキのほう。物理教師(力学と関節技を結び付けるのか?)というインテリとベートーベン好きのジムオーナーからもっと練習スタイルに説得力が欲しい。(ジムオーナーのリングサイドからの叫びはとてもいいが)
でないと、世界最強のロシア人からの勝利は、ほんとにまぐれに関節決まったようにしか見えなくなる。
一方のハーディのほうも、おやじをトレーナーにするという意味が見いだせない。そして戦う理由や背景を決勝前に明かさないでよかった。瞬殺して、さっとリングから降りるところなどとてもかっこいいし、狂気を秘めているイケメンゆえ、あっという間に人気を博すのも説得力があるのだから。映画が多くのテーマを抱えているので、それを明かすことで、共感は得るかもしれないが、カリスマ性が削げ落ち、決勝戦では普通のファイターに成り下がってしまった。
しかし、アニキが勝たないといけないのだから、やはりハーディの決勝戦劣化は仕方ないのかもしれない。
まあ、格闘技トーナメントも実際も決勝戦は面白くない、というのと同じっちゃ同じなんだけど。
しかしトム・ハーディ出演作の最重要作品の1つであることには間違いない。
そしてすまん、エドガートン。いや、正直「エクソダス」しか観てないので、特に贔屓しているわけでもないんだが、「エクソダス」の君の可愛さ故、名前を憶えていたのだが、本作、クレジットが出て初めて、君だということに気付いてしまったわ。まあ、それだけ、「エクソダス」のラムセスがすごいパフォーマンスだったってことで。いやいや、もちろん本作も、「暴力家系の物理教師の格闘家」って顔にはなってる。徐々に身体が大きくなるのもすごい。
追記
こないだの「フォックスキャッチャー」のテイタム、ラファロにも感動したが、いや~、役者ってすごいねえ。ある意味おなじ「兄弟格闘技もの」だが、どっちか、というと、まあ、あっちのほうが好きかな。
なぜなら「笑える」から。「フォックスキャッチャー」は誰が何と言おうとコメディだ。