モールスのレビュー・感想・評価
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リメイクの必要性がない
結論から言おう。 スウェーデン製作のオリジナルの方が圧倒的にデキがいい。 そもそもオープニングからして、肌を切り裂くような寒さを感じない。田舎町を取り巻き、林を漂い、古いマンションの中庭を流れる空気、そのどこにも凍てつくような透明感がない。 オリジナルが駄作だったのならともかく、秀作であり、しかもオリジナルの公開からたった2年しか経っていないなかでのリメイクに、いったいどんな意味があるのか、その必要性がわからない。 これほど早くリメイクするのであれば、オリジナルを超える〈何か〉が必要なはずだ。 オリジナルは原作者自ら脚本を書いた。今作は脚本がマット・リーヴス監督本人になっているが、物語の進行、カット割りすべてがオリジナルから抜け出ていない。 透明感のある肌をもったコディ・スミット=マクフィー。綺麗な顔立ちだけでなく、少年特有のナイーヴさも併せ持つ。早くも女優魂を見せるクロエ・モレッツ。猟奇なストーリーの上にピュアなラブ・ロマンスを成立させるには、このうえないキャスティングだが、映画史上に残るようなオリジナル作品で使うべき逸材だろう。こんなリメイクごときに使ってしまうとはもったいない。 邦題も映画の内容からすると弱い。タイトルになるほど、モールス信号が活用されていない。
クロエ嬢の可愛らしさは、血にまみれてナンボ
あいにく元ネタは未見だが、その分、ニュートラルに今作のダークな御伽噺を存分に堪能できた。
『キックアス』での痛快な抹殺ぶりが強烈なインパクトをぶちかまして、まだ間もないクロエ嬢が、今作でもあどけない狂暴さで愛嬌を振り撒いている。
少し成長した身体に帯びた陰の濃さが、大人の女の色気に近づいた印象があり、改めて、
「この娘は危険やなぁ〜〜」と感じた。
彼女の存在感に一切、力負けせず、対等に迎え撃つイジメられっ子の哀愁も大きい。
『キックアス』同様、ガキ共が過激なバイオレンスにドップリ浸る映画は、邪険に扱われる運命だが、こういう作品こそ、キチンと評価しなければいけないと私は思う。
今作の最大の悲劇は、2人が唯一、心のよりどころにした愛は置き去りに、イジメも彼女の狂気も孤独も血しぶきも全て容赦なくエスカレートしていく息苦しい閉塞感であろう。
よって、優しさや愛情がいくら追いかけても、一瞬の慰めにもならず、血に染まる闇の奥へ更に追い詰めていく。
彼の差し出したキャンデーが受け入れられない体質なのに、気遣ってグレープを選ぶ。
選択した色の意味。
そして、彼女に付き添い、世話をする老人の姿が、ピュアな痛々しさを象徴しており、救いのない2人の愛の未来を予期し、自然と涙が流れた。
B級ホラーの老舗・ハマープロ製作だけに、特撮がギクシャクしまくっており、悲壮感漂う物語との落差に戸惑ってしまうのが難点だが、観終えると、あの粗さが世界観を緩和してくれていたような気もする。
帰り道に赤ワインとトマトジュースが無性に飲みたくなったところで、最後に短歌を一首
『舞ふ闇の 裸足で啜る 紅ひ雪 契り密かに 壁際に咬む』
by全竜
オリジナル愛し過ぎ。
いやー、完コピでしたねー『モールス』。 元々、これはスウェーデン映画『ぼくのエリ 200歳の少女』のリメイク版の位置づけなんですかね。 それとも、同じ原作を共有した、アメリカ版として認識すればいいんでしょうか。 いずれにしても、スウェーデン版をかなりリスペクトした造りだったと思います。物語が完コピなんでw ここまで一緒にしちゃったの?という。 一言一句、物語なぞり過ぎでしょwという。 まあ、それだけ『ぼくのエリ』が変更しようのない、完璧な映画だったんでしょうけど。監督の中で。 んー。ということで、ストーリーに関しては語れることはないかな、と。 それは『ぼくのエリ』でやっているので。 ただ、物語以外は、やっぱりハリウッド版ならではというか、演出面がハリウッドナイズで刷新されてますよね。 グロ描写もこっちの方がキツめ。ハッキリ見せてるエグいシーンが結構あります。 画面から受ける印象も、落ち着いたトーンの中にも、見せるべき場面にはシッカリ派手さが加味されてる感じでした。 そして…ええ。そうですね。忘れてはいけない、彼女。 クロエ・グレース・モレッツ!!!! 今回の大収穫はクロエたんw彼女に尽きます。 『キック・アス』の暴力少女。アレはアレで魅力的でしたけど、今回はヴァンパイアガールです。 哀愁を帯びた美少女が、凶暴なモンスターに変貌!!!!ゾクゾクするぐらいに美しい!!!! クロエたんの仕草、表情、一挙手一投足、全てが見逃せない。 そういう意味では、絶対に観て損はない一本です。 彼女を愛でる為の、最適な映画だったと思います。 (ん??こんな〆方でいいのかな…)
怖いと感じるだけかと思っていたら...
イノセントスリラーと書かれていただけあって、
12歳の少年オーウェンとずっと前から変わらず12歳位の
ヴァンパイアの少女アビーの切ないラブストーリーもあり、
最後は何故かホッとして終わったのが良かったです。
この映画の事を気になっている友達に薦めたい映画でした。
殺人事件絡みだとは思っていたけれど・・・
こんな内容の映画だとは知らなかった。
スウェーデン映画のリメイクだったのですね。
オリジナルも見ていないので、初めて見る作品となった。
父と母は離婚協議中で、学校ではいじめられっ子のオーウェン。
そんな孤独な少年の隣に引っ越してきたミステリアスな少女アビー。
彼女も何だか、寂しそうだ。
そんな時に、殺人事件が多発する。
冒頭の救急車内。
患者はひどい火傷を負っているようだが、うまく逸らしたりぼかしたりして見せない。
こういう演出は良い。
オーウェンの孤独と愛。
アビーの秘密と孤独。
クライマックスの事件で、オーウェンは心を決めた。
オーウェンの将来は、父親と同じ運命をたどることになる。
自分自身に起こる本当の危機に直面した時に、救ってくれた相手のためなら、そんな覚悟もできたということか。
二人にとって、お互いが必要な存在になったのだろう。
音楽がとても物悲しく、雪が積もる公園もとても良い。
怖くてシンプルでちょっとだけロスト・イノセントなリメイク版
オリジナル版である映画『ぼくのエリ 200歳の少女』
との比較中心のレビューなので、いつも以上に
つまらんレビューになってますが、悪しからず。
オリジナル版の魅力や物語の解釈についてはですね、
ミアさんのレビューに僕は120%くらい共感しているので、
そちらを読んでいただければと。素敵なレビューですよ。
さて今回のリメイク版。基本的にはオリジナルにかなり忠実な内容だが、
直接的な表現が好まれるアメリカ映画らしいアレンジが加えられている。
まずショック描写がやや強めに。
吸血鬼の恐ろしげな姿、その被害者の傷口の生々しさ。
最後のプールでの惨劇も、プール外の音はくぐもって
殆ど聴こえなかったオリジナルに対し、こちらは悲鳴がよく響いて聴こえる。
全編を覆うおどろおどろしい音楽も含め、恐怖演出が強まった印象だ。
物語に関しても、
吸血鬼に復讐を目論む隣人のエピソード等が消え、
刑事が少女を追い詰めてゆくシンプルな展開に。
また、主人公の父親の登場シーンも丸々削られた。
母親の顔も、スクリーン上に一度もはっきりと映らない。
これらは主役2人により焦点を当てる為、そして主人公の少年の孤立を強調する為の変更か。
だが、静謐なオリジナルの方が少年の孤独感は伝わっていたように思える。
もうひとつ、『少年は少女の新たな“世話係”として選ばれたのでは』という
残酷で哀しい解釈が、より観客に伝わり易い作りになっている点にも注目。
残念ながら物語の深みは多少無くなってしまったかなあ。
リメイク版にはあとひとつ、大きな変化点がある。
オリジナルでは、少女が実は“少女ではない”事を示すシーンがあったが、
今回そのシーンがバッサリ消えた。その為、
「女の子でなくても好きでいてくれる?」という
少女のセリフの意味合いが異なる。
また主人公の少年が異性に対して抱く関心も、より生々しい印象。
で、何が言いたいか?
主人公2人とも男女の区別が曖昧だったオリジナルには
友情とも愛情ともつかない、氷細工のように美しく脆く繊細な感情が流れていた。
だがリメイク版の主人公2人の絆は、性別を越えたイノセントな絆ではなく、
“男女”の絆にややシフトしたように思えるのだ。
つまり、ちょっとだけロスト・イノセント。
どちらが好みかは人次第。
僕は胸を締め付ける切なさがあるオリジナルが好きだが、
このリメイク版も秀逸な出来です。
<2011/8/7鑑賞>
モールス
この映画を観終わった時、実は良く分からなくて、少年と少女であるヴァンパイヤの恋愛物語かなと思ったのです。そうだとすればありふれていておもしろくないなァと思いながら考えていたら、少女は何百年も生きている・・ということはその知識や経験も見かけの12歳ではありえないということに気付きました。人間的な感情など全く関係ない世界を生きているのです。そう思うと背筋が寒くなるような恐怖感を覚えました。そのことを確認したくて思わずその日のうちに2回目を見たのです。そしたらすべての場面がその本当のストーリーにそって展開されていることにびっくりしました。少女は少女などではなく、人間には理解できない怪物だったのです。愛情とか友愛とかの人間的な感情で動くのではなく、自分の為に尽くす下僕をつくる物語だったのです。こんな映画は初めて経験しました。観客をも騙し、本当のストーリーを最後まで明かさないのですから。そこに気付いた観客だけがその恐怖を味わうというわけです。スティーブンキングが絶賛したというのも納得できます。「何歳なの?」「12歳・・くらい(見かけはね)」(級友からいじめられて)「私が助けてあげる」「だって君、女の子でしょう?」「あなたが思っているよりは強いのよ(とんでもなく強いのよ)」という具合に隠されているストーリーを読みとってはじめてこの映画が理解できるのです。いろいろなシーンを思い返してみて初めてその怖さが分かるというのもこの映画の凄さです。プールのシーンはヴァンパイヤが去るふりをして、少年を監視していたことをうかがわせます。去った以後の少女の全体や表情のシーンがないことに気付きましたか?少年は少女の本当の姿を知ったのかもしれません。しかし下僕となって犬のように着いていくことを決めてしまったのでしょう。私にとって脅威の映画でした。素晴らしい監督です。
ドラマチックホラー
感情の機微が繊細に健気に表現した二人の12歳が良い。 そこだけで満足。 死という光に向かって歩む未来の悲哀に溜め息。 孤独と狂気と達観の世界感がミステリアス,かつドラマチック。 スウェーデン版と対になる出来映え。
クロエ・モリッツの魅力全開!
リメイクの元である「ぼくのエリ」があまりにも完成度が高く、また、アメリカ映画としてはオリジナル作品が表現し得た様々な“タブー”も制限されてしまう。そんな手枷足枷をはめられながら、技巧派(?)のマット・リーブス監督はよく善戦した、と賞賛されてもいい。 しかし、何といっても本作を光り輝かせているのは、クロエ・グレース・モリッツ。まさに大人へと脱皮しつつある彼女の危うい魅力を、まさに今しか記録できないその瞬間を、本作は映像に刻んでいる。これを見るだけでも価値があると断言できる。なお、脇役には渋い役者を配して、背景の街や時代の気分をよく盛り上げている。
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