怪盗グルーの月泥棒 3D : 映画評論・批評
2010年10月26日更新
2010年10月29日よりTOHOシネマズ有楽座ほかにてロードショー
テリー・ギリアムの影響も見られる、飽きさせないアニメ
あの「トイ・ストーリー2」や「ヒックとドラゴン」を抜き、アニメ映画の全米興収歴代10位となった最大の勝因は、いかに子供たちを飽きさせないか、を追及した、昨今のCGアニメでは珍しい作り手のこだわり。「クレヨンしんちゃん」ばりの下ネタギャグに、キュートでスラップスティックなキャラ・ミニヨン、ミサイル飛び交う空中戦のスピード感……。さらに、遊園地のジェットコースターのシーンでは、同じ製作チームよる「アイス・エイジ」シリーズで定番の滑走シーンの技術をフルに活用、3D映画として最大の効果を出すことに成功した。
さて、「クリスマス・キャロル」のスクルージに、「チャーリーとチョコレート工場」のウィリー・ウォンカをプラスした、エキセントリックな悪人キャラの主人公・グルー。MSNBCのキャスター、キース・オルバーマンばりの動きを見せる計画発表など、どこか憎めないキャラで、オリジナルの吹替を務めたスティーブ・カレルはリカルド・モンタルバンとベラ・ルゴシを意識したイントネーションでまくしたてた。となると、関西弁をまくしたる日本語版の笑福亭鶴瓶はどうか? 同じく日本版キャストの芦田愛菜に比べれば、登場部分の違和感が残るものの、物語が展開するにつれ、薄れてくるのも「ディア・ドクター」で演じた偽医師との共通点も見られるからか? 決して大人向けではないが、アニメの醍醐味を再確認させられると同時に、随所で見られるテリー・ギリアムの影響に思わずニンマリしてしまう。
(くれい響)