クリスマス・キャロル(1970)

劇場公開日:

解説

ロンドンの下町に繰り広げられる人々の喜びと悲しみをヒューマンなタッチで綴ったミュージカル。製作はロバート・H・ソロ、監督は「ミス・ブロディの青春」のロナルド・ニーム、文豪チャールズ・ディケンズの同名小節を「ドリトル先生不思議な旅」のレスリー・ブリッカスが脚色、同時に音楽を兼ねる。撮影はオズワルド・モリス、美術は「アラビアのロレンス」のテレンス・マーシュ、振付をパディ・ストーンがそれぞれ担当。出演は「いつも2人で」のアルバート・フィニー、「危険な旅路」のアレック・ギネス、「シャイヨの伯爵夫人」のエディス・エバンス、「史上最大の作戦」のケネス・モア。その他、パディ・ストーン、デイヴィッド・コリングス、リッキー・ボーモン、スザンヌ・ニーブなど。

1970年製作/アメリカ
原題:Scrooge
配給:東和
劇場公開日:1970年12月19日

ストーリー

19世紀半ば。クリスマス・イブのロンドンは街中に讃美歌が流れ、陽気な賑わいをみせていた。しかし、スクルージ(アルバート・フィニー)の事務所はそんなムードとはおよそ関係ない様子、彼は徹底したケチで思いやりのない老人だった。事務員はボブ・クラチット(デイヴィッド・コリングス)ただ一人。この忠実な男をスクルージは安い給料で雇い、クリスマス休暇も1日しか許可しなかった。それでもボブは、イブを家族と過ごすためにいそいそと帰っていく。家に帰る道すがら、スクルージは借金の催促は忘れない。貧乏人は救貧院に入るか、死ぬか、勝手にしろ、そうすれば人口増加が抑えられるだろうなどと、彼は考えていた。スクルージは自宅のドアのノッカーを見て、驚いた。怪獣の頭をしたそのノッカーが人間の顔になり、恐ろしい声で「スクルージ」と言ったからだ。その声は7年前に真だ共同経営者マーレイ(アレック・ギネス)のものだった。やがて彼の目の前にマーレイの亡霊が現れ、今夜3人のクリスマスの亡霊--過去、現在、未来の亡霊が訪れるが、3番目の亡霊こそお前の唯一の救いとなろう、と言って姿を消した。夢に違いない! 彼はそう思った。しかし時計が1時を打った時、予言通り、過去の亡霊(エディス・エバンス)が現れ、彼を過去へ誘った。恋人イザベラ(スザンヌ・ニーブ)との楽しい日々。愛しながら別れた追憶の青春をスクルージは悔やんだ。気がつくとベッドの上だった。幻覚かも知れない--時計が2時を打ったら現在の亡霊(ケネス・モア)のお出ましだ。貧しいながらも幸福そうなクラチット一家の団欒風景。彼らが自分のために祝ってくれるのを見てスクルージの良心が疼いた。“チビ”のティム(リッキー・ボーモン)が重い病を患っているのが哀れであった。スクルージは人間の善意について考えた。目が醒めると3時だった。未来の亡霊(パディ・ストーン)は黙ったままでスクルージを事務所へ連れていった。事務所の前では大勢の人間が嬉しげに騒いでいた。彼も一緒に騒いでいたが、それはある人間の死を喜んでいたのであった。それは誰か? スクルージだったのだ。3番目の亡霊は死神だった。死の世界で彼は泣き叫んだ。誰も助けに来てくれない--。あたりを見廻すともとのベッドにいた。もう夢や幻とは思わなかった。イブはまだ終わっていなかった。家を飛び出し、七面鳥を買い、回転木馬を用意してクラチット家へ行き、ボブには休暇を十分与え給料も上げた。町の人々へたくさんのプレゼントを用意したスクルージの姿は満足そのものだった。喜びと悲しみを分かち合う素晴らしさに満ちた姿であった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第28回 ゴールデングローブ賞(1971年)

受賞

最優秀主演男優賞(コメディ/ミュージカル) アルバート・フィニー

ノミネート

最優秀作品賞(コメディ/ミュージカル)  
最優秀脚本賞 レスリー・ブリッカス
最優秀作曲賞 レスリー・ブリッカス
最優秀主題歌賞
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映画レビュー

このスクルージの役をやっているアルバート・フィニーは、 4年後に「...

2022年2月14日
PCから投稿

このスクルージの役をやっているアルバート・フィニーは、
4年後に「オリエント急行殺人事件」でエルキュール・ポワロ
の役をやっている。

この映画の前にも「クリスマス キャロル」は映画化されていて、
そこでスクルージの役をやっているジョージ・スコットは、
「クリスマス キャロル」の2年後に
「モルグ街の殺人」でデュパンの役をやっている。

こうしたキャスティングと、
借金を棒引きにしたスクルージが
「招かれた気分だ」と言って
そのあと実際に姪夫婦の食卓に招かれることとは実は関係がある。

オーウエンやフーリエ、カベーなどが構想する社会デザインに
必ず出てくるのが「共同食堂」で、
こうした初期の空想社会主義者たちが著述活動をしていた時期は、
活字印刷技術が開発されてから、
1860年代にタイプライターが発明され、
個人が活字で著述することが可能になるまでの時期と重なっている。
この歴史的区間以前の著述活動というのは、
プラトンの「饗宴」に典型的に見られるように、
同一の資格を持つ者同士が、
食事と対話と書記行為と読書行為を協働して行っていた、
統一されたコミュニティーの中で生まれたものである。
そこでは、師弟関係による区別はあったかもしれないが、
書記者と読書者との立場の間には基本的な互換性があった。
活字本が刊行されるようになると、
活字による書記者と読書者との間にはこうした互換性は無くなり、
読書者は、自己の家に書棚を備え付けるだけの余裕を持ち、
識字能力もあるが、
活字で自己の見解を表明する資格を持たない
セカンドクラスのメンバーとして書記者から隔てられることになった。

こうした隔絶によって生じた緊張状態から解放されたいという願望と、
家族関係を解体して共同体の中で食事を取ることを義務とするという
初期の社会主義者の奇妙な構想との間には
強い関連性があると私は思う。※1

最も初期の推理小説家の一人と言われ、
「最初の」私立探偵オーギュスト・デュパンを生み出した
エドガー・アラン・ポーは、
活字で書記活動をする資格を持つ者と
読書者との間にあるこのような隔絶を架橋しようと
非常に意識的な努力をした作家だった。
自らが執筆編集する雑誌で、読者に懸賞金をつけて犯人推理を求めることを
していたのである。
今で言うところのインタラクティブコミュニュケーションである。
それに参加した読者たちは、自らを個人の資格で犯罪捜査をする
私立探偵に重ね合わせていたに違いない。

ところでこの「クリスマス・キャロル」って
統一教会の洗脳キャンプで参加者に
見せられるものなんだって。
監禁状態でこれを観たあとでは、結構ほいほいと自発的に自分の権利を放棄して
カルト奴隷になる人がいるらしい。
そういうことを念頭においてこの映画を観ると、
映画の中でスクルージの家のカーテンが痛んでいたり、
借金の支払いを猶予するのと引き換えに露天商から振舞われたスープの器が
なんというかひどい代物なのに対して、
借金を棒引きにしたあとの器が随分よくなったりしているのに気づく。

誰かに対してスクルージ作戦を考えている人たちは、
カルト教祖のように秘匿された知の系譜を独占して、
現在では当たり前になったインタラクティブコミュニュケーションをも
一人二役とか一人三役でなコントロール化に置くことができる、
と考えられるだけの自信があるんだろうか?
自信を持つのは別に構わないけど、
起こった結果に対しては責任を負わなければいけませんよ。

※1
ドストイエフスキーは、こうした関連性に気がついていたと私は思う。
「罪と罰」の中で登場人物に
「フーリエの考えの中には共同住宅はあるが生活がない。
2枚のパンフレット
(活字かガリ版刷りかは知らないが印刷されたもののはずである)
にまとめられてそれでおしまいだ」
といったようなことを言わせている。

徒食罪なんていうとんでもない罪があって、
少ないとは言えない数の作家や芸術家が弾圧されていた一方で、
こうした作家は禁書になるどころか学校の教科書だったいうのがロシアなのだ。
私がソビエト時代のロシアに関して随分なことを言うのも、
こういうロシア人に対する基礎的な信頼があってのことなのです。

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lilac

5.0ニヤニヤが止まらない

2015年1月25日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

楽しい

幸せ

人生において何を大事にするべきかを教えてくれる映画だと思います。

貧困にある市民が幸せそうにクリスマスを祝うシーンがありましたが、
実際に昔は労働者の貧困が深刻であったのかなと思いました。
それを考えればこの原作がヒットした理由も分かります。

それを完璧に表現できた映画だと思います。
どの時代にあってもクリスマスは特別な日であると感じさせられました。

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ふ

5.0原作を見事に映画化 最高の作品

2013年12月29日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

泣ける

楽しい

幸せ

名作:クリスマス・キャロル(チャールズ・ディケンズ著)の映画化は数多くされているがこの作品以上のものはないだろう。

原作の語りかけたものは言葉にすると
映画としては感動を伝えにくくなる。
直接語ることなく
原作を読み終えたときの感動を
映画を見た後に喚起する・・
これほど困難な創造を
見事に成し遂げたのが
この作品である。

人間不信、自己嫌悪、過去への悔い、開けない未来に
逡巡する時に是非見ていただきたい。

あなたが人の素晴らしさを少しでも信じる勇気を
お持ちなら
あなたの人生は今、はじまる♪♪♪

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seisinsei
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