ゼロの焦点のレビュー・感想・評価
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演出の焦点。
あまりに有名な原作は、これまで映画化されているし、
幾度かドラマ化もされているので、内容を知り尽くした
往年のファンも多いだろうと思う。
私も何度か観たことがあるので、結末は知っていた。
ただ今回の映画化で監督が犬童一心というのに驚いた。
え?この人がやるような映画かなぁ…^^;と。
案の定、サスペンス映画としては物足りない(爆)
ヒロイン3人も上手くさばき切れていないというか、
やたらアカデミー賞女優だと謳いあげているのもヘンだ。
中谷美紀はホラー映画も真っ青の怖い演技を見せるが
木村多江はいつもの薄幸演技、広末は言うまでもない。
上手い下手以前にアンサンブルとして活きていないのだ。
なので演出とか演技力などではなく、原作が描いた
その時代の持つ特異な哀しみを感じる方が無難である。
女たちが辿った哀しい過去。
その、少しあとに生まれ(かなり歳の差を感じるけど^^;)
苦労すら見えるにも足らない恵まれた淑女の笑顔。
見合い結婚なんて、確かに相手のことなどを知る前に
決まってしまうような時代だったかもしれない。
過去を拭い去るために?選んだ結婚がひょんなところで
過去との接点を作ってしまい、やがて報復されるという…
あ~怖い。やっぱりこういう裏切りは罰あたりになるのだ。
とてもいい教訓になる作品である^^;
そういえば先日の侍映画で妙にトロピカルな海を見せられ
閉口したが、今回は寒々しい海と断崖に打ちつける波が
絶句させるほどの恐ろしい寒さを感じさせてくれ良かった。
地方の季節感と雰囲気はサスペンス劇には欠かせない。
あとは…本田博太郎の喋りが聞き取れなかったくらいか。
(ワルい鹿賀丈史を続けて観てしまった気がして疲れた。。)
主役は中谷美紀で!
映画的な味付けに芸がない
非常に丁寧に作られている。登場人物も整理されていて分かりやすい。ミステリーとしては単純だが、うまく時代背景に乗った話に仕上がった。
前半は、皆、怪しそうで、常套ながら出演者たちの持ち味が活かされている。中盤から犯人像が絞り込まれていくが、犯行の動機は依然はっきりせず、ラストで一気に解き明かす構成がいい。
気に入らないのは、事の成り行きを、語りだの字幕で処理してしまう手法だ。映画は、絵と音で表現するものであり、観るほうも馬鹿ではないのだから、状況で判断できる。そういう絵作りをするのが映画人の仕事。ナレーションやスーパーが多い映画は、説明っぽくて嫌いだ。せっかくの構成も、荒れ狂う北陸の海のような、観る者に迫る勢いが消失してしまった。
女優陣、魅力的だし、さすがに上手いが、お互いを意識しすぎか、やや力みが見えるところも。
昭和30年代の様子が上手く出ている。列車の揺れ具合など当時を思い出す。壁に貼られたホーロー看板やチラシは、やや整然とし過ぎて不自然。
余談だが、写真館が使うカメラのスリ硝子に投影される像は、正像ではなく、天地逆さまになるはず。また、当時の印画紙(写真)はバライタ紙であり、樹脂が含まれていないので、燃やしても化学的な色の炎にはならない。
断崖に柵を!
実力派女優らが体現する『終わらない戦争』
『ヴィヨンの妻』で見事な表情を見せた広末涼子だが、本作での演技は一本調子でイマイチ。華はある女優さんだが、主演を務めるには……ウーム。
説明過多なナレーションも耳につき、彼女が1人で映画を引っ張る序盤はどうも気持ちが乗り切らない。
だが中谷美紀が登場した途端、映画全体がグッと引き締まる。役柄が乗り移ったかのような凄まじい演技は必見。
木村多江も他2人より短い出番ながら、最後の最後で見せ場をかっさらう見事な『泣き笑い』で魅せる。
「もはや戦後では無い」と声高に謳われた高度成長期の日本。希望に満ちた新たな時代を生きたいと願いつつも、戦争の影に苛まれ続けた人々の物語。
時代に翻弄された女達の末路が描かれる終盤の展開に泣いた。
だが、未だに戦争の影を引き摺っていただろうこの時代全体の悲しみまでは描ききれなかった感がある。
戦後の描写はあっても戦時中の描写が皆無なのだから。
例えば事件の軸である鵜原憲一の場合、従軍経験が彼の性格に影を落としているのは明らかだが、その過去は描かれない。そのため彼が取る行動の動機も弱く感じられた。
タイトル『ゼロの焦点』の意味は僕には掴めず終い。
この機会に原作も読んでみようかな。
推理小説のように
昭和のミステリー
激動の時代
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