劇場公開日 2009年11月14日

ゼロの焦点 : 映画評論・批評

2009年11月17日更新

2009年11月14日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー

過去の鎖を断ち切りたい女性の悲痛な叫び

「ゼロの焦点」は映画化が難しい小説だ。ミステリーではあるが、事件を解決するいわゆる探偵役がいないのだ。いくつかの伏線を手がかりに読者が謎を解くという構造にもなっていない。物語の担い手は夫の行方を捜す禎子だが、彼女は入手した情報をひたすら自分の中に溜めこんで、ああではないかこうではないかと想像するだけ。事件が終わった後も、犯行の具体的な手口が禎子の想像通りだったのか、裏付けもない。そんな彼女の心の声を映像にしていかなければならないのだ。

だから犬童監督が、ミステリーよりも、3人の女性ドラマを前面に押し出したのは、この小説の映画化方法としては正解かもしれない。3人はそれぞれに不幸で悲しく、戦争によって日本の女性たちが背負わされた苦しみを象徴している。昭和32年はまだ、過去の鎖に縛られて女性が自由になりきれない時代だった。その鎖を断ち切りたいという悲痛な叫びをドラマの芯にすることで、現代にまで連なってくる女の闘いを思い起こさせてくれる。それこそ、社会派の清張が書きたかったテーマではないかと思う。

ただし、2時間ドラマの最後の30分よろしく、禎子の想像で延々謎解きするのは芸が無さ過ぎ。広末涼子は禎子の複雑な感情を表現するには力量が足りず、中谷美紀はオーバー・アクション。木村多江だけが役柄通りの哀れさで泣かせてくれる。

(森山京子)

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