劇場公開日 2009年8月1日

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ボルト : インタビュー

2009年7月29日更新

製作総指揮のジョン・ラセターから本作を託されたのが、ディズニーで「ムーラン」「ラマになった王様」のストーリー製作を手がけたクリス・ウィリアムズと、「ポカホンタス」「リロ&スティッチ」などでアニメーターとして活躍してきたバイロン・ハワード。2人は今回が初監督作品だが、ラセターが指揮を執るディズニーアニメの監督という大役を見事にこなした。プロモーションのため来日した2人に、製作の舞台裏を語ってもらった。(取材・文:編集部)

クリス・ウィリアムズ&バイロン・ハワード監督 インタビュー
「ピクサーでは残酷なまでに、あらゆる正直な意見が交換された」

ストーリーを練りあがる過程で、ピクサー流の製作方式が取られた
ストーリーを練りあがる過程で、ピクサー流の製作方式が取られた

――ピクサーを訪問してさまざまな意見をもらったそうですが、ストーリーがより良くなるまで周囲から意見を聞いて練り上げていくというやり方は、ピクサーの方式として有名です。ジョン・ラセターが来たことで、ディズニー・アニメーション・スタジオで変化したところは?

ピクサーの名監督たちに鍛えられた クリス・ウィリアムズ(左)と バイロン・ハワード(右)
ピクサーの名監督たちに鍛えられた クリス・ウィリアムズ(左)と バイロン・ハワード(右)

クリス・ウィリアムズ(以下、クリス):「ピクサーというスタジオは、全ての人が率直に意見を言える環境を作っている。とてもオープンで、それぞれの人間が自由に批評や批判を言うことができて、反対意見も健全にいかされる環境がある。それによってより良い作品が生まれるんだ。今回はその方法をディズニーでも採択した。もちろん、以前にも似たようなことはしていたけど、ピクサーほどオープンではなかった。ジョン・ラセターの哲学は、『ストーリーを練り上げるためには、とにかくオープンに、いろいろな人の意見を聞かなくてはいけない』というもので、僕もそれを肝に銘じて、誰の意見でも価値のあるものという姿勢で臨んだんだ」

――ピクサーでは具体的に誰に意見をもらったのでしょうか?

バイロン・ハワード(以下、バイロン):「ジョン・ラセターは『ディズニーのやり方はまだまだ甘い』って言ってね。ピクサーでは、残酷なまでにありとあらゆる正直な意見が交換されたよ(笑)。僕たちはアンドリュー・スタントン(『ウォーリー』)、ピート・ドクター(『カールじいさんの空飛ぶ家』)、リー・アンクリッチ(『ファインディング・ニモ』、ブラッド・バード(『レミーのおいしいレストラン』)などに会って話を聞いた。彼らはより良い方向に改善していくためにはどうすればいいかを話してくれて、そこまでやるのかというくらい鍛えられたよ(笑)」

――日本のアニメも好きだということですが、何が好きですか?

バイロン:「『マッハGoGoGo』や『海底少年マリン』『鉄腕アトム』といった作品を見て育った。今回の来日では、宮崎駿監督に会うことができたけど、とても興奮する体験だった。宮崎監督は僕らにとってみれば伝説の存在だからね」

日本アニメの影響がキャラデザインに表れているという
日本アニメの影響がキャラデザインに表れているという

クリス:「宮崎監督に会えるということで、とても緊張してたんだけど、話を聞いていると、彼はまだまだエネルギッシュで、きっとこれからも素晴らしい作品をたくさん手がけてくれると思う。日本のアニメについては、北米に入ってきた日本アニメの第一波を経験した世代が僕たちだと思う。僕は『科学忍者隊ガッチャマン』が好きなんだ。日本の美的感覚はアメリカにもずいぶん影響を与えていて、『ボルト』にも少し表れていると思う。たとえば、日本のアニメのキャラクターはシンプルでキュートだけど、『ボルト』にもそれが見られると思うよ」

――今回は最初にボルトが出演しているTVドラマが劇中劇のようなかたちで描かれ、そこから物語が始まるという、ちょっとひねった展開になっていますが。

クリス:「自分たちが描きたいもの……テレビ番組の世界と、ボルトが直面する現実世界の対比を考えたら、必然的にそういう構成になったんだ。この2つの世界は、互いの個性を強調しあっている。現実世界から比べてTV番組の世界は滑稽なほどすごい状態にあるけど、そのTVの世界から現実世界を見れば、とても温かくて優しくて居心地のいい場所になっているんだ」

バイロン:「最初は、ボルトの一番の悩みは、信じていたはずのスーパーパワーが嘘だったと知ったときにどうなるかというところだと思って進めていたんだ。でも、いろいろ考えているうちに、ストーリー上、最も注目するのはそこではないということに気付いた。ボルトにとってかけがえのないのは、ペニーの存在なんだ。小さな犬のボルトにとって、大切なものはペニーの愛情だということを考えると、自然とそういう展開になるんだ」

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――観客へメッセージを一言。

クリス:「ジョン・ラセターも言っていることだけど、重要なのはとにかくストーリーの中に、感情に訴える、心の琴線に触れるものがなくてはいけないということ。キャラクターに愛情が注がれ、最後には幸せになって満たされなくてはいけない。そういうキャラクターを作り出すことができれば、そのキャラクターは映画が終わっても人々の中で生き続けることができる。『ボルト』にはハラハラドキドキするアクションシーンもあるし、笑いもあるけど、それだけじゃなくて、みんなの心に残るキャラクターになっていると思うよ」

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