ヘルボーイ ゴールデン・アーミー : インタビュー
ギレルモ・デル・トロ監督インタビュー
「僕はホビットじゃなくてドワーフさ」
2つのスーツケースを持って来日、1つには着替えなどが入っているが、もう1つはカラで、日本で買ったフィギュアを入れて帰るため。さっそく中野ブロードウェイで数時間を過ごしたとの噂だが、彼自身も2頭身のSDフィギュアにしたいようなキュートなルックス。そして、どんな質問にも笑顔で答えてくれる。
「原作コミック『ヘルボーイ』は、原作者マイク・ミニョーラが、彼も僕も大好きなマレーシアや中国などの神話や伝説をモチーフに、50年代のコミック作家ジャック・カービィの画風を使って、現代的な物語を描いた作品。僕はそれを50〜60年代の特撮映画の神様レイ・ハリーハウゼンのタッチを使って映画にしたんだ。さらに僕の好きなサーカスやオペラの雰囲気も加えてね。クリーチャーにもオマージュがあるよ。石の大きな巨人は『アルゴ探検隊の大冒険』に出てくる青銅の巨人タロスへのオマージュなんだ。
今回は音楽もハリーハウゼン映画へのオマージュで、『アルゴ探検隊の大冒険』などを担当してるバーナード・ハーマンっぽい音楽にしてる。昔のアドベンチャー映画ふうの音楽さ。そのために、音楽をいつも組んでるマルコ・ベルトラミじゃなく、ダニー・エルフマンに頼んだ。エルフマンにはそういう遊び心があるからね」
そして、すでに発表されているように、この映画は第3作も企画中。
「今回のストーリーは『パート3』を前提に考えた。リズが死の天使とした約束が『パート3』にも登場する。『パート1』でラスプーチンがヘルボーイが実現するはずだった終末のビジョンを見せているけど、『パート3』はヘルボーイが世界を滅亡させるという話になる。もちろん、その前に何かが起きるところが、おもしろいんだ。『パート2』は『パート1』よりもコミカルで人間的なストーリーだけど、『パート3』は悲劇的で苦痛に満ちた物語になる。3作はそれぞれ違う雰囲気の作品にしたいと思ってるんだ。そして全3作を続けて見ると、大きな映画の3つのパートになっているようにしたいんだ」
さて、本作の原作はコミックだが、監督がお気に入りのコミック原作映画はどんな映画だろう?
「うーん(と少し考えて)、コミックの映画化作で好きなのは、『ゴーストワールド』と『アメリカン・スプレンダー』だ。この2作は原作コミックの真髄を捕らえていると思うよ」
ではスーパーヒーロー・コミックの映画化作なら?
「(即答で)まず、『スーパーマンII/冒険編』、それからリチャード・ドナー監督の『スーパーマン』。この2作は僕のお気に入り映画だよ」
気になるのは、現在製作準備中の「ロード・オブ・ザ・リング」の前を描く「ホビットの冒険」。これにもクリーチャーはたくさん登場するが、デル・トロ監督が特にお気に入りのクリーチャーがいる。
「ドラゴンのスマウグだよ。というのも、僕の干支は辰年だから、前からドラゴンには惹かれてて、グッズを集めたりしてるんだ。ドラゴンは北欧神話の影響を受けた存在だけど、トールキンはそれにユニークな特徴を与えてスマウグという魅力的なクリーチャーを生み出した。彼は貪欲で、わがままで、強大な力を持ったドラゴンなんだ」
その「ホビットの冒険」はまだ脚本の開発中で、脚本が出来上がるまで出演者は未定だそう。ちなみに製作と共同脚本を務めるピーター・ジャクソンは、自分はホビット族だと語っているが、デル・トロは違う。
「僕はギムリと同じドワーフ族だね。ホビットはきれい好きだけど、ドワーフはきたなくても平気。ホビットよりもうるさくて、粗暴なところも似てるしね」
ドワーフは美しい手工芸品や建築を創り出す種族でもあるが、それは自分では言わないところもデル・トロ監督らしいのではないだろうか。