ブーリン家の姉妹 : 特集
「私がクマにキレた理由」に続き今月公開されるスカーレット・ヨハンソンの主演作は「ブーリン家の姉妹」。メガホンを握るのはイギリスの新鋭ジャスティン・チャドウィック監督。スカヨハとナタリー・ポートマンが初共演し、女の愛憎を描いた本作の見どころを、2人の比較で分析してみた。また、2人のインタビューもあわせて掲載するので、是非楽しんでほしい。(文・構成:編集部)
※特集第1回はこちら
スカヨハ特集第2回:ナタリー・ポートマンとのオンナの対決
「ブーリン家の姉妹」の舞台は16世紀イングランド。後に英国黄金時代を築くエリザベス1世を産むことになる貴族の娘アン・ブーリンとその妹メアリーの姉妹愛や確執を描く歴史劇だ。アン・ブーリンは英国内ではもちろん、世界的にも知られた存在で、一方の妹メアリーは歴史の裏側に消えていったわけだが……。
映画は、史実とフィクションを交えながら、英国王室内で繰り広げられるオンナの戦いを描くイギリス版「大奥」ともいえる出来栄え。姉のアンをナタリー・ポートマン、妹メアリーをスカーレット・ヨハンソンが演じ、ハリウッド若手実力派女優の初共演が実現した。
■2人の共通点と相違点
ナタリー・ポートマンといえば、当時13歳だった「レオン」(94)のマチルダ役がいまだ鮮烈に記憶に残るが、そこから「スター・ウォーズ」新シリーズに抜擢されるなど順調なキャリアを築く。04年には「クローサー」でアカデミー賞ノミネート、ゴールデン・グローブ助演女優賞を受賞。今年は短編映画「Eve」で監督デビューし、同作はベネチア映画祭で上映された。続けてオムニバス映画「NEW YORK, I LOVE YOU」の一編も監督する。
一方のスカーレット・ヨハンソンも当時12歳だった初主演作「のら猫の日記」(96)でインディペンデント・スピリット・アワードの主演女優賞にノミネート。03年に「真珠の耳飾りの少女」「ロスト・イン・トランスレーション」の2作でゴールデン・グローブ主演女優賞にダブルノミネートされるなど演技派としての地位を確立。ナタリーも監督として参加する「NEW YORK, I LOVE YOU」での監督デビューも決まっている。
子役出身で若くして演技も認められ、監督業など女優以外の活動も……と、実はとても似ているキャリアを持つ2人。プライベートはといえば、ナタリーはハーバード大学卒の知性派で、近年こそストリッパー役やヌードに挑戦しているが、色気よりも清純なイメージが強い。一方のスカーレットといえば、その隠し切れない豊満なボディからセクシー女優として人気が高い。本作では、ナタリーが、王妃の座への執着と野心をむき出しにし、肉体よりも知性をもって王の気を引こうとする姉アンを演じ、スカーレットは、純朴で平穏な生活を望むが、その美しさゆえに王に召抱えられることになる妹メアリーに扮する。2人のプライベートのイメージと重ね合わせてみると、なかなか面白い配役である。
■「ブーリン家の姉妹」における2人の対決
では、そんなナタリーとスカーレット、そして2人が演じたアンとメアリーを比較してみよう。
◇ ◇ ◇ ◇
【お色気度】
ナタリー(アン・ブーリン) ★★★☆☆
スカーレット(メアリー・ブーリン) ★★★★☆
最初にヘンリー8世(エリック・バナ)に愛されるメアリーは、序盤でベッドシーンが2回ほど。なまめかしい肌にカメラが寄り添い、ムードも満点。一方、気の強いアンは王になかなか身体を許さないが、無理矢理に押さえつけられ、服を着たまま……というシーンが1回。このあたりはさすがお色気肉体派のスカーレットに軍配か。
【オンナの情念度】
ナタリー(アン・ブーリン) ★★★★★
スカーレット(メアリー・ブーリン) ★☆☆☆☆
王の子を産めば一族に富と名声がもたらされることを期待し、王に気に入られようと勢い込むアンだが、王はメアリーにゾッコン。アンは嫉妬メラメラ。男を翻弄するため知性と品性を身につけ、王を奪おうとする。一方のメアリーは夫がいながらも王の相手役を務めなければいけないことに困惑。権力よりも普通の幸せがほしいと願い、姉とも仲良くしたいのに、姉から嫌われてションボリ。
【オンナの幸せ度】
ナタリー(アン・ブーリン) ★☆☆☆☆
スカーレット(メアリー・ブーリン) ★★★☆☆
で、そんなドロドロ劇の挙句、陰謀に巻き込まれてアン・ブーリンが死刑になってしまうことは歴史上でも有名な話。王の世継ぎの男児を望みながらも、生まれてきたのは女児のエリザベス。もちろん、彼女が後に英国を治め、黄金時代を築くことになるのだが、そんなことは予見するべくもなく落胆。一方のメアリーは王の愛人の座をアンに奪われるものの王宮から去り、歴史に名を残すことはなかったが、彼女を思う貴族と再婚し田舎でつつましく暮らす。大切な姉を亡くすという不幸には見舞われるが……。
◇ ◇ ◇ ◇
他にもいろいろな側面で比べてみると映画がより面白く見られるかもしれないが、ともかくまずは、この豪華2大女優の共演を楽しんでみるべし。