レッドクリフ Part I : インタビュー
ジョン・ウー監督インタビュー
──黒澤明監督の「七人の侍」と構造上似ていましたが、やはり意識されてましたか?
「『七人の侍』のクライマックスである雨中の決戦は、アクションにしても、リズムにしても、編集にしても非常に参考にしています。また、人間ドラマにもなっていますが、私がガンアクションを作ろうが、『レッドクリフ』みたいな歴史劇を作ろうが、どんな作品でもキャラクター設定のヒントになっています。また、趙雲が阿斗を救出する場面のカメラワークは『七人の侍』とまったく同じであることに気づくはずです(笑)」
──アクションを見ているととてもスタイリッシュで、ハイスピードカメラ(スローモーション)を多用されていますね。その比率はどのぐらいですか?
「ガンアクションをテーマにした映画よりは多くないと思う。2部作全体で、約200万フィートぐらい。アクションシーンに関しては、すべてハイスピードカメラで撮っています(笑)。スローモーションになっていないアクションは、編集の時に普通のスピードに戻しているんですね」
──第1部「Part I」では、亀甲の陣(九官八掛の陣)、鶴翼の陣など軍勢の陣形が目をみはります。
「陣形については、みなさんはたぶん本の中で読んだことはあるかもしれませんが、視覚的に見たことはないと思うんですね。ですから、この映画のハイライトでもありました。諸葛亮が亀の甲羅を見て、亀甲の陣を思いつくシーンがあります。大きな亀甲の陣形は空撮やCGなどを駆使しましたが、その大きな陣形の中に小さな亀甲の陣形が集合体になっていて、それぞれに武器を持った兵士たちが並んでいるというものです。そうした陣形は東洋の観客も西洋の観客も興味深く感じられるのではないかと考えました。
一方で第2部の『Part II』では、船上の戦いがメインになります。諸葛亮が経略し、敵軍の矢を船に射させて集めるシーンと、曹操軍の大船団が燃えるシーンがハイライトになります」
──第1部の最後に、ウー監督のトレードマークでもある白い鳩が飛び立ちますね。実際に諸葛亮は鳩を飛ばしたりしたんですか?
「ウフフ……違います(笑)。ですが、諸葛亮は情報伝達の手段として鳩を使っていたかもしれませんよ。また、鳩は平和へのメッセージでもありますしね(笑)」
──最後に、日本の映画ファンへのメッセージを。
「第1部は群雄たちが集結するという点に光を当てていますから、彼らの関係性を会話などからしっかりとくみ取っていただきたいと思います。第2部では、さらに彼らの関係性が強まって、アクションとして展開していきますからね。第1部の大きな戦闘シーンは2回ありますが、第2部も大きな戦闘は2回あります。SFXもふんだんに使っているので、大いに驚嘆すると思いますよ」
──ジャン=ピエール・メルビル監督の「仁義」や、黒澤明監督の「天国と地獄」のリメイク話が一時噂になっていましたが、今後の予定は?
「『仁義』については、『レッドクリフ』の代わりに映画化するという条件だったので断りました。『天国と地獄』のリメイク権はアメリカに渡っていて、マーティン・スコセッシ監督あたりが持っていると思います。今後の私の予定としては、黒澤明監督やキン・フー監督にオマージュを捧げた武侠映画を撮りたいと思っています。その前に、ジョニー・デップ(の製作プロダクション“インフィニタム・ニヒル”)と、アメリカを舞台にした西部劇を撮る予定です」