エンジェル
劇場公開日:2007年12月8日
解説
「8人の女たち」のフランソワ・オゾン監督が、若くして成功を手にした女流作家の波乱の人生を皮肉をこめて描いた映画。20世紀初頭のイギリス。幼い頃から上流階級の生活を夢見てきた食料品店の娘エンジェルは、豊かな想像力と文才を生かして16歳という若さで作家デビューを果たす。瞬く間に富と名声を手に入れ、思い描いてきた夢を実現したかに見えたエンジェルだったが、その先には思いがけない運命が待ち受けていた……。
2007年製作/119分/ベルギー・イギリス・フランス合作
原題:Angel
配給:ショウゲート
スタッフ・キャスト
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2023年6月8日
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鑑賞方法:VOD
①『スイミング・プール』も衝撃的だったが、これ迄(といってもまだ3作しか観てないけど)で一番オゾン監督の演出力を堪能できたと思う。
②マイケル・ファンスベンダーがこんな男前だった?と驚くほどの美男ぶり。
③サム・ニールもなかなかのイギリス紳士ぶり。
④昔はこういう波乱の生涯を送った女性を主人公にしたメロドラマが沢山あったもの。
それを現代に甦らせたフランソワ・オゾン。
ノラのエンジェルへの無償の愛が最後に胸を打つのが現代的かな。
2018年11月6日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
八百屋の二階に間借りしていることを他の生徒たちに笑われるなど、普通ならイジメだろ!と感じてしまうのだが、くじけないエンジェル。なにしろ自分が貴族生活に憧れるため、伯母さんの紹介の“パラダイス・ハウス”の召使の仕事もかる~く蹴ってしまうほどだ。
学校を休んでまでして「レディ・イレニア第4巻」を書きあげ、発行人であるギルブライト(サム・ニール)に認められる。その妻ランブリングのやりとりは面白く、世間を知らない小娘と見下すランブリングには随分失礼な態度。
パラダイスハウスに住み、パーティで知り合った詩人のノラ(ルーシー・ラッセル)はやがて彼女に仕え、画家である弟エスメ(マイケル・ファスベンダー)と恋に落ちる。そして幸せな結婚も束の間、戦争が始まってしまう。
数奇な運命というより、成功を手に入れた作家の凡庸な人生という気がする。しかも、普通の文芸作品とは違い、かなり足早に描いているのだ。オゾン作品だから何かあるはず!と期待するが、普通に終わってしまう。
エンジェルは何か手に入れたのか?成功、名声、愛する男・・・しかし、エスメは前線へと出兵するものの何度も浮気相手アンジェリカと密通していたのだ。片足を失い戻ってきたエスメはギャンブルで借金したと嘘をつき、アンジェリカを養っていた。しかし、彼女は結婚し傷心したエスメは自殺する。
実はアンジェリカはかつてパラダイスに住んでいて、エスメとは幼なじみ。没落する上流階級と成り上がりとの対比。どこに幸せがあるのかと考えると、何も答えが用意されてない作品。しかも、金を稼ぐために虚構ともいっていい想像上のロマンス小説を書き続けるエンジェル。戦争中、平和主義に走ったため売り上げが最悪になったという皮肉もあった。よほど愛国心にも餓えていた時代だったのかもしれない。
オゾン監督らしくなく、彼の作品群の中では最低かも・・・
2014年10月31日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
主人公エンジェルの 自己肯定感が高く、自由奔放で欲しいものは手に入れるみたいな性分の生き方って、ある意味尊敬してしまいます。でも彼女の最期をみると、やはり「神はすべてを与えない」と思ってしまうんですね。そこが人間らしい所以、一番近いところで彼女を支え続けた秘書が「彼女の本当の人生を書くのか、彼女の願った人生を書くのか・・」と言ったセリフがそのことを象徴しているように思います。
マイケル・ファスベンダーが彼女の最愛の夫役で出ていてビックリしました。想像したイメージのオゾン監督の作品とはちょっと違って意外でしたが、これはこれで好きな作品となりました。美しい情景と静かな音楽。絵画作品を楽しむかのような趣が何ともいえず贅沢でした。
2009年10月3日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
2007年ベルギー・イギリス・フランス合作映画。119分。コーエン兄弟は、人間の本質的な愚かさを描いてきますが、本作のフランス人監督フランソワ・オゾンは、人生の過酷さを描いてきます。この人の作品に出てくる登場人物は、どこか天真爛漫で自由人なので、そりゃ人生も酷になるといえばそうなりますが。
内容は、イギリスの片田舎に住む少女がロマンス小説を出版社に投稿して、そのまま売れっ子作家になるお話。人生バラ色で、しかも最愛の男性とも結ばれ、シンデレラストーリを地でいく展開。
もちろんオゾン監督がこのまま終わらせるわけありません。次第に人生の歯車が噛み合わなくなり、時代が動けば悲劇も起き、途中からはエスカレーターのように転落していきます。
オゾン監督の作品に一貫しているのは、人生を夢のシャボン玉のように扱い、その中で生きている女性を描いていることです。そして、本作の主人公の場合は、実際は夢が弾けてるのに、それでも夢の中にいます。
そんなどこまでも空想する人物を客観的に描くものだから、外見の衰えややつれぶりという現実との対比が、なかなか観てて辛いものがあります。
もちろん、出来ることなら一生、夢の中に生きていたいですが、時間の針が緩むことはなく、万人に共通の、あまりにも過酷な一つの現実が待っている。オゾン監督はそんな夢と現実の描き方に対して、答えを提示せず、とことん観る人に突きつけます。
ちなみにわたくしは、本作の主人公を観て、怖いまでに何も感じませんでした。同情しなかったし、むしろつきはなして観ていたと思います。そして、それ以上残るものはありませんでした。
強いて思ったのは、老いていくことの苦しみは、男よりも女の方が切実なのだろうということ。だから、女の方が先に大人になるのかもしれませんね。