劇場公開日 2007年12月8日

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エンジェル : インタビュー

2007年11月29日更新

20世紀初頭のイギリスを舞台に、主人公の女性作家エンジェルの成功と没落の人生を描く「エンジェル」は、「8人の女たち」「スイミング・プール」などで知られるフランスの若き名匠フランソワ・オゾン監督が、初めて全編英語で撮り上げた時代劇。新しい分野にチャレンジしたオゾン監督と、本作でタイトルロールを演じる大役に抜擢された若手女優ロモーラ・ガライのインタビューをお届けする。(聞き手:編集部)

フランソワ・オゾン監督インタビュー 「成功することそのものには価値はないんだ」

これまでも女性を主人公にした物語を多数手掛けてきたオゾンは、その理由を「女性を主人公にすることで(男性である自分とは)少し距離が出来るから、客観的に描ける」と語るが、さらに言えば「女性のほうが、より人間の内面性を描くことが出来るから」だとか。

「女性のほうが男性よりも感情的に物を考え、感性も豊かだと思う。映画で描かれる男性というのは、常に行動しているアクション主体の場合が多い。それよりは、より豊かに物事を感じ、考えている女性を撮影するほうが快感なんだ」

今年で40歳になったばかり フランソワ・オゾン監督
今年で40歳になったばかり フランソワ・オゾン監督

主人公エンジェルは、細々とした食料品店の娘という平凡な自身の出自を嫌い、より豊かで華やかな世界に憧れる。成功のためには嘘もつき、時として傲慢ですらあるが、自身の夢見る世界への空想を原動力に執筆した小説が成功し、一躍人気作家になる。

「彼女は自分の出生を恥じ、そこから逃げ出すために自分自身にすら嘘をつくが、そのことが彼女自身をもろく、か弱くしている。その様子が切なくもあるんだ。幼い頃、誰しも現実から逃げたいと思うことはあるだろう。僕だってそうだ。彼女ほどじゃないにしてもね。だから彼女に共感を覚えるんだ。ただ、彼女の場合はその思いを一生抱き続け、一生嘘を突き通したということが問題だった」

そう語るオゾンも、30代で既に世界的名声を手にし、若くして成功したという点ではエンジェルと共通する部分があるが。

「エンジェルは作品よりも成功することのほうが重要になり、本末転倒な生き方をしてしまった。僕自身は、成功そのものに価値をおいていないよ。作品が成功すると次回作を撮るための助けになるから、そういう意味で成功することはありがたいけどね(笑)」

今回はオゾンにとって初めての英語劇で、かつ初めての時代劇。やはり言葉の違いは、撮影に今までと異なる様相をもたらしたそうだ。

撮影はやはりいつもとは少し違ったと振り返る
撮影はやはりいつもとは少し違ったと振り返る

「英語は僕にとって母国語じゃないから、フランス人を相手にフランス語で撮影する時のように、インプロビゼーションで即興的に何かを入れるということは無理だった。だから、脚本に書かれているセリフをよりリスペクトしながら撮っていったけど、そういう意味では今までの演出とは少し違っていたかもね」

しかし、言語や様式が違っても、過去のオゾン作品に通ずる部分はある。

「例えば、自分の妄想の中で生きようとしているという意味では、『まぼろし』のヒロインもエンジェルも同じだ。『まぼろし』のヒロインも、夫が死んだことを受け入れないで、夫の幽霊というものを想像しながら生きているし、エンジェルの人生そのものも幻みたいなものだ。そういった形で、過去の作品とも共通項というのはあると思うけど、僕自身、映画の好みは幅広いし、ひとつのジャンルに閉じこもりたくはない。作品を撮るごとに“また同じことをしてしまった!”と思うようなことはしたくないんだ」

自らをそう分析するオゾンだが、そうした“自己分析”も、オゾンにとってはあまり意味がないことだとか。

多くの観客に共感してもらうことが大切
多くの観客に共感してもらうことが大切

「フランスの映画監督が陥りやすい欠点として、自己分析の傾向というのがある。“自分はこういう意図で、こういうカットを撮った”というようなね。それはそれで素晴らしいことだけど、実際の作品を見ると、正直どうでもよかったりするものもある。僕は出来るだけそういうギャップはなくしたい。僕自身がどう分析しようと、作品がインテリジェントに思ってもらえるほうが嬉しいんだ。僕は出来るだけ上手にストーリーを語り、多くの観客に分かち合ってもらいたいということを主眼に置いて、自由に作るだけなんだ。作品ごとの共通項や解釈などは、ジャーナリストの方々にお任せするよ」

>>ロモーラ・ガライ インタビュー

インタビュー2 ~フランソワ・オゾン監督&ロモーラ・ガライ インタビュー(2)
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