黒澤明の名作『隠し砦の三悪人』を2008年にリメイクした作品。自分のおぼろげなオリジナルを観た時の記憶によると、主役は、真鍋六郎太で、連れの2人の百姓の名前は、又七と太平だったような…。本作では百姓2人のうちの1人を武蔵と名乗り、主役として松本潤が務め、後半は、大幅にストーリーが変更され、オリジナルの黒沢作品を愛する映画通にしたら、今ひとつ高評価が得られなかったことも頷ける内容。
確かに、前半までは、オリジナル作品に沿った展開で、冒頭の城の爆破シーンは、製作陣も気合が入っていると感じたが、そう思ったのはそこまで。関所のシーンの無駄なやり取り、そしてラストには、松本と長澤のピュアで爽やかな時代劇ラブ・ストーリーに転換してしまい、本来のこの作品の面白さが薄れた。これも、今は無きジャニーズ事務所だが、当時にしたらジャニーズ頼りの作品なのかと、ちょっと興醒めした。
戦国時代の乱世の中で、秋月国を山名軍が責め滅ぼしたが、秋月家の軍資金の在りかがわからず、世継ぎ姫にも逃げられ、その2つを山名軍が必死に探していた。そんな折、山名軍の強制労働から逃れた武蔵と新八は、偶然にも軍資金の黄金を発見する。そこに、真鍋六郎太が現れ、秋月家再建の為に2人をお供にして、同盟国の早川国へ黄金と共に雪姫を届けることになる。
本来、もっと男臭さが全面に出て、途中様々な困難に合いながらも、世継ぎ姫の雪姫を護衛しながら敵中を無謀にも突破していく、ロール・プレイング・アドベンチャーの様なワクワク感が大きくなるはずの作品が、変に雪姫と武蔵の間をクローズ・アップしただけに、安っぽさが先に出でしまったように感じた。
出演者には、今でこそ大河ドラマを演じきった松本潤をはじめ、六郎太には阿部寛、雪姫には長澤まさみ、そして敵大将には椎名桔平と、なかなか豪華なキャストとなるが、今から16年の前の作品となると、みんなまだまだ若く、松本と長澤については青臭い演技が今ひとつ。その中で、異彩を放ていたのが、当時、ようやく名前が売れ始めていた宮川大輔。ずる賢い新八役がはまり役のように見えた。