復讐者に憐れみを

劇場公開日:

解説

2004年度カンヌ国際映画祭で、韓国映画初のグランプリ受賞を成し遂げたパク・チャヌク監督。受賞作「オールド・ボーイ」、続く「親切なクムジャさん」と併せて“復讐三部作”を成すシリーズの第一作。壮絶な暴力描写と陰惨なストーリーが賛否両論を呼び、韓国内では興行的に苦戦した。「JSA」のソン・ガンホ、シン・ハギュン、「ほえる犬は噛まない」のペ・ドゥナが、これまでイメージを覆すキャラクターを演じている。

2002年製作/117分/韓国
原題または英題:sympathy for Mr.Vengeance
配給:シネカノン
劇場公開日:2005年2月5日

ストーリー

生まれつき話すことも聞くこともできない障害を持つ青年リュ(シン・ハギュン)。友だちもいなくひどく内気な彼は、両親を失った後、大学進学をあきらめて自分の面倒をみてくれた姉を、心から愛し、感謝している。そして、自分とはちがって自信たっぷりに生きている恋人ヨンミ(ペ・ドゥナ)ができ、リュは人生で初めて幸せを感じる。しかし、姉は長い間腎臓を患い、移植を受けないと危険な状態にあった。リュは自分の片方の腎臓を姉に提供したいと願うけれど、検査の結果は不適合。さらに、姉の看病のために欠勤したことが響いて、勤務先の工場から解雇されてしまう。退職金はわずか1千万ウォン(7千ドル)。その後も災難は続く。臓器取引の闇組織を訪れるが、1千万ウォンを奪われたうえに、麻酔から目が覚めると、なんと自分の腎臓を摘出されていた。そんなとき、病院から姉の移植にドナーが現れたと知らされるが、もう金はない。「革命的無政府主義者同盟」のメンバーである過激派のヨンミは、金持ちの子供を誘拐して身代金をとることを持ちかける。「正しい理由のための誘拐なら、犯罪じゃないわ」とささやいて…。身代金を無事に手にし、あとは子供を親に帰すだけ。だがリュの姉は、自分のために弟が犯罪を犯したことを知ってしまい、自責の念に駆られて自殺してしまった。だが、偶発的な事故で子供まで溺れて死んでしまい、リュは全世界を敵に回す…。電気技師から工場経営者の地位まで上り詰めた、努力の男ドンジン(ソン・ガンホ)。美しい妻との間には、かわいい娘がひとり。だが、家庭を顧みない夫のもとを妻は去り、工場の経営は暗礁に乗り上げていた。彼に残されたのは、ひとり娘のユソンだけだ。そのユソンがある日、何者かに誘拐されてしまう。彼に送られてきたのは、人形を抱いた娘の写真。悩みぬいたドンジンは犯人からの指示通り警察に通報するのをやめ、身代金を用意する。しかし、その翌日、ユソンは湖で溺死体となって発見される。最愛の娘の冷たくなった体を前に、犯人への復讐を誓うドンジン。一方で、姉を失ったリュも臓器密売組織への復讐を決意する。こうして終わりのない復讐とその悲劇は幕を開けるのだった。

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映画レビュー

4.0リュの境遇に同情せずにはいられない。

2024年8月7日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

印象に残るシーンがとても多かった。

特にリュが恋人のヨンミと会うエレベーターの中でのシーン。名場面ではないでしょうか‼︎

重い内容ですが、これぞ韓国映画が表現できる作品だと思います。

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3.0これが「恨の文化」というものなのか

2024年4月13日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

〈映画のことば〉
復讐が復讐を呼び、更なる孤独を呼び込む。
私はこの映画で学んだ。
深すぎる愛は、返り血を浴びるのだ。

古田博司さんという方は歴史学者て、とくに韓民族の(政治)思想史に詳しい方のようですけれども。
同氏によれば、韓国は「恨」の文化の国柄で、朝鮮文化における恨は「伝統規範からみて責任を他者に押し付けられない状況のもとで、階層型秩序で下位に置かれた不満の累積とその解消願望」と定義づけられているようです。

冒頭の「映画のことば」は、厳密には映画のことば(作品の脚本の中に現れるセリフ)ではなく、本作に寄せた阪本順治監督の作品紹介の言い回しになります。
しかし、本作のテーマを言い得て妙なので、映画のことばとして拾うこととしたものでした。

そのようなイメージどおりに、緑を基調とした全体の色使いの画面が独特だったと思いました。まず。評論子は。
画面から受ける印象は、まるで、現実から遊離したかのような不気味なな雰囲気すら醸し出していたように思います。

結局は「恨の文化」それ自体や「恨の文化(復讐という怨念)の無意味さ」を描いたと評論子は、受け止めました。本作を。
「人を呪わば穴二つ」とは、本作のような場合を指して言う言い回しではないかとも思いました。

本作の特典映像の解説によれば、本作は、別作品『オールド・ボーイ』の原点とされていることなどです。(ちなみに、同作は、ハリウッド・リメイクもされていると承知しています。)
また、本作は別作品『別れる決心』、同『JSA』など、いわば極限状態に置かれた人々の心情の機微を描くことに長(た)けた、パク・チャヌク監督の手になる一本ということで、さらに上掲『オールド・ボーイ』や別作品『親切なクムジャさん』などと並んで、いわゆる「復讐三部作本として、高い世評を受けていると承知しています。

かてて加えて、本作は、約40億円の負債を抱えて倒産(民事再生法)するまで、『月はどっちに出ている』『フラガール』などの秀作を世に送り出し続けたシネカノンの配給作品であることにも、食指を動かされていた一本でしたけれども。

その期待にも違(たが)うことなく、深い姉弟愛を背景として、それ故の復讐者の思念を描き切った一本として、佳作の評価に値する一本だったと思います。
評価子は。

(追記)
本来、映画を観ることは楽しいことのはずなのですけれども。
何と言っても映画を観ることが好きで映画ファンをやっているわけですから。
本作のような作品を観ると、正直、心がズンと沈みます。
しかし、それだけ、本作が良い作品だったということでしょう。
それでも、映画ファンであって、映画ファンを続けていて良かったと思えるのは。
これからも、映画ファンでありたいとも思えた一本でした。
評論子には。

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talkie

4.0「恨」の表出としての復讐

2023年3月1日
iPhoneアプリから投稿

パク・チャヌク映画の脚本力の高さには毎回驚かされる。登場人物たちの足場を少しずつ少しずつ切り崩していくような着実な追い詰め方。それゆえ登場人物たちの行動や言動には、そうせざるを得なかった、という苦渋と後悔と諦念に満ちた必然性がある。数多ある選択肢の中からたまたま一つをチョイスした、という感じがまったくしない。そういう意味では『ブラッド・シンプル』『ファーゴ』あたりのコーエン兄弟作品に近いかもしれない。振り返ったときにはもう戻れなくなっている。登場人物たちの緊張関係とその顛末は、もはや滑稽にすら思えるほど勘違いとすれ違いの連続で、それはあたかも現代社会のグロテスクな戯画であるかのようだ。

一直線に地獄へと続くこの連鎖から逃れる唯一の術は、各々が抱く復讐心をかなぐり捨てることだったが、それができれば苦労はしない。韓国はその被支配的な歴史経緯から「恨」の文化というものが強く根付いている。これは単に怨恨のみならず、憧憬や無常感をも含む感情的なしこりのことを指す。こうした「恨」の最もラディカルな表出が復讐だ。ゆえに復讐をやめろというのは、韓国人たちの歴史と実生活の両面に強く結びついた「恨」の文化を手放せと言っているようなものだ。しかし繰り返すようだが、そんなことは簡単にできない。日本がいつまでも忠臣蔵」の「恩義」的規範意識を脱することができないのと同じで、「恨」もまた韓国においてはきわめて強固で普遍的なナショナリズムなのだ。

ただ、本作のラストシーンでは、そうしたナショナリズムの行く末が、人間性の枯れ果てた不毛地帯であることが示される。本当にこれでよかったのか?というパク・チャヌクの疑念が、謎の男たちに思いがけず刺殺されたソン・ガンホの今際の際の表情に表れている。

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因果

3.5愛は

2022年4月20日
iPhoneアプリから投稿

愛は復讐に
愛は血に
愛は死に

無惨にも姿を変える
それを刻々と映し出した映画

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JYARI

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