氷の国のノイ
劇場公開日:2004年6月12日
解説
アイスランドの最北端、雪山とフィヨルドに閉ざされた村。その村で、ちょっとはみ出し者の少年が繰り広げる、恋と成長のちょっぴりほろ苦いストーリー。火山と氷河の壮大な景色をカラフルに切り取る抜群の映像センス、アキ・カウリスマキ監督作品に通じるような悲哀と、とぼけた味が混在する愛らしいストーリー、ダーグル・カウリ監督が最も影響を受けたという『ザ・シンプソンズ』などアメリカのシットコムに通じる皮肉のきいた笑いの感覚。数々の映画祭で話題をさらい、批評家も一般観客も太鼓判を押したアイスランドの新世代映画。
2003年製作/93分/アイスランド・ドイツ・イギリス・デンマーク合作
原題または英題:Noi albinoi
配給:イメージフォーラム
劇場公開日:2004年6月12日
ストーリー
17歳のノイ(トーマス・レマルキス)はアイスランドの最北部、フィヨルドと火山に囲まれた人口957人の村、ボルンガルヴィクで退屈な日々を送っている。この地方は、冬には氷河と切り立った火山によって外界から閉ざされ、「陸の孤島」になってしまう。風景は美しいが、実際は何もないところだ。朝に弱いノイを、学校に遅刻しないようにと起こしてくれるのは、一緒に住んでるリナおばあちゃん(アンナ・フリズリクスドッティル)だ。おばあちゃんは、眠っているノイの耳元でショットガンを一発ぶっぱなす。ノイは毎朝それでベッドから飛び起きる。ノイが、おばあちゃんと二人で朝食を食べているとお父さん(スロストゥル・レオ・グンナルソン)が車でやってくる。飲んだくれでエルビス・プレスリーにいかれてるお父さんは、今はノイと別々に住んでいる。お父さんは、ノイの高校の出席率が悪いという手紙が校長先生から送られてきたので、心配して会いに来たのだ。実際、ノイは授業をサボってばかり。たまに出席しても寝てるだけ。今日もお父さんが車で送ってくれたのに、数学の試験を名前だけ書いて提出し、学校から出ていってしまった。そのあと彼が向かうのは、町のドライブイン・スタンド。いつもノイはそこにあるスロットマシンに細工をしてお金をくすね、ビールを一杯飲む。あと行くところといえば、偏屈なオヤジがやってる本屋さん。本屋のオヤジのオスカル(ヒャルティ・ログンヴァルドゥソン)は、ノイの唯一の友達だ。その頃学校では、ノイの行動が問題になっていた。先生たちは彼に本当に手を焼いている。当然勉強も全然出来ないし、彼のとっぴな行動は同級生たちさえ煙たがっている。困り果てた校長先生は、彼を精神科医に見てもらうことにする。ノイはわけがわからない心理テストやIQテストをやらされて憮然としているが、診断結果はなんと天才児。IQテストの結果は驚異的、たまたま置いてあったルービック・キューブを数秒で完成させてしまうノイに、精神科医もびっくりだ。けれど、その才能が彼を周囲から孤立させているとも言える。ノイにとっては、学校の授業なんてくだらなくて真面目に受けることが出来ない。まわりの人は、彼が天才なのか単に頭が足らないのか分からない。みんな彼のことを避けているみたいだ。だがある日、ノイは恋に落ちる。例のドライブイン・スタンドに新しい女の子が入ったのだ。名前はイーリス(エリン・ハンスドッティル)。すごくキレイでいいコだ。ノイはスタンドでちょっと話しただけで彼女に夢中になった。イーリスは本屋のオヤジの娘で、どうやら都会から出戻ってきているらしいが、そんなことは恋に落ちたノイには関係ない。彼女に会いにスタンドに通ってとうとうデートにこぎつける。初デートでノイはイーリスを自分のお気に入りの場所、村の自然科学博物館に連れていく。最初は夜の博物館を気味悪がっていたイーリスだが、やがて打ち解け、二人は世界地図の前で、この村から一緒に逃げ出そう、と約束する。だが学校ではまたノイの行動が問題になっていた。ノイは自分が授業をサボっている間、テープレコーダーを自分の机において、出席を認めてもらおうとしたのだ。とうとうキレた先生は、校長にノイの退学を迫った。そしてノイは、ついに学校をクビになってしまう。自分を負け犬だと思っているので、息子が自分のようにならないようにと、いつも心配しているお父さんは、それを聞いてカンカン。その後何とかしてお父さんは、墓掘り人の仕事を探してきてくれるが、吹きさらしの墓地の凍りつく大地にスコップの歯は全く立たない。全然やる気を無くしたノイをおばあちゃんも心配してくれて、村で有名な占い師に会わせてくれるが、占いの結果は「死」という不吉な暗示ばかりだ。行き詰まってしまったノイは、とうとうイーリスとの逃避行を決行すべく、銀行強盗を思い立つ。村の銀行で銃を突きつけて店員を脅すが、みんなに子供扱いされて相手にしてもらえないので、貯金を全額下ろすことにして、車を盗んでイーリスのスタンドに乗りつける。「さあ、逃げ出そう」。ノイはイーリスに手を差し出すが……。
スタッフ・キャスト
- 監督
- ダーグル・カウリ
- 脚本
- ダーグル・カウリ
- 製作総指揮
- ティビ・マグナソン
- 製作
- キム・マグナソン
- 撮影
- ラスムス・ビデベック
- 音楽
- スロウブロウ
- 編集
- ダニエル・デンシック