ホテル・ニューハンプシャー

劇場公開日:

解説

3つのホテル・ニューハンプシャーを舞台に、ベリー一家の不思議な体験を描く。製作はニール・ハートリー。ジョン・アーヴィングの同名原作(集英社刊)を基にトニー・リチャードソンが監督・脚色。撮影はデイヴィッド・ワトキン、音楽はレイモンド・レパードが担当。出演はジョディ・フォスター、ロブ・ロウなど。

1984年製作/アメリカ
原題または英題:The Hotel New Hampshire
配給:松竹富士
劇場公開日:1986年7月12日

ストーリー

第2次大戦前夜の1939年。ハーバード大学入学をめざすウィン・ベリー(ボー・ブリッジス)はメイン州アーバスノットのホテルでアルバイト中に同郷のメアリー(リサ・べインズ)と出会い恋におちた。そこはユダヤ人フロイト(ウォーレス・ショーン)と熊の曲芸を売りものにしているホテルだったが、ウィンは、いつしか熊のいるホテルを経営したいと思うようになっていた。メアリーと結婚したウィンは5人の子供の父親になった。祖父アイオワ・ボプ(ウィルフォード・ブリムリー)がフットボールのコーチをしている高校で教師をしていたウィンは、家族全員がいっしょにいられることを理由にホテル経営にのり出した。メアリーの母校である女学校を買いとって改造された「ホテル・ニューハンプシャー」はこうして生まれる。子供たちは、このホテルで成長していく。同性愛者の長男フランク(ボール・マクレーン)、美しくてしっかり者の長女フラニー(ジョディ・フォスター)、姉を熱愛する次男のジョン(ロブ・ロウ)、成長のとまった文学少女の次女リリー(ジェニー・ダンダス)、そして耳の不自由な三男エッグ(セス・グリーン)。ハロウィンの夜、フラニーに憧れていたダブ(マシュー・モディン)とその仲間がフラニーをレイプするという事件が起きた。こうした様々な出来事や青春の悩みに戸惑いながらも、月日は流れていった。はじめは順調だったホテル経営も祖父の急死の頃から傾き始めた。そんなある日、消息の絶えていたウィーンのフロイトから、熊のいるホテルを手に入れたので経営を手伝って欲しいと頼まれ、一家はオーストリアに渡ることになった。しかし、メアリーとエッグが途中飛行機事故に遭い死んでしまう。ウィーンは、予想に反してすさんでいた。フロイトはナチの為に盲目になり、熊のぬいぐるみを着た娘スージー(ナスターシャ・キンスキー)は心に傷をもつ内向的な性格だった。なじみのない土地でホテルのたて直しに心血を注ぐ一家。第2の「ホテル・ニューハンプシャー」も軌道にのった頃、ホテルをアジトとしていたエルンスト(マシュー・モディン2役)を中心とするテロリストたちがオペラ座爆破未遂事件を起こし、その犠牲となってフロイトが命を落とし、ウィンも視力を失った。オペラ座を救った一家として、また同時に、リリーが書いた一家の物語「大きくなりたくて」がベスト・セラーになったため、一家は一躍有名になり、彼らはスージーを連れてアメリカに戻った。フラニーとジョンは、遂に姉弟の一線を超えた。全てが順調だった。しかし、第1作目のように2作目が成功しなかったリリーは「大きくなれなくてごめんなさい」という言葉を残しホテルの窓から飛び降り自殺をしてしまう。多くの愛する者たちを失ったベリー一家は遂にアーバスノットの地にたどり着いた。ウィンが抱き続けてきた夢が、メアリーとの思い出の地で実現したのだ。結婚するフラニー。姉への想いをふっきって、スージーを愛するジョン。彼によって初めてぬいぐるみを脱ぎ捨てたスージー。彼らの新しい人生が始まろうとしていた。

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映画レビュー

3.5小粒版『ガープの世界』

2022年2月9日
iPhoneアプリから投稿

あっちこっちに散逸した物語の筋が途方もなく大きな愛によって不思議と大団円へ導かれるという構造はジョン・アーヴィングに特有のものであり、したがってここを再現できるかどうかがアーヴィング映像化作品としての価値を大きく左右するわけだが、本作はけっこううまいことやっていたと思う。

ただ、アーヴィングの映像化作品は本作の数年前にジョージ・ロイ・ヒルが監督した『ガープの世界』が構成的にも技法的にも大傑作であったため、それと比べてしまうと幾分か地味な印象。というか構成や技法もかなり強く『ガープ』が意識されている気がする。

死んだはずの家族が談笑し合うカットの裏面で「それでも僕たちは生きていかなくちゃいけない」と言って物語を締め括ったのはかなり好きだった。希望と絶望の表裏一体性を戯画的に描き出すスタイルはアーヴィング文学の一つの特徴であり、ここのカットはそれをうまく映像の形式に落とし込めていたと思う。

そういえば相米慎二『お引越し』のエンディングも、全ての時空が混じり合った亜空間で主人公が映画内で交流のあった知人や友人や家族と再び交流するというものだったけど、もしかしたらこれが元ネタなのかもしれない。あったかもしれない世界を夢や想像の中に描き出すことで現実の自分が少しでも前向きに生きていくことができるなら、それは決して悪いことじゃないと思う。

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因果

1.0前衛?さっぱりわからない

2021年10月19日
スマートフォンから投稿

コメディなのか、ブラックなのか、シュールなのか、とにかくテーマ以前に話しがあちこち唐突で、且つ突然脈絡もなく飛ぶので、まるで何だかわかりません。原作読了前提かな?50-60年代のようにザラついた粗い画面も気になります。
評価してる人も多いようなので、感性で観る人にはいいのかもね?

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越後屋

3.5アメリカ人家族の強い絆がどんな荒波をも乗り越える逞しい人生ドラマ

2020年7月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

トニー・リチャードソンの悲喜劇渾然一体の映画文学。ジョン・アービング文学の映画化ではあるが、各登場人物の強烈な個性の輝きは、リチャードソン演出の成果。舞台がアメリカとオーストリアのため、リチャードソンのイギリス的なシニカルさが薄まり、ストレートな性表現がアメリカ映画らしさを前面に出す。ジョディ・フォスターはの演技は、余裕すら感じさせる巧さ。ロブ・ロウは役柄に合っいて好印象を持つ。
突然の不幸や事故に遭遇しようと、常に前向きに生きて行く強かさが、アメリカ人家族の強い絆で描かれている。

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Gustav

2.0好きにはなれなかった

2018年12月14日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
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kossy