ノッティングヒルの恋人

ALLTIME BEST

劇場公開日:1999年9月4日

解説・あらすじ

ハリウッドの人気女優と冴えない書店主の恋の行方をジュリア・ロバーツ&ヒュー・グラント共演で描いたロマンティックコメディ。ロンドン西部のノッティングヒルで小さな書店を営む男性ウィリアム。ある日彼の店に、ハリウッド女優のアナが訪れる。その後、ウィリアムは街角で偶然アナとぶつかってジュースをかけてしまい、近くにある自宅で彼女の服を乾かすことに。アナは不器用だが誠実な彼に惹かれ、2人は恋に落ちるが……。脚本は後に「ブリジット・ジョーンズの日記」「ラブ・アクチュアリー」などを手がけるリチャード・カーティス。エルビス・コステロがシャルル・アズナブールの名曲をカバーした主題歌「She」も大ヒットを記録した。

1999年製作/123分/アメリカ
原題または英題:Notting Hill
配給:松竹、ギャガ・ヒューマックス
劇場公開日:1999年9月4日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第57回 ゴールデングローブ賞(2000年)

ノミネート

最優秀作品賞(コメディ/ミュージカル)  
最優秀主演男優賞(コメディ/ミュージカル) ヒュー・グラント
最優秀主演女優賞(コメディ/ミュージカル) ジュリア・ロバーツ
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映画レビュー

4.0 【82.2】ノッティングヒルの恋人 映画レビュー

2026年1月11日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

ロマンティック・コメディというジャンルにおいて、1990年代はひとつの黄金時代であった。その掉尾を飾る傑作として君臨するのが、1999年に公開された「ノッティングヒルの恋人」である。本作は、単なる男女の邂逅と結末を描く通俗的な恋愛映画の枠を越え、パブリック・イメージとプライベートな幸福の乖離という現代的なテーマを、英国的な諧謔と洗練された演出によって昇華させた。映画史的な文脈で見れば、本作は「フォー・ウェディング」で提示されたリチャード・カーティス流のブリティッシュ・コメディの完成形であり、ハリウッドの象徴であるジュリア・ロバーツをメタフィクショナルに配役することで、虚構と現実の境界線を遊戯的に描いた記念碑的作品といえる。
作品の完成度という観点から本作を解剖すると、まず特筆すべきは脚本の構成力である。リチャード・カーティスによる筆致は、一見するとお伽話のような「格差愛」を描きながらも、その実、舞台となるロンドンのノッティングヒルという土地の空気感を、登場人物たちの生活臭とともに緻密に編み込んでいる。監督のロジャー・ミッシェルは、派手なカメラワークを排し、俳優たちの視線の交差や、沈黙の間を丁寧に掬い取ることで、物語にリアリティを付与した。特に、四季の移り変わりを一カットの長回しで表現したシーンは、時の経過と喪失感を視覚的に統合した白眉の演出であり、編集の妙が光る。本作の調和は、奇跡的なバランスの上に成り立っている。あまりに甘美になりがちなプロットを、脇を固める友人たちの辛辣かつ温かいユーモアが中和し、大人の鑑賞に堪えうるビターな後味をわずかに残す。この多層的な構造こそが、公開から四半世紀を経てもなお、本作がロマンティック・コメディの金字塔として語り継がれる所以であろう。
キャスティングと演技に目を向ければ、本作の成功の過半は主演二人の存在感に依拠している。
主演のアンナ・スコットを演じたジュリア・ロバーツは、当時すでに世界最高のマネーメイキング・スターであった自らのアイコンを、劇中のキャラクターに投影させるという大胆なアプローチを見せた。彼女が演じるアンナは、冷徹なまでのプロフェッショナリズムと、一人の女性としての壊れやすい孤独を同時に抱えている。ロバーツは、その特有の豪快な笑顔を封印し、時に憂いを含んだ眼差しで、銀幕の女王が抱える「見られることへの疲弊」を演じきった。特に、劇中終盤の有名な告白シーンで見せた、震えるような声と懇願するような表情は、観客に対して彼女が単なるスターではなく、生身の人間であることを痛切に印象づける。200文字という制約の中で語り尽くせぬほど、彼女の演技は抑制と解放のバランスが絶妙であり、本作に品位を与えている。
同じく主演のウィリアム・タッカー役を務めたヒュー・グラントは、本作によって「英国の良心」とも言うべき優柔不断で善良な中産階級の男というパブリック・イメージを決定的なものにした。彼の演技の真骨頂は、言葉に詰まった際の間や、自嘲的な微笑にある。グラントは、圧倒的な存在感を放つロバーツに対し、あえて受動的な演技に徹することで、観客の共感を誘う依代としての役割を完璧に遂行した。彼の持つ知的な色気と、時折見せる情けなさが同居する様は、現実味のない設定に確かな説得力を与えている。
助演のスパイクを演じたリス・エヴァンスは、本作における最大の収穫とも言える怪演を見せた。不潔で突飛な言動を繰り返す居候という、ともすれば物語のトーンを壊しかねないキャラクターを、彼は強烈な愛嬌と計算されたユーモアで造形した。彼の存在は、浮世離れしたアンナとウィリアムの恋路を、現実的なロンドンの混沌へと引き戻す重力のような役割を果たしている。
また、ウィリアムの妹ハニーを演じたエマ・チェンバースの演技も見逃せない。彼女の過剰なまでの熱量と無邪気さは、アンナというスターを特別視する世間の象徴でありながら、同時にその壁を無自覚に壊していく親密さを象徴していた。彼女の存在が、友人グループの結束と温かさをより強固なものにしている。
そして、クレジットの最後に名を連ねるベテラン、ヒュー・ボネヴィルが演じたバーニーの存在感も特筆に値する。アンナの正体に気づかないまま、彼女の「売れない仕事」を気遣う彼の無知ゆえの優しさは、本作が描く「名声の虚無」を逆説的に浮き彫りにする見事なスパイスとなっていた。
脚本・ストーリーにおいては、対比の構造が徹底されている。ハリウッドの喧騒とノッティングヒルの静謐、莫大な富と青いドアの小さな家。これらの対立軸が、最後に「一人の女性として愛されたい」という普遍的な願いに集約されていくプロセスは、脚本術として極めて純度が高い。映像面では、撮影監督のマイケル・コールターが、ロンドンの街並みをポストカードのような美しさではなく、生活感のある柔らかい光で捉えている。美術や衣装も、アンナのシャープな装いと、ウィリアムのどこか野暮ったいコーデュロイの質感が、二人の住む世界の違いを視覚的に饒舌に語っている。
音楽の選定もまた、本作の情緒を決定づけた。主題歌であるエルヴィス・コステロの「She」は、シャルル・アズナヴールの名曲をカヴァーしたものだが、コステロの情感豊かな歌声は、物語のプロローグとエピローグを鮮やかに彩り、映画全体のトーンを定義づけた。また、劇中で流れるロナン・キーティングの「When You Say Nothing at All」など、歌詞が物語の文脈を補完する演出は、当時のミュージック・ビデオ的な手法を映画に高い精度で融合させた例と言える。
評価の側面では、本作は興行的な大成功のみならず、批評的にも高い支持を得た。第57回ゴールデングローブ賞において、作品賞(ミュージカル・コメディ部門)、主演男優賞、主演女優賞の3部門にノミネートされた事実は、本作が単なるデートムービーに留まらない質を備えていた証左である。英国アカデミー賞においても観客賞を受賞するなど、大衆性と芸術性の幸福な結婚を実現した。
総じて「ノッティングヒルの恋人」は、1990年代という時代が持っていた、楽観主義と洗練されたロマンティシズムを凝縮した結晶体である。スターシステムを利用しながらスターシステムを批評し、最終的には「愛」という最も古典的な主題へと回帰するその手腕。冷笑主義が蔓延する現代の映画界において、これほどまでに真っ直ぐに、かつ知的に幸福感を提示できる作品は稀有である。本作は、映画が夢を見る装置であることを、最も美しい形で証明し続けている。

映画批評家としての視点に立ち、映画全史における「脚本」という観点から改めて相対的に精査いたします。
リチャード・カーティスの脚本は、確かにロマンティック・コメディという枠組みにおいては極めて高い完成度を誇ります。しかし、映画全史における「脚本・ストーリー」のS10(満点)は、例えば『市民ケーン』や『ゴッドファーザー』、あるいは構造の妙で言えば『裏窓』といった、物語の形式そのものを変革した、あるいは人間の深淵を完璧な構成で描き出した作品に冠されるべき聖域です。
本作の脚本は、卓越した台詞回しとキャラクター造形に秀でていますが、構造自体はジャンルの伝統に忠実であり、予定調和の美学に基づいています。シニカルな批評的視座を含めるならば、現代的な洗練はあるものの、物語の骨格そのものに「全映画史上空前絶後の革新性」があるかと問われれば、一歩譲るのが妥当な判断かもしれません。
ご提案を受け、脚本の評価を「ジャンル内最高峰だが、全史相対で見れば極めて優秀な水準」であるA9へと修正し、再算出いたします。
作品[Notting Hill]
主演
評価対象: ジュリア・ロバーツ、ヒュー・グラント
適用評価点: A9
助演
評価対象: リス・エヴァンス、エマ・チェンバース、ヒュー・ボネヴィル
適用評価点: B8
脚本・ストーリー
評価対象: リチャード・カーティス
適用評価点: A9
撮影・映像
評価対象: マイケル・コールター
適用評価点: B8
美術・衣装
評価対象: スチュアート・クレイグ
適用評価点: B8
音楽
評価対象: トレヴァー・ジョーンズ
適用評価点: A9
編集
評価対象: ニック・ムーア、デヴィッド・フリーマン
適用評価点: +1
監督
評価対象: ロジャー・ミッシェル
総合スコア:[82.2]

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honey

5.0 往年の人気女優ジュリアロバーツの最高傑作はと聞かれたら「プリティウ...

2026年1月9日
スマートフォンから投稿

往年の人気女優ジュリアロバーツの最高傑作はと聞かれたら「プリティウーマン」でも「ベストフレンドウエディング」でもなく「ノッティングヒルの恋人」を挙げる。何度見ても、四半世紀前の作品でも、お約束ストーリーでも、いいものはいい。久しぶりに観たら、もう最初から最後までいいシーンだらけで感動しっぱなしだった。今さらながらロマコメの金字塔として最上位ランクに昇格。9点

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かんりにん

3.5 恥ずかしながら・・・

2026年1月2日
PCから投稿

好きです、この作品。
普段はロマコメを否定しがちですが、思わず男心をくすぐられてしまいます。「ありえへん」とはわかっていても・・・
って言うか、Hグラントが素敵すぎます。彼しか成立しないですね、この役どころ。
ちょっと元気になりたいときに、何度でも観れそうです。

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おまつ

5.0 破壊級の可愛さ

2025年12月28日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

ジュリア・ロバーツ可愛すぎ♥️♥️
あの屈託ない笑顔。素敵すぎる。。。

もちろんタイトルは知っていたけど、なかなか観れず、ここまで至ってしまったことを後悔…名作だ。
所々プリティ・ウーマンのネタだったり、くすりと笑ってしまうところもありながらも、臆病な2人の不器用なラブストーリーがもどかしくも美しい。
支える仲間も素晴らしくて、ラブストーリーだけじゃないところがまた素敵。

早くもう1回観よ。

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いつかLAに住みたい