炭坑(1931)

解説

「三文オペラ(1931)」「西部戦線一九一八年」のG・W・パブストがメガフォンを執った映画。カール・オッテンの原案に従いカール・オッテン自身がラディスラウス・ヴァホダ、ランペル二人の協力を得てシナリオに組み立てたのもで、出演者はアレクサンダー・グラナッハ、フリッツ・カンパース、エルンスト・ブッシュ、エリザベート・ウェント、ダニエル・マンダイユ、ジョルジュ・シャルリア、アンドレ・デュクレ、アレックス・ベルナール等である。

1931年製作/ドイツ
原題または英題:Kameradschaft La Tragedie de la Mine

ストーリー

独仏国境に近い炭坑地方の話。とあるフランス集落へ或る日、三人のドイツ人が国境を越えて買物に来た。そしてその帰りがけフランス人の集まる舞踏場へ立ち寄った。しかし三人は相手にされず剣もほろろに追い返されてしまった。翌日、フランス炭坑の一部は防火壁修繕の手違いから轟然たる音響と共に爆発した。埋没された坑夫数百人に危機が迫った。この惨事の報は程遠からぬドイツ炭坑に伝わって来た。国籍こそ異なれ、皆同じ労働者仲間だ。そこで数分の後には既にドイツの救援隊は万端の用意を整え国境を突破して行った。フランス炭坑の入口には埋没された坑夫の家族達が押し寄せて来て、不安と興奮と恐怖に落ち着きを失っている。そこへドイツの労働者が到着した。予ねてドイツ人を敵視していたフランス人たちは、未だ嘗て夢想だにもしなかったこの救援隊の来訪を見て、驚異の目を見開いた。だがこの救援隊に加わらなかった三人のドイツ人がいた。前日、酒場でフランス人達から冷遇される男共である。が、時がたつにつれ個人的感情に支配される自分達の誤診を悟った彼等はついに意を決してフランス労働者の救援に赴くことになる。フランスに通づる廃坑づたいの間道を三人はまっしぐらに突進した。やがて現場に達した彼等は爆発の余燼に苦しむ一老鉱夫とその孫の若者を発見した。が、その瞬間ふたたび襲い来る土砂崩壊は彼等五人を狭い坑道内に閉じ込めてしまった。そしてその足下に地下水の濁流が押しよせた。三人は必死だった。彼等は僥倖にも見つけ出した電話機により見張所へ急を訴えた。そして数時間後無事救い出された。多くの被害者のなかには意識を失った結果、幻覚に襲われ、救援のドイツ坑夫を大戦中の敵兵と思い違えた者などあり、悲喜劇を各所に演じたが、ともかくも救援作業は着々と進み、遂に遭難者の最後の一人まで運び出すことが出来た。数週間が経過する。作業中に負傷したドイツ人達の傷も癒えて、今日はフランス病院を退院する。多数のフランス坑夫がこれらドイツ人を送って国境まで同行した。互いの口から発せられる感謝の言葉。彼等の胸中には同じ感情が流れた。労働者はみんな仲間同志なんだ。しかし彼等が声を和して坑夫の唄を歌っている時、フランスとドイツの国境の鉄柵は入念に造られていた。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

5.0素晴らしい、ただ素晴らしい、「サンライズ」のように素晴らしい

2024年7月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

坑道を焼き尽くす炎、救出隊のトラック、最後の別れかもしれぬと視線を交わす坑夫と妻、幼い息子、その先に空高く立ち昇る黒煙、巨大なシャワー室、決意するドイツ坑夫、巨漢の現場監督、聡明な所長、国境を超えるドイツ救出隊、押し寄せる群衆、男たちを満載して地下に下る細長のリフト、マスクをつけた独坑夫、錯乱する仏坑夫、「独兵だ、撃ち殺せ!」「独兵だ、撃ち殺せ!」・・・
地下の国境を越え、独自に救出へと向かう三人組、引退した老人とその孫、そして馬、崩落、繋がる内線、救助、大団円、ふたたび分断される国境線・・・

千人に達するだろう町の人々のすべてに至るまで、画面に映るあらゆる人間が、あの時代、あの世界を共有していることからくる圧倒的な切実さを、映画が体験する瞬間はもはや訪れない。
想うこと、憎むこと、赦すこと、喜ぶこと、生きること、死ぬこと、働くこと、愛すること、すべては単純でなければならない。
しかし、それをフィルムに乗せる手はずは、どこまでも繊細でなければならない。
映画に近づくことだけが、映画の正義であり、欲望である。

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