裁きは終りぬ

劇場公開日:

解説

「火の接吻」のアンドレ・カイヤットと「二百万人還る」のシャルル・スパークの合作になるオリジナル・シナリオ(台詞はスパーク)から、カイヤットが監督した一九五〇年作品で、安楽死裁判をめぐる陪審員の行動から、人が人を裁くことの問題を追求する。五〇年ヴェニス国際映画祭でグランプリを受賞。このコンビの「われわれは皆殺人者だ」(52)と対をなす作品である。撮影は「火の接吻」のジャン・ブルゴワン、音楽は「トパーズ」のレイモン・ルグランの担当。出演者はコメディ・フランセーズのクロード・ノリエ、「情婦マノン」のミシェル・オークレール、「流血の港」のレイモン・ビュシェール、「肉体の悪魔(1947)」のジャン・ドビュクール、「狂恋」のマルセル・ペレス、「花咲ける騎士道」のノエル・ロックヴェール、「幻の馬車」のヴァランティーヌ・テシエ、「幸福の設計」のアネット・ポアーヴル、「一日だけの天国」のアントワーヌ・バルペトレ、「賭はなされた」のマルセル・ムールージらが共演。

1950年製作/106分/フランス
原題または英題:Justice est Faite
配給:東映
劇場公開日:1954年8月24日

ストーリー

薬学研究所の所長代理であるエルザ・ルンデンシュタイン(クロード・ノリエ)は、所長であり彼女の情人であったヴォードレモンが喉頭癌に苦しむのをみて毒殺したため、安楽死の裁判にかけられることになった。この法廷に出席を命ぜられた陪審員は次の七名である。エヴァリスト・マラングレ(マルセル・ペレス)。馬鈴薯の植付で頭が一杯な農夫。法廷に出た留守に彼は女房を作男(マルセル・ムールージ)に寝取られた。フェリックス・ノブレ(レイモン・ビュシェール)。恋人リュリュ(アネット・ポアーヴル)と結婚したがっているカフェのボーイ。しぶっていたリュリュの両親も法廷での彼の活躍をみて婚約を許す気になった。テオドル・アンドリュウ(ノエル・ロックヴェール)。コチコチの退役軍人で娘達の当世振りが気に入らないが、娘の恋人が逃げてしまった時は彼女を優しく抱いてやる温かさもある。ジャン・リュク・フラヴィエ(J・P・グルニエ)。カソリック教会の印刷屋で熱心な信徒だが、一人息子がテンカンに生れつき、時には殺してしまおうかとさえ思う。マルスリイヌ・ミクウラン(ヴァランティーヌ・テシエ)。未亡人の骨董商で、ホテルに泊り合った青年(ミシェル・オークレール)に烈しく心を奪われるようになったが、実は彼は……。ミシェル・コオドロン(ジャン・ドビュクール)。中年のタイル製品商人で、ミクウラン夫人にのぼせ上るが、得られたのは単なるお愛想だった。ジルベール・ド・モンテソン(ジャック・カストロ)。身分の高い馬主で女を作っては捨てる色事師。裁判中昔の女の一人からつけ廻されるが、放っておけば冷めると歯牙にもかけない。--さて、開廷の結果、エルザはヴォードレモンのたっての願いにより彼に安楽死の注射を打ったことが判ったが、彼女はそのため巨額の遺産を受取る立場であり、しかもミクウラン夫人ののぼせた青年こそ彼女と将来をちぎった恋人であることも判明した。更に彼女は疳の強い外国人で無神論者である。--陪審員の決定。寝取られ亭主のマラングレは有罪と宣告する。被告のため結婚できたフェリクスは無罪。当世女の気に入らぬ軍人アンドリュウは有罪。カソリックのフラヴィエは信仰の点から安楽死を認めず、有罪。ミクウラン夫人は、被告の気持に同感して無罪。コオドロンは彼女に従って無罪。女性蔑視のモンテソンは有罪。かくて無罪三、有罪四でエルザは五年の刑を受けることになった。遺産獲得のための殺人なら軽すぎ、自由を犠牲にしても約束を守った安楽致死なら重すぎる。陪審員は良心の命ずるままにこの決定をしたのだが、果してそれは正しかったか。一体人は人を裁けるのか。しかし“裁きは終”ったのである。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第1回 ベルリン国際映画祭(1951年)

受賞

金熊賞(スリラー&アドベンチャー映画) アンドレ・カイヤット
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映画レビュー

4.5まだまだ知らない名画がありました!

2020年10月3日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

戦前戦後映画の鑑賞の一環で観たが、
まだまだ知らない名画があることを痛感。

陪審員に選ばれた各人が、それぞれ己自身の問題等を抱えながら裁判に臨む。

裁判所外での各陪審員の問題や悩みが非常に上手く描かれる中、
果たして彼らは客観的に人を裁けるのか
という、テーマは異なりますが、ある意味
「十二人の怒れる男」以上に
深く考えさせる映画だった。

追記
以前の鑑賞でかなり印象の良い作品だった
ので、10/15 に再鑑賞。
各陪審員の実生活上での問題描写と、
判定審議の場での発言の絡みが、
再度の鑑賞で理解を深めることが出来、
この作品への評価が更に高まりました。
🌟半分追加修正させて頂きます。

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KENZO一級建築士事務所

4.0陪審員の判決に至る過程をドラマチックに描くカイヤットの秀作

2020年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

シドニー・ルメットの名作「十二人の怒れる男」に並ぶ法廷もの映画の秀作。弁護士出身のカイヤット監督とシャルル・スパークの脚本が、陪審員七人のそれぞれの生活環境から培われる価値観を克明に描き、観るものを八番目の陪審員にさせて映画の中に引き摺り込む。密室のなかでヘンリー・フォンダの推理にくぎ付けになる緊迫感の醍醐味と違って、自分が陪審員の立場ならどう判決を下すだろうかと悩みながら観る思考訓練の面白さ。また「十二人の怒れる男」は十二人の満場一致が最終判決だが、こちらのフランス映画は七人による多数決で判決が決まる。その曖昧さ微妙さが、映画の面白さ真面目さになっている。
日本で裁判員制度が施行されたとき、まずこの二作品が頭を過ぎる。

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Gustav