戦場のピアニスト
劇場公開日 2015年8月28日
解説
第55回カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールの栄冠に輝いた戦争ドラマ。第75回アカデミー賞でも作品賞ほか7部門にノミネートされ、ロマン・ポランスキーの監督賞、エイドリアン・ブロディの主演男優賞など計3部門で受賞を果たした。ナチスドイツ侵攻下のポーランドで生きた実在のユダヤ人ピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマンの自伝の映画化で、監督のポランスキー自身も、パリでポーランド人の両親のもとに生まれ、収容所で母親を亡くし、各地を放浪して生き延びたという体験を持つ。1939年、ナチスドイツがポーランドに侵攻。ワルシャワの放送局で演奏していたピアニストのシュピルマンは、ユダヤ人としてゲットーに移住させられられる。やがて何十万ものユダヤ人が強制収容所送りとなる中、奇跡的に難を逃れたシュピルマンは、必死に身を隠して生き延びることだけを考えていた。しかしある夜、ついにひとりのドイツ人将校に見つかってしまう。日本では2003年に劇場公開され、第2次世界大戦終結から70年目の15年に、デジタルリマスター版でリバイバル公開。
2002年製作/148分/フランス・ドイツ・ポーランド・イギリス合作
原題:The Pianist
配給:ブロードメディア・スタジオ
日本初公開:2003年2月15日
スタッフ・キャスト
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2020年11月8日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD
背後から撃たれお辞儀するようにぺたりと倒れ込む女性、地面に顔をこすりつけおかしな角度で体をよじらせ倒れる子供、処刑される順番を為すすべもなく待つ老人…。
この露悪的なまでの死の描写は、ロマン・ポランスキー監督が幼少時代にまさにこうした現場を体験してきたという事実によって、生臭いリアルを帯び始める。
逆に言えば、体験者ポランスキーの介在がなければ、これらは“映画的”な演出と捉えられてしまいかねない。映画という虚構は常にこうしたリスクと隣り合わせにあると言っていい。
そういう意味で、この「戦場のピアニスト」は有無を言わさぬ本物の説得力でコーティングされていて、ある意味高い下駄を履いている。ただ、この映画でポランスキーが見せる露悪的かつ詩的な演出は、体験者のリアルを超えた美しさに満ちている。
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舞台は第二次世界大戦下のポーランド、ワルシャワ。
ナチスドイツの侵攻によって、ユダヤ人への迫害は加速していきます。
初めて鑑賞した際は知識もなく、ただただナチスドイツによる侵攻がどんな結果を招いたか、ユダヤ人がどんなに酷い目にあったのかを目の当たりにする作品だと思っていました。
その衝撃を胸に、今回この作品をもう一度見て
本当に伝えたいことは別のところにあったと気がつきました。
昨日まで誰に許可されるでもなく営んでいた生活が、徐々に侵されていく恐怖。
道端に転がる子どもや老人の死体。
ドイツ兵の独断で順々に人が撃たれていく中、逃げることもできずただ死を待つしかない時間。
飢えていても食べ物を探しにいくこともできない主人公。
缶詰を抱えて歩く姿が目に焼き付きました。
作中、余計な綺麗事は一切なく、ただ生々しく
"差別というものへの恐怖"を思い知らされる作品でした。
自国を愛し、自分のルーツに誇りを持つことは構わない。
しかしそれは行き過ぎると、自国や自分自身を正当化するために異なる人種や宗教を持つ相手への否定に繋がっていきかねない。
ドイツ将校の彼が、シュピルマンの奏でるピアノの音色を聴いて最後の救いの人となったように
個人に目を向け、耳を傾けることで自分の中の差別と向き合ってみることが最初の一歩なのではないかと思います。
また、主演のエイドリアン・ブロディの演技力にも脱帽です。
ピアニストという芸術家の繊細さを身に纏う好青年が
痩せ細り、徐々に正気を失っていく姿がとても切なく
史実に基づいたストーリーをよりリアルに感じさせてくれました。
この撮影後、彼は相当な鬱状態に悩まされたというインタビューを読みました。
演技のために必要以上に心身を削ることはあまり良いことと思いませんが、それだけに彼の演技が神がかっています。
監督の問題もあり、あまり表立ってオススメはできませんが
一生に一度は観てほしい作品です。
2022年2月11日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
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自宅で動画配信サービスを利用して視聴しました。
ドイツ軍の占領下であるワルシャワで生き延びたユダヤ人ピアニスト。様々な人間の手を借りて、最後には敵国であるドイツ軍将校の手も借りて生き延びました。あれだけの人々の助けを借りることができ、奇跡手に生き残ったのは、それだけ彼のピアノの才能が神様も人々も魅了したということなのだと思いました。
戦時下のドイツ兵による横暴が局所で描かれたり、戦時下の理不尽な悲惨なシーンはいくつもあります。ですが、主人公の心情を必要以上に誇張して演出しているということはなく、自分としては見やすかったです。
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ピアニストなんて華々しいタイトルとは裏腹に、ユダヤ人として戦下激しい差別を受けながらも泥臭く生きる一人の男の実話。メッセージ性の強い作品のため、観ていてかなり心苦しい場面の連続。直接的に過激な演出を見せられるよりも、目を背けたくなるリアリティーがあった。
ただ、ユダヤ人を匿えば自らの立場も危うくなるなかでも手を差しのべてくれる人がいて、一番の敵であるドイツ兵のなかにも弱い立場にあれば助けてくれる人がいる。物語に救いがある分、幾分か心も救われた気がする。
実話である以上どうしようもないことだが、最後命の恩人であるドイツの将校は何とか助かって欲しかった。それでも人間として大切なものに気づかせてくれる良い映画だった。
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