荒野の用心棒

劇場公開日:2024年3月22日

荒野の用心棒

解説・あらすじ

イタリアのセルジオ・レオーネ監督が、黒澤明監督の傑作時代劇「用心棒」を西部劇としてリメイクした名作アクション。イタリアのみならず世界中で大ヒットを記録し、イタリア製西部劇“マカロニ・ウエスタン”のジャンルを確立した一作として知られる。

メキシコ国境に近いアメリカの小さな町に現れた流れ者のガンマン。ジョーと名乗るその男は、この町では悪徳保安官バクスターと悪党ロホ兄弟の2大勢力が対立していることを知り、彼らを争わせて共倒れさせようと画策する。

当時アメリカの西部劇テレビドラマ「ローハイド」で人気を集めていたクリント・イーストウッドが主人公のガンマンをクールな魅力で演じ、彼の名が世界的に知れ渡るきっかけとなった。エンニオ・モリコーネが音楽を担当。同じくレオーネ監督と主演のイーストウッド、音楽のモリコーネがタッグを組んだ「夕陽のガンマン」「続・夕陽のガンマン 地獄の決斗」とあわせて「ドル3部作」と呼ばれる。

1964年製作/99分/イタリア・スペイン・西ドイツ合作
原題または英題:Il magnifico straniero
配給:アーク・フィルムズ
劇場公開日:2024年3月22日

その他の公開日:1965年12月25日(日本初公開)

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

スタッフ・キャスト

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映画レビュー

4.0 筋書は同じでも…

2025年2月6日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
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すっかん

3.5 黒澤映画を模範としたマカロニ・ウェスタン先駆の秀逸は、モリコーネの音楽とイーストウッドの個性

2025年12月21日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、TV地上波

驚く

斬新

ドキドキ

イタリアで制作された西部劇、マカロニ・ウエスタンの先駆的作品として映画史に遺る娯楽西部劇の代表作。マカロニ・ウエスタンは1963年から1973年の10年間に数多く制作され隆盛を極めました。個人的には大人向けの劇映画に興味をもった1970年頃から、視聴率が見込めるジャンルとして日本のテレビの洋画劇場で放送されることから、鑑賞の機会を得ることが出来ました。その中で13歳の中学時代に観た、このクリント・イーストウッド主演作と続編ではないもののフランコ・ネロ主演で馴染みの高い日本題名「続・荒野の用心棒」(1966年)の2作品には面白かった記憶が残っています。

しかし、54年振りに観直して殆どのシーンを忘れていたのは、まだ映画日誌を書く目的で真剣に観ていなかったからです。それでも音楽を担当したエンニオ・モリコーネの口笛やコーラス、銃声などを取り入れたテンポ良いメロディの快活さ、主演クリント・イーストウッドのスタイリッシュな佇まい、そして目を覆いたくなる残酷な殺戮や暴力のシーンを特徴とした西部劇の見応えは、今回も充分味わえました。刺激の強いシーンは当時驚きを持って見ていたと思うのですが、その後の表現の多様化で免疫ができたのか、嫌悪感は無くなりました。

黒澤明監督の名作「用心棒」を模範にした脚本は、日本公開の1965年に著作権侵害として裁判になり敗訴している逸話から、良くも悪くも丸写しの評価しか出来ません。それでも西部劇に巧くアレンジしていると思います。勢力争いをする二つの組織を巧妙に渡り歩き、人質の家族を救い、奪われた金塊をメキシコ政府に返す。それをクールで思慮深いガンマンが頭脳戦で勝ちとる面白さ。イーストウッド独自のスマートな個性が生かされています。クリント・イーストウッド(1930年生まれ)はこの時34歳の遅咲きの抜擢でした。今や名監督と名優の両立を成し遂げ、生きて伝説化した映画人と言っても過言ではありません。アクション俳優で活躍した初期の作品の中で、1967年のイタリア・オムニバス映画「華やかな魔女たち」では、ヴィットリオ・デ・シーカの演出で出演しているのを観て大変驚きました。その理由が、この劇映画初出演のイタリア映画がアメリカで公開されたのが、制作から3年後の1967年だったことを知り、納得しました。「夕陽のガンマン」(1965年)と「続・夕陽のガンマン/地獄の決斗」(1966年)もまとめて1967年に公開されて、漸くアメリカ映画界でイーストウッドにスポットライトが当たったといいます。
イタリア版の原題が『Rer un pugno di dollari/ほんの一握りのドルのために』で今回BS視聴したのはアメリカ版で『A Fistful of Dollars/一握りのドル』です。モリコーネの音楽とイーストウッドの演技、それに個人的に好きなジャン・マリア・ヴォロンテ(1933年~1994年)の悪役振りに星を捧げたいと思います。

淀川長治さんが命名したと言われるマカロニ・ウェスタンは、500作品を数えるとありますが、その殆どが娯楽に徹したプログラムピクチャーと思われます。学生時代に観て個人的な映画日誌に記録した作品を上記以外で並べてみます。
「続・さすらいの一匹狼」(1965年)「南から来た用心棒」(1966年)「怒りの荒野」(1967年)「新・夕陽のガンマン/復讐の旅」(1967年)「豹/ジャガー・地獄の用心棒」(1968年)「暁のガンマン」(1968年)「バスタード」(1968年)「荒野の大活劇」(1969年)「復讐のガンマン/ジャンゴ」(1971年)
イタリア俳優のジュリアーノ・ジェンマ(1938年~2013年)が日本でも人気が高く、日本公開作品も多かったと思います。

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Gustav

4.0 二回目のレビューなり

2025年12月18日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
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チネチッタ

4.0 完全版サントラCDの発売を熱望

2025年12月5日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

単純

斬新

ドキドキ

 主演クリント・イーストウッド、監督セルジオ・レオーネ、音楽担当エンニオ・モリコーネの名を一躍世界に知らしめたマカロニ・ウエスタンの原点にして、日本が誇る傑作時代劇『用心棒』(1961)のリメイク西部劇。

 最近は盗作呼ばわりするメディアも随分と少なくなったが、かつてはレオーネを主犯格に散々な言われようだった本作。
 悪口の主な火元は東宝と配給会社の東和だが、著作権を国際的な裁判の俎上に載せたばっかりに、黒澤明監督に海外配給の際の正当な取り分を渡してなかったことまで露見して一時は黒澤事務所と険悪な状態に陥り、憤懣の捌け口は監督のレオーネに向けられる羽目に。

 当のレオーネは出資者を集める上映会やスタッフと一緒に『用心棒』を見た時にフィルムをレンタルした領収書を権利が問題化するまで大事に持っていて(本作製作時の経費として落とすため)、日本側から抗議の書面が初めて届いた際は「世界のクロサワから俺ン所に手紙が来たぞ!」と言って方々に見せてまわり、助監督を務めたトニーノ・ヴァレリから咎められたそう。

 本作が盗作騒ぎに巻き込まれた原因は、「イタリアの無名の監督が日本の時代劇をベースにアメリカの西部劇を作る」という発想が受け入れられず、ロクなプロデューサーに巡り会えなかったことにある(レオーネ自身はプロデューサーが法的手続きを済ませていると思っていたらしい)。
 ハリー・コロンボとジョージ・パピの二人は問題が表面化してからも著作権料が発生しないイタリア国内の古いローマ史劇やオペラに似たような話がないか探し回ったそうが、実は『用心棒』の元ネタはダシール・ハメットのハードボイルド小説『血の収穫』(後年、黒澤監督自身が認めている)。プロデューサーの二人が海外の素材にも目を向けて同作に辿り着いていたら、もっと大騒動になっていたはず。

 本作の主演がイーストウッドに決まるまでに、ヘンリー・フォンダやチャールズ・ブロンソンらさまざまな候補が挙がりながらも、いずれも断られるかギャラが高額すぎて断念した話は有名。

 TV西部劇『ローハイド』の準主役だったイーストウッドが本作まで映画の役に恵まれなかったのは、契約上の制約以外にも遅刻癖があり喧嘩っ早くて女にも手が早いなど、本人の素行も影響したという説も。
 本作のランチタイムでワインを吞みながら2時間たっぷり休憩する現地の撮影ルーティンに歓喜したそう(本人談)。

 マリソル役で出演した西ドイツ出身のマリアンネ・コッホは女優の肩書以外に医師の資格もあり、後年は本国のTVで健康相談みたいな番組の司会をながく務めたとか。
 SNSで確認したところ今もご健在(御年94)。
 イーストウッドが長寿なのも、彼女に健康アドバイスしてもらったから…かも?!

 ジョニー・ウェルズ名義でラモンを演じたジャンル・マリア・ヴォロンテはブームの最中、多数のマカロニ・ウエスタンに出演したあと、マフィア映画から社会派作品まで幅広い役をこなし、イタリアを代表する本格俳優に。
 個人的には『エボリ』(1979)のレーヴィ役が印象的。

 オリジナルの『用心棒』には少なからず見られたコメディ要素の多くを削ぎ落とした本作で、その役回りを一人で担った棺桶屋のピリペロを演じたヨゼフ・エッガーはオーストリア出身のコメディアン。
 続編の『夕陽のガンマン』(1965)でも寝たきりの情報屋なんてふざけた役をコミカルに演じていたが、同作が遺作に。

「レオーネ節」と呼ばれる監督の作風が確立するのは次作の『夕陽のガンマン』からといわれるが、本作でも、特にロホとバクスターの人質交換の場面にその片鱗が窺える。

 英語版吹き替えの脇役の演出が雑に聞こえるのが、やや難点。

 マカロニ・ウエスタンの大ファンだが、近年はオリジナルの『用心棒』を見る方が多く、本作を久し振りに見たのが昨年の「ドル三部作4Kレストア特集」。
 本作がオリジナルより確実に優っているのは音楽性。映画館の音響設備で聴くモリコーネの『さすらいの口笛』は格別だった。

『さすらいの口笛』にはロングヴァージョンとショートヴァージョンがあり、映画で使用されているのはショートヴァージョン。
 男声コーラスの部分が“We can fight!”と聞こえるが、ロングヴァージョンでは“with the wind”。
 現在国内で流通しているサントラCDに収録されているのもショートヴァージョンのみ。そのうえ『夕陽のガンマン』とのカップリングで、あらためて本作を観るとCD未収録の曲も結構多い。

 完全版の発売に期待したいが、その際にはぜひロングヴァージョンも。

 公開時、映画同様大ヒットした『さすらいの口笛』は様々な模倣作やパロディを派生させたが、この曲自体、歌手のピーター・テイヴィスのためにモリコーネがアレンジした『みのりの牧場』(原曲の作者はウディ・ガスリー)のセルフリメイク。可能ならそちらも併せて収録して欲しい。

 NHK-BSにて視聴。
 4Kレストア版でなかったのが残念。

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TRINITY:The Righthanded Devil