荒野のガンマン

劇場公開日:1962年5月22日

解説

アメリカ各地の興行者が集まってプロデュースした西部劇の異色作で、製作はチャールズ・B・フィッツ・シモンズ、脚本はアーロン・シドニー・フライシュマンが自作の小説から脚色したもの。演出は興行会からおされたサム・ペキンパー、撮影は「アラモ」のウィリアム・H・クローシア、音楽はピーター・ツィンナーが担当。出演は「罠にかかったパパとママ」のモーリン・オハラ、ブライアン・キース、スティーヴ・コクラン、チル・ウィルスなど。

1961年製作/93分/アメリカ
原題または英題:The Dealy Companions
配給:ワーナー・ブラザース映画
劇場公開日:1962年5月22日

あらすじ

南北戦争も終わった数年後北軍に従軍したイエローレッグ(ブライアン・キース)は1人の南軍兵士を探し歩いていた。戦場で負傷した時、この南軍兵は酔った勢いで彼の頭を剥ごうとしたのだ。彼の頭にはまだ傷が残っているのだ。彼はある酒場で私刑にされようとしている男ターク(チル・ウィルス)を救って愕然とした。タークの手首には彼がつけた歯形がくっきり残っていた。イエローレッグは自分の手でタークを殺そうとして彼を助けた。タークには拳銃気違いの相棒ビリーがついていた。3人は早速、チームを組んだ。そしてヒーラー町のある銀行を襲うことにした。その町に着いた3人は、ダンスホールに働くキット(モーリン・オハラ)と知り合いになった。彼女にはミードという9歳の男の子があった。その晩、3人が襲おうとした銀行を他の無法者たちが襲撃した。怒った3人は保安官側につき激しい撃ち合いが起こった。その時、イエローレッグの弾丸はキットの息子ミードに命中してしまった。全くの不幸な偶然だった。キットは町の人々から売笑婦扱いをされていた。そんな関係から、キットはシリンゴ町にミードを埋めると言い張った。そこには夫の墓があるというのだ。しかしシリンゴ町は、今は廃墟と化し、途中の草原にはアパッチ族が群れをなしていた。イエローレッグはせめてもの償いに護衛を申し出るが彼女はそれを許さず1人で出発していった。イエローレッグはビリーとタークを伴って彼女の馬車を追った。その後、ビリーがキットに襲いかかったのを見たイエローレッグはビリーを一行から追い払った。タークもビリーの後を追って去ってしまった。そんな折、アパッチに馬を持ち去られた2人は、徒歩でようやくシリンゴへたどり着いた。そこへ再びビリーとタークが現れた。彼らはヒーラー町へ引き返し、銀行から金を奪いシリンゴへやって来たのだ。ビリーは、イエローレッグに拳銃を渡し、もはや無用となったタークを殺すよう言いつけた。イエローレッグの殺人を止めるため、キットは愛を打ち明けたが、黙ってタークから受けた頭の傷を見せるだけだった。タークに対する憎悪をこめてイエローレッグの拳銃が火を吹いた。だが弾はそれ、見かねたビリーはタークを撃ち次にイエローレッグを狙った。タークは残る力をふりしぼり拳銃の引き金を引いた。倒れるビリー。必死に逃げようとするタークを追ったイエローレッグは、5年前の事件を話し終えると彼の頭をはごうとした。夢中でとめるキット。やがて2人は美しい日没に向かって馬を走らせた。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.0 最期の西部劇監督ペキンパーのデビュー作は、極めてオーソドックスな小品だった

2025年10月30日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

テレビ映画で西部劇を撮っていたサム・ペキンパーが、興行主たちの推薦を受けて監督したという劇場用デビュー作。
NHK BSの放送にて。

南北戦争終結間もない時代設定なので、『風と共に去りぬ』や『ダンス・ウィズ・ウルブズ』と近い時代を描いていることになるが、本作は開拓時代と変わらない印象。アメリカは広いので同じ内戦後でも地域によって様々な様相を呈していたということ。

元北軍将校のイエローレッグは、自分の頭の皮を剥ごうとした元南軍兵士を復讐のために探していた。彼は戦争で受けた銃弾がまだ肩に埋まっていて右腕がうまく使えず、満足に拳銃を扱えない。
演じるブライアン・キースは、ペキンパーが演出したテレビ西部劇にも出演していたらしく、テレビが主戦場の俳優だったようだが、ショーン・コネリー主演の『メテオ』(’79)でソ連の科学者を全編ロシア語で演じていた。唯一しゃべった英語(だったと思う)が「くたばれ、ドジャース」(笑)

とある町のダンスホールで働く女キットは、幼い一人息子を抱え、町の女たちからアバズレと揶揄される存在だった。その息子も町の子供たちから敬遠され、一人でハーモニカを吹いて過ごしていた。
キットを演じるモーリン・オハラは、ジョン・ウェインとの共演作など西部劇に多数出演してる女優で、本作の一枚看板スターである。

邦題のイメージとは若干乖離する気がするが、自身の復讐を果たそうとする男が、女性を愛したことで気持ちが揺らぐという、本作はラブ・ストーリーなのだ。
原題「The Deadly Companions」(命がけの道連れ…かな?)は、イエローレッグが仇敵として命を狙っている男ターク(チル・ウィルス)とその相棒ビリー(スティーヴ・コクラン)と行動を共にしながら、復讐の機会を待つというシチュエーションを表している。

いかさまポーカーで吊るし首にされようとしていたタークを偶然見たイエローレッグは、彼が何やら因縁のある男だと気づいて助け出そうとするのだが、多勢に無勢で苦戦する。そこにタークの相棒らしきビリーが現れて加勢し、三人で脱出する。
タークは飲んだくれで、妄想癖がある老いぼれだ。若い相棒ビリーのことを自分の弟子のように言うが、ビリーの方はそれを鬱陶しく思ってるようだった。
イエローレッグがある町の銀行に大金が預けられていると二人に強盗を持ちかけ、三人はその町に向かう。ここまで三人の間で交わされる会話は二言三言で、唐突な展開に思えるのだが、そこにリアリティや説得力を持たせる気はサラサラない。
その道中でも三人がうちとけた様子はない。
そして、三人はその町でキット母子と出会うのだ。

先に他の強盗団が銀行を襲ったので、三人はそいつ等と撃ち合いをする羽目になる。そこでイエローレッグの撃った弾がキットの息子に当たってしまい、少年は命を落とす。
映画の序盤で、これがなかなか衝撃の展開なのだ。
なんなら、『シェーン』(’53)のようにイエローレッグと少年の交流が物語の軸になるかと思わせる雰囲気を出していたのだから…。

息子の遺体を馬車に乗せ亡夫の墓がある町へ埋葬に行くというキットは、道中の護衛をするというイエローレッグの申し出を断って一人で出発する。イエローレッグはタークとビリーを従えてキットのあとを追う。
こうして四人の珍道中が始まるのだが、この展開もよく分からない。
タークとビリーはなぜイエローレッグに従うのか。
タークはイエローレッグをあまり気に入っていないようだが、ビリーは一目置いているようにも見え、ぶつぶつ言い合いながら二人はイエローレッグについて行く。
タークを助けてもらった義理か、イエローレッグがいないと銀行を襲えない何かがあるのか(そんなものはないことが後で分かるが)…。

ところが、最初からキットに色目を使っていたビリーが彼女に手を出したことでチームは分裂。イエローレッグはビリーを丸腰にして追放する。その後タークはビリーの後を追う。
イエローレッグとキットは二人だけで目的地を目指すこことになるのだ。
途中でインディアン(というのは今は差別用語で「先住民」と言わねばならない。よく聞き取れなかったが、原語ではアパッチと言っていたのではないか)との抗争もあり、二人の間に微妙な空気が生まれる。
やがて目的の町に着くが、そこはゴースト・タウンで教会の墓地は荒れ果てていた。

銀行強盗を成し遂げたビリーとタークがそこにやって来て、いよいよ西部劇らしいクライマックスに突入する。
イエローレッグとタークの撃ち合いを見たビリーが「かすりもしないのか」と呆れるほどで、派手なガンファイトが展開するわけではない。だから邦題の〝ガンマン〟が浮いた感じがするのだ。
信仰に厚いキットは、たとえ恨む相手でもタークを殺そうとするイエローレッグを制止するのだった。
いつしか、キットとイエローレッグの間には心が通っていた。

ブライアン・キースにそれほど魅力を感じない分、モーリン・オハラの華が際立っている。

最期の西部劇監督と評されたサム・ペキンパーのデビュー作は、メジャースタジオ製の大作には遠く及ばない小品ではあるものの、西部劇に欠かせない「良心」をキチンと押さえた王道だった。
後に撮ったバイオレンス西部劇で、往年の西部劇ファンを落胆させ、シネフィルからは高評価引き出すことになるなど、想像もされなかっただろう。

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kazz

2.5 「最後の西部劇監督」による最初の劇場向け西部劇

2025年6月4日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

斬新

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TRINITY:The Righthanded Devil

3.5 バイオレンス要素も薄めで、ラブストーリー要素が強め。但し、話のテンポの良さは片鱗をのぞかせていますね。

2025年5月15日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

幸せ

シネマヴェーラ渋谷さんにて『超西部劇』と題した戦後に新たな要素を取り込んだ西部劇の特集上映開催中(2025/05/03~05/30)。本日はバイオレンスアクション映画の巨匠サム・ペキンパー監督の長編デビュー『荒野のガンマン』(1961年)を鑑賞。

『荒野のガンマン』(1961年/93分)
『ワイルドバンチ』(1969)、『砂漠の流れ者』(1970)、『わらの犬』(1971)、『ゲッタウェイ』(1972)、『戦争のはらわた』(1977)などバイオレンスなアクション映画の傑作を世に出したサム・ペキンバー監督が企画・制作・脚本・演出を務めた長編デビュー作。

南北戦争で南軍兵の男に頭の皮をはがされかけた元北軍兵の復讐と、彼が撃った流れ弾のために亡くなった息子の亡骸を亡き夫の隣に埋葬するため、先住民たちの襲撃の危険を顧みず毅然と墓に向かう未亡人の愛憎の念が入り混じるロードムービー。

監督がこよなく愛する滅びゆく西部の男たちへの哀愁はデビュー作の本作でも描かれておりますが、独特のスローモーション撮影や細かいカット割りの演出は創出されておらず、バイオレンス要素も薄めで、ラブストーリー要素が強め。但し、話のテンポの良さは片鱗をのぞかせていますね。

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矢萩久登

2.5 戦時トラウマ

2024年11月8日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

戦地でのトラウマで粗暴になる人がいることは知られているが、そういった人のケアの可能性みたいなものとして見ればいいのか?

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ouosou