恋人たちの曲 悲愴

劇場公開日:

解説

偉大な芸術家チャイコフスキーの私生活での苦悩、その苦悩を払しょくするように、類まれなる才智による創作活動を続けた彼の劇的な生涯を画く。製作・監督は「肉体の悪魔(1971)」「ボーイフレンド」のケン・ラッセル、脚本は「大侵略」のメルヴィン・ブラッグ、撮影は「冬のライオン」のダグラス・スローカム、演奏はロンドン・シンフォニー・オーケストラ、指揮はアンドレ・プレヴィン、ピアノ独奏はラファエル・オロズコ、振付はテリー・ギルバート、衣裳デザインはシャーリー・ラッセル、編集はマイケル・ブラッドセルが各々担当。出演はTV『ドクター・ギルデア』のリチャード・チェンバレン、「恋する女たち」のグレンダ・ジャクソン、マックス・エイドリアン、クリストファー・ゲイブル、イザベラ・テレジンスカなど。

1970年製作/イギリス
原題または英題:The Music Lovers
配給:ユナイト
劇場公開日:1972年4月

ストーリー

ピョートル・チャイコフスキー(リチャード・チェンバレン)と親友のアントン・シロフスキー伯爵(クリストファー・ゲイブル)は雪の夜、酔っ払ってアントンのベッドになだれこんだ。二人の異常な関係は音楽院の中でも噂されチャイコフスキーの輝かしい未来に大きな危惧を抱かせていた。彼の姉サーシャは弟の身を気づかい、アントンから引き離そうと自邸へ連れ帰った。しかし所有欲の強いアントンによって彼は再び泥沼のような生活にのめりこんでいった。こうした生活のなかでも、チャイコフスキーは憂愁に満ちた美しい佳曲を作曲していった。モスクワ音楽院で行われたチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番の演奏会は音楽院長ニコライ・ルービンシュタイン(マックス・エイドリアン)の酷評にもかかわらず、聴衆の絶賛を博し、芸術の庇護者として有名なナジータ・フォン・メック夫人(イザベラ・テレジンスカ)を魅了、フォン・メック夫人はチャイコフスキーの援助を申し出た。唯一つの条件として、2人は絶対に会わないという条件で。チャイコフスキーは私生活を建て直そうと決意。彼に好意を寄せる熱情的なニーナ・ミリョーコワ(グレンダ・ジャクソン)と電撃的に結婚した。しかしこの結婚はチャイコフスキーにとって、みじめな結果に終った。結婚生活に堪え切れなくなったチャイコフスキーは自殺を図ったのだ。チャイコフスキーの実際家の弟モデステ(ケネス・コリー)は自らマネージャーを買って出、兄をニーナから引き離した。フォン・メック夫人はチャイコフスキーをブライロフの別荘に送り静養をすすめた。チャイコフスキーは夫人の信頼と友情に励まされ、すぐれた作品を作り、二人の間には理想的なプラトニック・ラブが生まれた。しかしチャイコフスキーの誕生祝いの席でメック夫人に近づいたアントンは過去のチャイコフスキーとの醜関係を暴露した。このことが夫人とチャイコフスキーの間に亀裂をつくり、夫人はチャイコフスキーの許を離れていった。そして時が立ち、友人は一人一人と去り、ニーナは脳病院に入り、姉のサーシャも死んでいった。53才、チャイコフスキーは交響曲“悲愴”を書き上げると毒物をあおり、数日後この世を去った。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

映画レビュー

3.0チャイコフスキーの苦悩に満ちた私生活をスキャンダラスに描いたケン・ラッセル監督の異色作

2022年1月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ロシアを代表する偉大な作曲家チャイコフスキーの伝記映画。しかし、これを観たチャイコフスキーは、どう感じるだろう。何故ならチャイコフスキーの音楽における業績を賛美するのではなく、様々な恋愛関係の縺れをドロドロとした暴露劇の様に描いているからだ。最初から意味あり気に、チャイコフスキーが学生時代に同性との関係があったかのような描写がある。富豪のナジェンダ・フォン・メック未亡人からの有名な資金援助のエピソード、アントニーナ・ミリューコヴァとの結婚に失敗する逸話と、最後はコレラに罹って亡くなる結末まで、一応は史実に基づいた脚本であるようだ。耽美的で奇麗な音楽の名曲を後世に遺した天才の苦悩に満ちた私生活に焦点を絞った異色作。イギリス映画界でもスキャンダラスな映画作りが特徴のケン・ラッセル監督の個性は充分窺えるし、映画表現の面白さもそれなりにある。   1976年 12月3日  大塚名画座 ケン・ラッセル監督作品は意外と観ている。「ボーイフレンド」「狂えるメサイア」「マーラー」「トミー」「リストマニア」「バレンチノ」「アルダート・ステーツ/未知への挑戦」「クライム・オブ・パッション」「ゴシック」「サロメ」「白蛇伝説」「レインボウ」「チャタレイ夫人の恋人」と毛色の変わった作品ばかり。ただ、ラッセル作品で忘れられないのは、初期のテレビ用に制作された作曲家エルガーの伝記映画だ。この演出は見事と感心したが、後の商業映画では挑発的なタッチが良くも悪くも強調される様になる。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
Gustav