クリスチナ女王
解説
「グランド・ホテル」「お気に召すまま(1932)」に続いてグレタ・ガルボが主演する大作品で「今晩愛して頂戴ナ」「恋の凱歌」のルーベン・マムーリアンが招かれて監督に当った。原作はザルカ・フィアテルとマーガレット・P・レヴィノの二人が書卸したオリジナル・ストーリーで、フィアテルが「明日の太陽」のH・M・ハーウッドと共に脚本を作り、「裏切る唇」のS・N・ベールマンが台詞づけ、「晩餐八時」「南風」のウィリアム・ダニエルが撮影を担任した。助演者の主なるものは「奥様御寵愛」「巴里の魔人」のジョン・ギルバートを始めとし「暴君ネロ(1932)」のアイアン・キース、「男子戦わざる可からず」「失踪者三万人」のルュイス・ストーン、「爆弾の頬紅」のC・オーブリー・スミス、「青春の頬杖」のエリザベス・ヤング、レジナルド・オーウェン、デイヴィッド・トーレンス、グスタフ・フォン・セイファーティッツ、等である。
1933年製作/アメリカ
原題または英題:Queen Christina
ストーリー
1600年の頃、瑞典は30年の間、戦火を浴びていたが皇帝グスタフ・アドルフの率いる軍隊は赫々たる武勲に輝やいていた。だがこの皇帝は1631年ルッツェンの激戦に戦場の露と消え、その王位を継承したのは当時僅かに6才のクリスチナであった。幼にして王位に即いたクリスチナは執権のオクセンスティールナ伯爵の補佐の下に、老僕アーゲを従者として武々しく男優りの気性を持って生い育った。そして常に男装をして、勤勉と精悍とで困難な政務をさばき、時あれば乗馬と狩猟とで国事多端による萬腔の欝を散ずるのであった。このクリスチナが成年に達した時、当然起ったのは結婚の問題であった。人々は彼女の従兄で武将たるチャールズをその有力な後補として推挙した。然し、クリスチナは未だ時期で非ずとなし、オクセンスティールナや、嘗ては彼女の寵臣たりし財政の司マグヌスの勧めをも聞き入れなかった。そして彼女は唯だ専らに世の平和と人民の安泰とを願うのであった。その或る日、例によってクリスチナが男装してアーゲ一人を供につれ、狩猟に出た夜、それが吹雪に行き暮れて、とある旅籠に一夜の宿りを求めた。その時、彼女は西班牙の使節のアントニオの一行と行き合せた。それから雪に閉じ込められた旅籠での三日三晩、2人の間には忘れ難い思慕の念が湧いたのである。だが、このアントニオこそは実は西班王の使節として王よりクリスチナへの結婚の申込みに来た人物であった。斯うした選命の戯れはあったが、然しクリスチナとアントニオとの恋心は日ましに燃え、それを嫉んだマグヌスの使嗾による人民のアントニオに対する反感は、これも日と共に高まって行った。そして遂に、クリスチナが凡ゆる苦衷を以てアントニオをかばったにも拘らず、その凡ゆる苦衷は妨たげられ、彼女はアントニオを国外へ追返さねばならぬ仕儀とまでも立入った。所が、この一方ではクリスチナの懊悩をいや増しにチャールズとの結婚がせき立てられていた。彼女は遂に決意した。愛する人民ではあり国ではあったが、恋はそれよりも強かった。クリスチナは王位を棄てた。そしてチャールズにそれを譲った。そして彼女は馬車を馳ってダンチッヒの港に、出帆して国へ帰るアントニオの跡を追った。だが、船へ辿りついてアントニオに再会した時、思う愛人は既にマグヌスとの決闘に傷いて再び起てず、彼女の腕の内に、息をひき取って行ったのである。依辺を失ったクリスチナは涙ながらに、しかし恋人の亡骸を守護して、恋人の懐しい故郷へそれを埋めに行く悲しい決心をした。船は今や塑像の如くに動かない1人の女の大きな憂欝を乗せて、ゆるやかに港を離れて行く。
スタッフ・キャスト
- 監督
- ルーベン・マムーリアン
- 脚色
- H・M・ハーウッド
- サルカ・ビアテル
- 原作
- サルカ・ビアテル
- マーガレット・P・レビノ
- 台詞
- S・N・ベールマン
- 製作
- ウォルター・ウェンジャー
- 撮影
- ウィリアム・H・ダニエルズ
- 美術
- Alexander Toluboff
- セット
- エドウィン・B・ウィリス
- 音楽
- ハーバート・ストサート
- 編集
- ブランシュ・セーウェル