風が吹くとき

劇場公開日:

風が吹くとき

解説

「スノーマン」「さむがりやのサンタ」で知られるイギリスの作家・イラストレーターのレイモンド・ブリッグズによる絵本を原作に、核戦争の恐怖を描いた1986年製作の名作アニメ。

イギリスの片田舎で平穏に暮らすジムとヒルダの夫婦は、二度の世界大戦をくぐり抜け、子どもも育て上げ、いまは老境に差し掛かっている。そんなある日、2人は近く新たな世界大戦が起こり、核爆弾が落ちてくるという知らせを聞く。ジムは政府が配ったパンフレットに従ってシェルターを作り備えるが、ほどなくして凄まじい爆風に襲われる。周囲が瓦礫になった中で生き延びた2人は、政府の教えに従ってシェルターでの生活を始めるが……。

監督は、長崎に住む親戚を原爆で亡くしているという日系アメリカ人のジェームズ・T・ムラカミ。音楽をロジャー・ウォーターズ、主題歌をデビッド・ボウイが手がけたことも話題。日本語吹替え版は大島渚が監修し、ジムとヒルダの声を森繁久彌と加藤治子が担当した。1987年に日本初公開。2008年7月、デジタルリマスター版が公開。2024年8月にも吹き替え版でリバイバル公開。

1986年製作/85分/イギリス
原題または英題:When the Wind Blows
配給:チャイルド・フィルム
劇場公開日:2024年8月2日

その他の公開日:1987年7月25日(日本初公開)、2008年7月26日

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

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(C)Channel Four Television Corporation 2001

映画レビュー

3.5「見えない脅威」が如何にタチが悪いか

2024年9月30日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

放射能は見えない。 だからつい"シェルター”から外に出てしまう。外に置いていた瓶に入った水も雨水も飲んでしまう。(一応、沸かすけれど)やっぱり2階のトイレを使うし、ついには家の外にも気軽に出てしまう。身体への影響が即座には出てこないのでなおさらだ。でも放射能は確実に急速に身体を蝕んでいく。。。 「見えない脅威」のタチの悪さをまざまざと見せつけられた。そういえば放射能だけでなくコロナなどウィルスも同じ「見えない脅威」だ。  ・もし放射能に色がつけられたら?  ・あるゴーグル越しにみると放射能が舞っているのが見えたら?  ・放射能がこびりついている場所だけが光っていたら? 放射能を見ることができたら、外したドアを壁に60度に立てかけただけの"シェルター”にほとんど意味がないことを、貯めてあった水や雨水なんて飲めたもんじゃないことを、2階のトイレも、ましてや家の外なんて出れたもんじゃないことが解かるだろう。逆にコロナのときに一部であったような過剰な反応も、コロナが見えていたら防げていただろう。 世の科学者は放射能やウィルスなど見えない脅威を見える化することにぜひ力をいれて欲しい。 ちゃんとカトラリーを並べてお皿で食べる。お気に入りのクッションやカーテン、壁はペンキ塗って修繕、ズボンはアイロン掛けて、破れた服は丁寧に繕う。イギリス人らしくきちっとした生活。きちっとした日常。 核はこの人間らしい生活を奪いにくる。しかも、ほんと突然に。 被爆後もカトラリーを並べて人間らしい営みを続けようとした妻。ジョークを交ぜながら妻を励まし続けた夫。しかし、なんとか人間性を保っていた夫婦もついに寝たきりに。。 幸せで仲の良い老夫婦の日常が、核のせいで非人間的な形で終わらせられようとしていることがいたたまれなかった。 ※吹き替えの声、鶴瓶かなあと思ってったら森繁久弥!ええ!?もう1回観て確認したいぞ。 ※単調な日常が続く(特に前半)のでウトウトも。でもだからこそ平和な日常。 ※無知って恐ろしい。できあがった"シェルター”がまさかの出来で驚愕。G7首脳だけでなく人類は全員、原爆資料館に行こう。『はだしのゲン』も読もう。(『COPPELION』でもまあいいし。) ※前々から観たいと思っていた作品。ネット配信サービスになく、DVDもすげえプレミアム価格なので途方に暮れていたところ、なんとリバイバル上映が始まったではないか!この機会を逃すものかと朝早く起きて映画館に向かった。その後PrimeVideoでレンタル扱い出した模様。。。まあでも映画館だから集中して観れて良かったな。

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共感した! 9件)
momokichi

5.0核戦争の恐怖

2024年9月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

映画館で観たのはこのリバイバル上映が初めて。レイモンド・ブリッグズの優しいタッチの絵柄で牧歌的な生活を送る夫婦の暮らしが徐々に追い詰められていき、飢餓の苦しみの極限を描くに至る。優しい絵柄だからこそ、苦しみと悲惨さが強調される。核戦争の恐怖を描いた名作として名高い本作だが、広く戦争の苦しみと恐ろしさを描いた作品として後世に残すべき傑作だ。 この作品には、核をめぐる80年代当時の空気感が良く出ていると考えていいだろう。漠然として核戦争によって終末がもたらされるという恐怖、その恐怖は生活をこのように侵食していくのだということを、たった2人の登場人物で描いていく。この夫婦はかたくなに政府の発表を信頼している。政府の配布した冊子の情報通りに簡素な核シェルターを作るのだが、ドアを外して立てかけただけの、本当に簡単なものなのだ。しかし、それが自分らを守ると強く信じている、なぜなら政府の情報だから。 技法的にも興味深い作品だ。アニメーション映像に実写映像も混ぜており成す不思議な空間は、虚構と現実の橋渡しをしているかのような、そんな印象を与える。この終末感は虚構の産物かもしれないが、現実にも起こり得るのかもしれないと思わせるために、手法が極めて有効に機能している。

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杉本穂高

3.5愚民政策の行き着き先を描いたディストピアSF?

2024年8月28日
PCから投稿

日本に育ってある程度原爆の被害について知っていると、公開された1986年時点(太平洋戦争の原爆投下から41年後)でも、イギリスの庶民って原爆の知識がないってこと?と驚くというか戸惑うというか。主人公である老夫婦の思考も、どちらかというと親がいないまま家に取り残された子供かと思うくらいにおぼつかなくて、「ホントにこんな感じ?」と原作者や映画の作り手の意図を測りかねるところがある。 ただ調べてみると、劇中に登場する被爆対策のパンフレットや現実に存在したもので、主人公夫婦のあまりにもお粗末なシェルター作りも、パンフレットの内容にほぼ即していることがわかる(パンフレットよりもだいぶ雑だけど)。 つまりはこの映画は、戦勝国の政府なり自治体なりがちゃんとした情報を提供することなく、それでいて「非常時は政府の指示に従うこと」を徹底した場合に起こり得る「愚民政策」の弊害を皮肉った作品ではないか。86年当時のイギリスの庶民感覚も一律ではなかっただろうが、田舎を舞台にした一種のディストピアSFと捉えていいんじゃないかという気がしてくる。 「いや、誇張でもなんでもなくあの頃の一般市民の戦争や認識があんなものでしたよ」とイギリスの人が言うならもはや戦慄するしかないが、じゃあ反戦や反核が当然のものではなくなりつつある今の日本も、たやすくこうなってしまう可能性があることは認めなくてはなるまい。

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村山章

4.0傘がない。

2024年12月13日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

備えあっても憂いある現実の中、平和ボケが人間らしさを首の皮一枚残してくれる。 描写は非常に非情に繊細で、目を覆いたくなるくらい惨い。故に押し入れに仕舞い込んで10年に一度観るくらいが丁度良いが、死ぬまでに何度も観る事になるだろう。それがいつの時代でも、暖かい部屋の中であることを祈る。

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