わたしの名は情婦
劇場公開日:1949年8月22日
解説
「大江戸七変化」「虹男」の辻久一の企画。脚本は「わが恋は燃えぬ」(新藤兼人と協同)の依田義賢で「地下街の弾痕」につぐ森一生の監督である。キャメラは「地下街の弾痕」の石本秀雄担当、主演は「どぶろくの辰(1949)」の水戸光子「地下街の弾痕」の二本柳寛でそれに「地下街の弾痕」「どぶろくの辰(1949)」の菅井一郎「母恋星」「三つの真珠」の沢村貞子「飛騨の暴れん坊」の阿部九洲男「こんな女に誰がした」の常盤操子らが出演する。
1949年製作/87分/日本
配給:大映
劇場公開日:1949年8月22日
ストーリー
安原妙子は、愛し信じていた高田に見事に裏切られた。知らなかったのだ、高田がそのころ阪神界わいに恐怖をあたえていた麻薬強盗であったことを--。そのときから、妙子は悲しい運命のどん底につきおとされた。高田があがったとき、一せいに妙子のことをとりあげた各新聞社の記事が、女なるが故に興味と好奇心に満たされて人々に読まれ、妙子を一そう苦しみの中へつきおとした。毎朝新聞記者中野は、商売とはいいながら、他社の記者と競って妙子の記事をとったことになにか割り切れぬにがい思いをした。このままではきっとあの女はどん底に落ちる。何んとか助けたい。その気持ちが彼を、いとこの営む琵琶湖のほとりの静かな養魚場に向わせた。そこで中野はいとこの谷川とその妻規子を説いて妙子に安住の地を与えたいと願う。谷川はこころよく承知して中野はとぶように大阪へ帰った。だたさがす妙子は場末のダンスホールで、狂ったように酒をあおる身となっていた。中野はようようにして妙子をどろ沼からひきずり出し、谷川の養魚場へつれてきた。はじめて澄んだ空気と清らかな水に、そして中野のかざらぬ親切に、妙子は憩いの日を見出した。だがそれも束の間ある日規子のところへ中野のためにと持込まれた縁談に、規子はすっかり乗気になり大阪へ出かける。妙子は何かクッと胸をつかれた思いだった。妙子には、今中野の姿こそが一つのきづなだったのだ。大阪から帰った規子は中野にまかせられたといって、よろこんで先方へ出かけた。妙子は何も彼も希望を失い再び飛び出す決心をした。谷川はそれを抱きとめて心を落ちつかせようとする。そこへ出かけたばかりの規子がもどって、抱きあっている二人をみた。規子のヒステリックな怒りは谷川の弁解も聞き入れず、妙子をののしり、中野に「スグコイ」と電報を打った。翌日中野が養魚場へくる前、妙子は谷川からまちの組合へ届けるように依頼された大金をもったまま出ぽんした。だが中野は知っていた。妙子のほんとの気持を--。すぐ大阪へとって帰した中野は、場末ののみやで酒をあおる妙子をみつけた。「ばかだな、規子さんには冗談をいったのに、それが通じないんだ。君はぼくのいい女房になってくれよ」……。妙子のひとみからみるみる涙があふれてくずれるように中野の胸に抱かれるのだった。