わが命の唄 艶歌
劇場公開日:1968年5月29日
解説
五木寛之の原作小説『艶歌』(講談社刊)を、「無頼より 大幹部」のコンビの池上金男が脚色し、舛田利雄が監督した。撮影は「血斗(1967)」の高村倉太郎。
1968年製作/109分/日本
原題または英題:Enka
配給:日活
劇場公開日:1968年5月29日
ストーリー
コピーライターの津上は同僚の亜矢子と結婚の約束をした日、彼女に自殺された。原因は分らなかった。そんな時、津上の上司の黒沢が退職し、テレビ局に勤めたが、津上も亜矢子の死というショックで転職し、CM音楽のディレクターになった。アパートの管理人の娘京子は、そんな津上のよい話し相手だった。三年後、津上はレコード会社の企画制作局長をしている黒沢に誘われ、レコード会社のディレクターになる決心をした。レコード界の大物、艶歌の竜こと高円寺隆三のカメラ・ルポを見て、その情熱にひかれたためだった。津上は黒沢の秘書美矢子が、亜矢子の妹と知って衝激を受けた。美矢子は姉の自殺の理由を津上に聞いたが、それは津上にも分らないことだった。やがて高円寺の助手についた津上は、自分の感情の中に、これまで批判的だった艶歌に対する根強い愛着を発見した。そんなある日、津上と高円寺は流しで唄っている京子に会った。京子は父が公金横領で入獄したため、生計を助けるため唄っていたのだ。高円寺は最初から、そんな京子のノドに惚れた。一方、黒沢はレコード売り出しの方法で高円寺と対立し、新人歌手売り出しで決着をつけることになった。津上は黒沢の部下になり、青山浩二の売り出しに精魂を傾けた。対する高円寺は、京子に艶歌を唄わせて勝負することにしていた。この戦いは最初から青山のレコードの売れ行きが強く、勝負は決まったかに見えた。しかし、数カ月すると、京子のレコードも地方では売り上げの数字が高くなった。それには、黒沢も津上も注目していた。何か宣伝の起爆剤があれば、必ず爆発的な売れ行きを示すはず、と考えた高円寺は、心ならずも、京子の父の事件を週刊誌に洩らした。芸能ジャーナリズムが騒ぐと同時に、京子のレコードの売り上げは東京周辺でもグンと伸びを示し、ついに青山の数字を抜く勢いになった。しかし、高円寺との勝負に敗れたら今の地位を失う黒沢は京子の唄う艶歌を風俗上好ましくない。と放送規制にかけるように手を回したのだ。それには津上も愛想をつかし、黒沢の許を離れた。津上はまた、亜矢子の自殺の原因が黒沢にあることも知り、高円寺のやったような芸能界のカラクリを見抜いて、この世界を去る決心をしたのだ。彼らと未練気なく袂を分ったいまの彼には、ただ、心にしみるような艶歌しか残っていなかった。