らしゃめん
劇場公開日:1977年9月3日
解説
鰭淵晴子のレコード・「らしゃめん」(作詩・構成杉紀彦)の映画化。「らしゃめん」とは、幕末から明治にかけて外国人の現地妻として提供された日本女性をいい、映画はこの歴史の転換期に生きた女性を描く。脚本は「女獄門帖 引き裂かれた尼僧」の志村正浩と牧口雄二の共同、監督も同作の牧口雄二、撮影も同作の塚越堅二、とタッド若松がそれぞれ担当。
1977年製作/74分/日本
配給:東映
劇場公開日:1977年9月3日
ストーリー
明治六年、没落士族の娘・神保雪は金貸しの谷村伝兵衛の借金のカタにアメリカ公使・ロングの洋妾として売られた。世が世であれば、何一つ不自由なく暮せるのに、明治維新という歴史の激動の中で、雪は幸福を奪われた女でもあった。伝兵衛に連れられ、横浜の居留地へ入ったお雪は、華やかな洋館のたたずまいに茫然となった。そしてロング公使に会い、彼の洋館へ案内され、お常と和助の二人を身の回りの世話役としてつけてもらい、それと黒いランタン、羽根布団……といつしかお雪は身も心もロングに開いていった。しかし、ロングを愛しはじめたお雪に悲しい知らせが届いた。ロングが突然本国へ帰国することになったのだ。本国へ一緒に連れていってとたのむお雪にとって、ロングの本国には妻子がいるという言葉はつらかった。がこれが洋妾の宿命なのだ。傷心のお雪は洋館を出て、町の遊廓へひそかに身を沈めた。そんなお雪の前に、かつての許婚で、今では壌夷運動を捨て、西洋医学を勉強している片桐数馬が現われた。しかし、数馬はお雪に気が付かなかった。そして、彼の出現はお雪に希望の灯をともした。というのは、お雪は数馬に海外に留学して西洋医学を勉強してもらおうと思い、身を売ってかせいだ金を和助を使って彼に渡し、数馬を無事留学させることができた。このことの喜びはお雪の心を一段と豊かにした。ところがこの喜びとは裏はらに、彼女の身体は確実に病魔に蝕ばまれていった。こうして、彼女は再び起き上がることのできない程に悪化した身体を病室に横たえなければならなかった。数年後、立派な医師となって帰国した数馬は、和助から留学費用の出所のことをきき、愕然とした。そして、自分を犠牲にしてまで、自分を留学させてくれたお雪をたずねるが、彼女は最新の西洋医学でも手のほどこしようがないぐらい悪化していた。お雪と数馬の間にことばにならない感情が流れた。かすかな微笑をのこしてお雪は息を引きとった。やすらかなお雪の死顔は、歴史の陰で死んでいった女たちの魂の叫びのようでもあった。