野獣死すべし(1959)

劇場公開日:

解説

大藪春彦の原作を、「氾濫」の白坂依志夫が脚色し「大人には分らない・青春白書」の須川栄三が監督したスリラー。撮影は「奥様三羽烏」の小泉福造。パースペクタ立体音響。

1959年製作/95分/日本
原題または英題:Beast Shall Die
配給:東宝
劇場公開日:1959年6月9日

ストーリー

「岡田さん……」深夜の住宅街を歩く岡田刑事は車の中から呼びかける声に近づいた。と小さく鋭い銃声、岡田は歩道に倒れた。車から降りたった青年、伊達邦彦であった。岡田のレボルバー拳銃と警察手帳をポケットにつっ込み、死体を車の後部に押しこむと、シボレーはすごいスピードで走り出した。引金を引いてから一分とたっていない。--伊達邦彦は大学院の学生だった。ハードボイルド文学の杉村教授のアルバイトをする傍ら、論文をアメリカのある財団の主催するコンクールに出して留学の機会をねらっていた。秀才、勤勉、誠実というのがもっぱらの評判だ。サッカーで鍛えた強靭な体、巧みな射撃術、冷徹無比な頭脳。その彼に完全犯罪の夢がくすぶり始めていた。動機はない。殺す瞬間のスリルと殺人の英雄らしさを味わいたい、それだけだった。女にしてもそうだ。彼は決して一人の女を三度以上愛さない。妙子も例外ではなかった。--乗り捨てられたシボレーから岡田の死体が発見された。捜査網がはられた。新米刑事真杉もその一人だ。伊達は岡田のレボルバーと警察手帳を巧みに使い、国際賭博団の根城「マンドリン」を襲っては留学資金をためていた。数日後、伊達は血眼になって彼を捜している賭博団の用心棒、三田と安に出会った。行きずりのゲイボーイの手をつかむと、伊達は路上のキャデラックで逃げた。場末の川端で三田に追いつめられた。一瞬ゲイの手が離された。悲鳴をあげて駈け出したゲイを追う三田は伊達の射つレボルバーに倒れた。捜査は進まなかった。当局は見当違いのやくざ関係を洗っていた。一人真杉にはこれが意外な者の犯行と思えた。新聞でみた杉村教授の現代犯罪論が真杉の気をひいた。教授を訪れた真杉は伊達を見てあっと叫んだ。この男だ。この男こそ教授の云う「時代が創造した新しい犯罪者」に他ならない。犯人は伊達だ、真杉は信じた。留学資金をかせぐ伊達の最後の仕事は大学の入学金を奪うことだった。伊達は手塚という男と知り合った。二人は大学を襲った。筋書通りに運んだ。逃走する伊達には超短波でパトカーの指令が手にとるように分った。帰途、もはや不要になった手塚は車もろとも海底深くぶち込まれた。金は二千万円あった。下宿に帰るとアメリカに出した論文がパスして、ただで留学出来る旨の通知が来ていた。警察は真杉の先導で伊達の下宿を襲ったが無駄だった。翌日、伊達は空路アメリカに向った。茫然と見送る妙子を真杉達は追った。「完全犯罪なんて成立せんよ。電話一つであいつは死刑台さ……」真杉の先輩がつぶやいた。

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映画レビュー

4.5黒澤明がパクった

2024年9月1日
PCから投稿

絶対に感情移入できないはずの主人公に感情移入して見れる。一体なぜなのか全くわからない 。この男、何が目的でやってるのかもわからない。 なのに面白い。確か・・・ 原作はこういう話じゃなかったような・・・。多分これは脚本を読んでも全く面白くないでしょう。 こういう映画がいい映画なんだと思うんですよ。 つまらない 脚本から面白い映画を作る。 それこそ映画の醍醐味。参った。
シャープな陰影の白黒画像。地味な音楽の使い方。地味なカメラワーク。そして 何と言っても全てが 仲代達也。・・って感じですか
これの翌年 公開された 黒澤明の「悪い奴ほどよく眠る」は これのパクリ・・いやマネでしょう
原作は主人公がどうしてこういう人間になったかという経緯とか 動悸がしっかり描かれてるが この映画にはない。 わざとそこんところをカットして ホラー映画的に不気味な人物として描き出した。それが成功している。 おそらく見ているものはこの主人公にではなく刑事の方に感情移入して見ているのだろう
一番印象に残っているのは 握手のシーンだ。相手に対する敵意 と反感 それと同時に何か 同じ敵と戦っているという 戦友のような・・・ そんなものをそこから 感じた。 迫力のある素晴らしいシーンだった
一方 黒澤明の「悪いやつほどよく眠る」は 脚本家が5人も集まって書いてるというのに どうしようもない。 くだらないファミリー ドラマになっちゃってるし ターゲットのキャラクターが違うというのに同じ方法を繰り返し使っている。 全くもって馬鹿げている。小津安二郎 にこき下ろされたのはその辺だと思う。 しかし一方で 彼らは素晴らしい脚本もいくつかものにしている。いい脚本が書けるかどうか っていうのは本当に不思議なものだ

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タンバラライ

3.5須川栄三

2014年10月23日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

楽しい

脚本白坂依志夫。仲代達矢。仲代の最高傑作なのではないかと思う。須川のシャープな画面もカッコ良いし、編集のリズムも小気味好い。確かにモノクロ時代の作品とは思えないバイオレンス度。居合わせた目撃者全員殺す感じがたまらない。ラスト大仕事を終え、女の部屋を後にする時の仲代の感情を読めない表情の素晴らしさ。

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ssspkk